巨人高橋が終盤10月に今季初勝利 リハビリ、復活を支えた杉内俊哉の助言

巨人・高橋優貴【写真:荒川祐史】

3月に左肘痛で戦線離脱、打線と救援陣が初勝利をバックアップ

■巨人 6-1 広島(14日・東京ドーム)

巨人の2年目左腕・高橋優貴投手が14日の広島戦(東京ドーム)に今季初先発。5回2安打1失点で嬉しい今季初勝利をマークした。打っては同点の2回2死一塁。放った右中間適時三塁打は、貴重なV打となった。左肘痛のリハビリを経て、つかんだ白星。様々な感情が駆け巡っていた。

「初回から全力でいく」「まずは1イニングずつ」。自分にそう言い聞かせ、今季初の先発マウンドに立った。勝利を大きく手繰り寄せたのは、ストレートの強さだった。初回、まずは長野を二ゴロに仕留め、大きく息を吐き出す。田中も一ゴロ。鈴木には直球と変化球を織り交ぜ、最後はスライダーで右飛に。スピードこそ140キロ後半だったが、捕手・大城のミットに力強くボールは収まった。

このストレートが軸となった。力感のないフォームから放たれた直球は球数以上に速く見え、打者は差し込まれた。キレがある分、変化球も生きる。「リハビリ中、やることはたくさんありましたが、強いまっすぐが投げられるようにならないといけないと思って取り組んできました」。その成果はあったと言っていい。

きっかけを与えてくれたのは、同じ左投手で沢村賞や最多勝を獲得するなど球界屈指の好投手だった巨人・杉内俊哉2軍投手コーチの一言だった。

まだ暑さの残る9月。ピッチング指導を受けていた高橋は杉内コーチから「ミットを突き抜けるようなイメージで投げよう」と助言を受けた。18・44の距離で勝負するのではない。捕手のミットを目がけるのでもない。腕を振って、そのもっと先へ、先へ、ストレートを投げ込むイメージだ。

現役時代の杉内コーチもそうだった。ゆったりと始動し、力を抜くように、ポンと両手を合わせ、ボールを投げ込んだ。150キロが出るような直球ではない。それでも腕を振った分、打者は差し込まれていた。杉内コーチの場合は、さらに切れ味が鋭すぎるスライダーやチェンジアップがあったからこそ、投球の幅は広かったが、高橋の直球への意識を変えるには十分すぎる“変化“だった。

2月に長女が誕生、テレビの前で応援してくれている家族がいる

オフには内海哲也投手(現・西武)がつけていた背番号26を受け継ぎ、大きな期待をかけられていた。2月には長女が誕生し、より気持ちは引き締まった。しかし、3月のオープン戦で負傷。初勝利はもう10月になっていた。

「素晴らしい背番号をいただきながら、何ひとつ貢献できていなかった。(復帰まで)妻が野球に集中できるような環境を作ってくれました。子供もテレビの前で応援してくれている。家族にいい報告ができると思います」

5回で降板後、6回の鍵谷、7回の高梨とリリーフ陣が僅差のリードを必死に守ってくれた。この救援陣の頑張りも見逃してはいけない勝利のポイントだ。この2人が流れを渡さなかったことで、6回、7回に2点ずつの追加点につながった。原監督からは「次も頑張ろう」とベンチで労いの言葉をかけられたという。投手陣一丸となって掴んだ勝利で、優勝マジックを9に減らした。

初勝利にV打のおまけ付き。「外野に飛ぶ安打は高校時代以来」「ベースランニングの仕方を忘れました」と笑いながら振り返った。二塁上で一度止まりかけたが、先を見て、グラウンドを駆け、息を切らして、三塁に到達した。

お立ち台では「ファンの方の温かい声援と拍手が嬉しかったです。マジックも減ってきているので、これからもなんとか減らせるよう一丸となって頑張っていきたいです」と気持ちを込めた。高橋がずっと見据え続けた“先へ、先へ”の思いが、実を結んだ瞬間だった。いくつもの支えがあったことを改めて実感した今季初勝利となった。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

© 株式会社Creative2