感染防ぎ「地域の足」守る 松浦鉄道運転士 柴田範美さん

停車中に車両を点検する柴田さん=佐世保市、佐世保駅

 午後6時7分。夕暮れの佐世保駅に松浦鉄道(MR)のワンマン車両が滑り込んだ。乗客の降車を見送ると、つり革に消毒液を吹き掛け、丁寧にふき上げる。休む暇なく折り返し運行の準備を整え、ダイヤ通りに車両を出発させた。
 佐世保駅-有田駅間を走るMRは1987年に設立。翌年に入社し、MR社員として初めて運転士免許を取得した。30年以上、地域住民の通勤や通学、買い物などを支えてきた。
 朝夕の混雑は日常だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で一変した。緊急事態宣言が出た4月。休校や外出自粛で乗客数は前年と比べ半分ほどになった。「運行を継続できるのか」。不安ばかりが募った。
 頭に浮かんだのは運転士の仲間と語り合った言葉だった。「鉄道がなくなれば地域は寂れる」。できることをしようと思った。車内の消毒や換気調節に細心の注意を払い、マスクを付けていない人には感染防止の協力を求める。
 運転士として「正確さ」と「安全」を追求してきた。「今は乗客の健康を守ることも使命。それは地域を守ることにつながる」。プライドを胸に仕事と向き合っている。

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