【コロナショック】屈折する経済(1)倒産 創業150年の暖簾に幕

11日に150年の歴史に幕を下ろした老舗かまぼこ店「丸う田代」の本店=9日午後、小田原市浜町3丁目

 国内総生産(GDP)が戦後最悪のマイナス成長となる見込みの20年。「コロナショック」の影響は屈折した形で市場を襲っている。今、何が起きているのか。現場と市場に迫る。

◆政府の「実質無利子・無担保融資」受けられず

 冷たい秋雨が吹き付ける店舗の中は照明が落とされ、片付けが始まっていた。わずかな在庫を売る女性店員の目尻から涙がこぼれる。

 「もうこれを売り切ったら終わりかと思うと、やっぱり泣いちゃう」

 約120人の全従業員が解雇となったのは9月末のこと。店頭で最後の在庫を売る数人がアルバイトで残っていた。

 「創業明治初年」。神奈川県内屈指の老舗かまぼこ店「丸う田代」は11日、150年の暖簾(のれん)を下ろした。

 5代目の看板を背負う社長、田代勇生さん(65)は最後まで店頭に立ち、訪れる客を招き入れていた。

 「噴火に台風と相次いで災害に見舞われ、観光客の足が遠のき、ようやく戻ってきた直後に新型コロナウイルス感染症の影響を受けました。金融機関からは2月の段階で『4月以降はもう融資を出せない』と言われ…」

 時折、目を潤ませ視線を宙に結び、これまでの経緯を明かした。

 新型コロナの感染拡大前も、決して業況が芳しかったわけではない。売り上げが伸び悩む中でも利益を出せるように経営の効率化に取り組み、天災の影響が薄れてきた2019年当初は黒字化が見込めるほどに好調だったという。

 「メインバンクが梯子(はしご)を外した」という情報はしかし、行く先々へと伝わっていた。

 新たな融資にめどが付かず、そのせいで、政府による「実質無利子・無担保融資」も全く受けられなかった。手にできたのは200万円の「持続化給付金」と、店舗を休業にした際の「雇用調整助成金」だけだった。

 信用調査会社の帝国データバンク横浜支店によると、自己破産申請の準備に入った。負債総額は約24億2400万円。小田原のかまぼこ大手3社の一角として知られる老舗中の老舗が、新型コロナ感染拡大を引き金に倒産に追い込まれた。

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