ロッテ・チェンがぶっつけ先発で試合を作れたワケ 専門家が着目したフォーム

楽天戦に先発したロッテのチェン・ウェイン【画像:パーソル パ・リーグTV】

ヤクルトとソフトバンクでコーチ歴任した外野の名手・飯田哲也氏が解説

■楽天 4-1 ロッテ(14日・ZOZOマリン)

ロッテのチェン・ウェイン投手が14日、本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われた楽天戦で9年ぶりにNPB公式戦登坂を果たした。先発して6回2失点と好投したが、試合には1-4で惜敗。首位ソフトバンクとの差は3ゲームに開いた。現役時代は外野守備の名手として鳴らし、ヤクルトとソフトバンクでコーチを歴任した飯田哲也氏が、この試合の持つ意味を分析した。

かつて中日に2004年から11年まで在籍し、通算36勝30敗。その後メジャーに移籍し、オリオールズ、マーリンズで2桁勝利を3度マークするなど、MLB通算59勝(51敗)を挙げたチェンが、久しぶりに日本のマウンドに帰ってきた。

ストレートの球速は140キロ台前半にとどまったが、スライダー、チェンジアップを交え相手に的を絞らせない。3回までは、二塁も踏ませず無失点。飯田氏は「球威や変化球のキレ自体は驚くほどのものではないが、テークバックが小さく、右肩が開くのが遅いので、打者にとっては球の出どころが見づらい。タイミングを合わせにくい投球フォームだ。テンポが良く、ストライクを先行させていたことも、試合をつくれた要因だと思う」と指摘した。

今季はマリナーズとマイナー契約を結ぶも6月に自由契約となり、9月にロッテ入り。当初は2軍戦で試運転を行ってから1軍に昇格する予定だったが、新型コロナウイルスの感染者がでたことでロッテ2軍は試合開催が不可能に。やむなく8日にシート打撃登坂をこなしただけの“ぶっつけ”で、1軍デビューとなった。

1点リードの4回には1死一、三塁から、ロメロに同点右犠飛を許した。5回には明らかにすっぽ抜ける球が目立ち始め、1-1の同点で迎えた6回、先頭の浅村にカウント3-1から、真ん中に入った140キロ速球を左翼席へ放り込まれた。結局この回限りで降板し、投球数88で7安打4奪三振無四死球2失点。敗戦投手となったが、飯田氏は「先発投手として十分合格点をもらえる内容だし、今後は投げるたびに、実戦感覚を取り戻し、スタミナも増していくと思う。残り21試合で逆転優勝を狙うロッテにとって、貴重なピースになりうる」と評した。

一方で、飯田氏は「“ぶっつけ本番”とあって、5回の段階で疲れは見えていた。5回74球で交代させ、いいイメージのまま次回登板につなげる手もあったのではないか」との見解も示した。

チェンの降板後、ロッテは7回に“勝ちパターン”の唐川を投入。8回は東條が3者凡退で切り抜けた。ところが、1点ビハインドのまま迎えた9回、防御率4.50の佐々木千をマウンドに送ると、下位打線に送りバントを挟んで3連打を浴び、致命的な2点を失った。

飯田氏は「結果論になってしまいますが、シーズンも終盤に入り、7回に唐川を投入した以上、1点ビハインドであっても9回はセットアッパーの澤村で行ってもよかったかなと思う。1点差のまま9回裏の攻撃となれば、展開は変わっていたかもしれない。澤村が前日(13日)の試合には登板せず、休養が取れていただけになおさらです」と指摘した。

コロナ禍で主力選手が大量離脱し、ただでさえ苦しいやりくりを強いられている井口監督。逆転優勝を狙うには、継投をはじめ選手起用の1つ1つがますます重要になってくる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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