売上高13兆円を誇る世界的企業ファーウェイはなぜ排除されるのか?

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。9月23日(水)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、矢野経済研究所 社長の水越孝さんが“アメリカのファーウェイ排除の背景”について述べました。

◆売上高約13兆円企業をなぜ排除するのか

アメリカ政府が中国通信機器大手ファーウェイ(HUAWEI)への半導体の輸出規制を強化したことで日本企業に出荷停止などの影響が拡大。ファーウェイは日本の部品・素材メーカーの重要な取引先となっており、ビジネスチャンスの喪失に繋がる恐れがあります。

ファーウェイの2019年の売上高は、日本円にして約13兆円。純利益は約9,762億円で、今や売上高はパナソニックのおよそ倍の規模を誇ります。

そして、2019年の世界のスマートフォン市場では、出荷台数約13億7,200万台のうち、ファーウェイは約2億2,300万台を占めています。これは、1位のサムスン(SAMSUNG)に次いで2位。2019年に初めてアップル(Apple)の出荷台数(約1億9,700万台で3位)を抜きました。

では、なぜそんなファーウェイが排除されるのか。その理由の1つは、先端技術。特に5Gにおけるアメリカとの競争があり、「基本は安全保障上の脅威」と水越さんは言います。なぜなら、ファーウェイの事業所は古くからスパイ行為の拠点と言われ、なおかつ創業者が人民解放軍の関係者ということもあり、余計に懸念されていたから。

もう1つは、イランなどアメリカが経済制裁の対象にしている国に対して不正に輸出をしていること。さらには、通信機器・設備を通じ、個人情報を国家ぐるみで密かに不正収集しているのではないかというのが、アメリカ側が主張する排除の理由だと水越さんは説明。

◆矛盾と欺瞞が蔓延る世界で、企業がすべきこと

ソニーをはじめとする日本の企業とファーウェイとの取引額は1兆円規模。そして、もし半導体輸出が禁止されると、アメリカも取引できないだけに、「ファーウェイは先端的なスマートフォンができなくなってしまう」と言います。そこで自社開発を急いでいるものの、イギリスの半導体設計大手アーム ・ホールディングスも取引を停止し、「そういう意味では、(ファーウェイは)非常に厳しいはず」と水越さんは示唆。

ファーウェイとの取引ができなくなると日本にもさまざまな影響がありますが、一方でその市場が空くだけに「そこにチャンスはある」と指摘。

しかも、それは5Gの通信機器も同じだそうで、「ファーウェイとエリクソンとノキアが通信設備の8割を占めていて、NECや富士通は1%もない。だからそこにもチャンスはある」と期待しつつも、「チャンスだということだけでいいのか」と疑問を呈します。

というのも、「アメリカの正義が、全て制裁対象になっていくことがいいのか。これはファーウェイだけでなく、米中全体の問題」と水越さん。そういったことは欧州でも見受けられ、「政治や安全保障が、民間、経済のほうにかなり入ってきている」と現状を解説。

経済視点では、そういった関係性は「非生産的」ですが、それこそ今夏、アウディの広告写真に対し、SNS上で批判が殺到した問題然り、「要するに、人権や多様性、LGBT、あるいはSDGsなど環境とかに対し、個々の企業がどういうスタンスを取るかを明確にしておくことが大事」と主張。そうしないと「特定の国や利権のなかで振り回されてしまう」と警鐘を鳴らします。

本来、民主主義や自由を牽引するべきアメリカが国際協調主義に背を向け、一方で「国内の人権を抑圧している中国が国際協調主義、国連を支持する、ここに矛盾と欺瞞(ぎまん)がある」と水越さん。そして、そうした状況に右往左往しないためにも「自分の立ち位置を決めておくことが大事」と改めて主張していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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