老後の不安は1位がお金…94歳の父親が今も老後と思ってない充実した生活とは

老後生活で不安なことは何でしょうか?

メットライフ生命の「老後を変える全国47都道府県大調査」(2019年)によると、1位が「お金」、2位が「健康」、3位が「認知症」です。しかし、定年後にもっとも最初に訪れて、まいったなと思うことは、「孤独」「生きがい」なのです。

それまで、決まっていたローテーションが崩れて、仕事に行く必要が無くなり、とにかく時間を持て余してしまうことなのです。「人生100年時代」と言われています。定年後には20〜30年という長い時間が待っています。何かしら目標を持っていないと「孤独」で面白みのない人生を送ることになってしまいます。

今回は、私の父の話を例にとりながら、「生きがい」について、一緒に考えていきましょう。


仕事していた時の時間よりも定年後の自由な時間の方が長い!

定年後になぜ「生きがい」がもっとも大事なのでしょうか?そんなに時間を持て余すというのは、どのくらいの時間があるのでしょうか?定年後の時間は、20歳から65歳までの45年間の自由に使えた時間よりも遙かに長い時間を持つことになるのです。

20歳から60歳までの45年間は、会社で働いています。仕事で拘束されているが8時間とします。そして年間250日働いたとすると、8時間×250日×45年=9万時間です。

では、定年後は1日の自由な時間は14時間だとして、それが365日あります。60歳からの平均余命は約20年です。14時間×365日×20年=10万2200時間です。

45年間働いていた時間よりも長いのが定年後の自由時間といってもいいでしょう。この定年後を余生なんて思うのは、大きな間違いです。

ぼーっとして過ごすのは、もったいないですし、10万時間をぼーっと過ごすというのは、なかなか耐えがたいものがあるでしょう。定年後は、「第2の人生」と言える時間が残ってます。そこには「生きがい」を見つけないと、本当に「孤独な人生」になってしまいます。

定年後、ウオーキングで生きがいを見つけて「エイジレス章」を受章

定年後の生き方で、具体的に、私の父の話を参考に考えてみましょう。

私の父は、63歳のとき、長年勤めていた四国電力のグループ会社を退職。その後、趣味のゴルフを上達させたいと言うことから歩き始めて、ウオーキングの魅力に目覚め、地元のウオーキンググループ「百歩会」を仲間とともに立ち上げ。

それ以来、同会の会長や事務局長を歴任し、毎月の定例会(ウオーキング)を一度も休むことなく実行してきました。ウォーキングは、県内の神社仏閣や自然コースをはじめ、しまなみ街道の一部を歩くなど次々と催しを企画し、徳島県ウオーキング協会の役員、徳島市老人クラブ連合会の常任理事も歴任しました。

みんなに喜んでもらえるのが「楽しみじゃ」と意欲的に活動をしてきたのです。そしてその功績が認められて、2015年の88歳の時に、内閣府よりエイジレス・ライフの実践者として表彰されました。

現在は、94歳ですが、介護認定もまったく受けずに、元気で暮らしています。あまりに元気でいまでも自転車に乗って買い物にも出掛けているので、こちらはヒヤヒヤものです。さすがに歩く距離は落ちてしまい、1日3,000歩くらいしか歩いていないなんて言っているのですが、年齢を考えれば驚くばかりです。

父の場合には、定年前にやっていた「ゴルフ」がきっかけで「ウオーキング」に出会ったのだと思います。定年後の楽しみというのは、何がきっかけで見つけることができるかわかりません。

そして、「ウオーキング」を通して、社会とのつながりを持ち続け、健康維持にもつながり、なによりも「人に喜んでもらえる」ということが生きがいにもつながったのだと思います。

脳科学では、人が強い幸福を感じるのは、「誰かが喜んでいるのを見たとき」というのもわかってきています。そう考えると父はまさに、幸せな生き方を見つけることができたのだと思います。

老後をなくせば、老後の不安が消える

老後資金の相談をよく受けるのですが、あるとき、85歳の方が「これからの老後生活が心配で、お金をさらに増やせないか?」と言ってきました。この85歳の方は、「自分は、まだ老後ではない」と思っているのかも知れません。それはとても幸せなことだと思います。

冒頭で紹介したメットライフ生命の「老後を変える全国47都道府県大調査」(2019年)によると、「何歳から老後だと思いますか?」という質問項目があり、その平均は「67歳から」だそうです。ただし年齢が上がるほど老後と思う年齢は、上がっていきます。60代〜70代の場合、老後は70歳というのが大半でした。

では、年齢以外で老後を感じるかというアンケートでは、「身体が思うように動かない」と言うのがトップです。

そこで、94歳の父に「いまは老後だと思ってる?」と尋ねたところ、その答えは「ぜんぜん老後と思ってないよ!100歳まで生きるし」だそうです。

老後の不安はいろいろあると思いますが、このようにずっと老後というのを感じない生活を続けることができれば、本当の意味で老後の期間は短くなりますし、老後の心配をしなくてもいいということになります。

「老後の心配がなくなる」もっともいい方法は「老後をなくす」ことです。そして、ずっと長い間楽しい人生を送れる近道でもあるとも思います。そのためには、「生きがい」を見つける必要があると私は感じます。

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