熊川哲也のスペクタクル・バレエ「海賊」が3年ぶり再演!

K バレエ カンパニー「海賊」(C)Hidemi Seto

熊川哲也率いるKバレエ カンパニーがこの秋3年ぶりに上演する「海賊」が、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールで10月15日(木)についに開幕した。芸術監督・熊川哲也の演出振付により、2007年に誕生したKバレエ カンパニーの「海賊」。以来同団 を代表するレパートリーのひとつとして再演を繰り返し、大きな話題を集めてきた人気作だ。特別公演などではたびたび上演される「海賊」だが、レパートリーに持つカンパニーは少なく、全幕での上演機会は多くない。そんな中、熊川は豊かな想像力と独自の発想を大胆に取り入れ、一大スペクタクル・アドベンチャーを創出。スピード感溢れる展開に人間ドラマを色濃く盛り込み、バレエ界に埋もれていた「海賊」の世界を現代のステージに見事に蘇らせている。

幕が開けて登場するのは、七つの海を制覇しその名を馳せる海賊船。船にはコンラッドとその右腕のアリ、ビルバントら海賊たちが乗り込み、行く先々で大きな勝利を手にしてきた。ところがある時かつてない大嵐に遭遇し、ギリシャの浜辺に打ち上げられてしまう。コンラッドを助けたのは、メドーラとグルナーラの美しい姉妹。意識を取り戻したコンラッドはメドーラにひと目で心奪われるが、奴隷商人のランケデム一行があらわれ、姉妹は捕らわれの身に。コンラッドは彼女らの奪還を目指し立ち上がる――。

冒頭に登場する巨大海賊船に大嵐による難破と、プロローグからステージは圧倒的な迫力をもって描かれ、一気に作品世界へと引き込んでいく。奴隷市場で競りにかけられるメドーラとグルナーラの踊りは一幕の大きな見どころだ。奴隷商人ランケデムとのパ・ド・ドゥでグルナーラがグランフェッテを披露すると、次にメドーラが哀愁を全身に湛えつつそのしなやかな舞いで目を奪う。熊川はメドーラとグルナーラを姉妹に設定するなど、独自の人間関係を構築。コンラッドとメドーラの恋の行方、そして海賊たちの固い絆に裏切りと、キャラクター各々の背景と心情が物語に厚みを添える。

第二幕はさらに見せ場も多く、海賊たちの群舞やビルバントの鉄砲の踊りに続き、アリ、メドーラ、コンラッドのグラン・パ・ド・トロワへと息つく間もなくなだれ込む。スピーディーなステージ運びは熊川版の醍醐味だが、その振付はステップ数の多さと難度の高さで知られ、ダンサーにとっては確かな技量が求められる。

K バレエ カンパニー「海賊」(C)Hidemi Seto

公開ゲネでアリを踊った山本雅也は、今年1月プリンシパルに昇格した若手実力派。2017年の前回公演でもアリに扮し、大きな賞賛を博したのは記憶に新しい。アリといえば熊川の十八番でもありひと際注目が集まる役だが、山本は力強い跳躍に素早い回転と盤石なテクニックに加え茶目っ気もたっぷり盛り込み、アリを全身で体現してみせた。またメドーラを踊った成田紗弥の気高く清楚な気配と、グルナーラを踊った小林美奈の愛らしく可憐な佇まいという、姉妹役二人の対照的な持ち味も魅力だ。コンラッドに扮した堀内將平は正確な技量に加え演技力に秀でたダンサーで、柔らかな物腰でメドーラへの愛を貫く姿が印象に残る。主要キャストは回替わりで、メドーラ役は中村祥子、成田紗弥、毛利実沙子が、コンラッド役は遅沢佑介、堀内將平、杉野慧が、アリ役は伊坂文月、山本雅也、関野海斗が、グルナーラ役は小林美奈、浅野真由香、戸田梨紗子、結城亜美が、ランケデム役は髙橋裕哉、石橋奨也、栗山廉が、ビルバント役には宮尾俊太郎、西口直弥、グレゴワール・ランシエが配役されている。中村と遅沢は本公演を最後にKバレエ カンパニーのプリンシパルダンサーを退き、11月から中村は名誉プリンシパルに、遅沢はゲスト・ステージング・レペティトールに就任するなど、名プリンシパル2人が次のステージへと進む。一方、今年 9 月にソリストとして入団した結城がグルナーラ役に抜擢、また昨夏にソリストとして入団した関野がアリ役でデビューを果たすなど新進スターの起用も続き、彼らの今後の動向にも目が離せない。

当初、上演は5月に予定されていたが、コロナ渦により秋に延期に。Kバレエ カンパニーにとって1月の「白鳥の湖」以来の公演であり、まさに待望の幕開けとなる。

Kバレエ カンパニー「海賊」は10月15日(木)~10月18日(日)まで、Bunkamura オーチャードホールにて開催。また今回は公演の開催とあわせ、Kバレエ カンパニー初の映画館ライブビューイングとオンラインライブでの配信を実施。

<芸術監督・熊川哲也コメント>

(C)中森真

約半年におよぶ活動休止期間を経て、本公演『海賊』がKバレエ カンパニー再始動を飾ることになります。社会全体が新しいスタイルへの転換を求められる今、劇場芸術の世界を生きる我々もまた、必要な変化に柔軟な発想をもって対応していかなければなりません。2007年に初演したこの「海賊」は、僕がそれまでに手掛けたどの古典バレエよりもオリジナリティにあふれ、まさに他に類を見ない、「Kバレエの“海賊”」と誇れる作品と自負しています。この作品が持つ力強さこそ、カンパニーが踏み出す新たな第一歩にふさわしく、かつてないほどのエネルギーと感動が劇場を満たすはずです。そのひとときを共にする観客の皆さんにも、この舞台が明日へと向かう大きな活力をもたらすものとなることを願っています。

■公演概要

[タイトル]Daiwa HouseⓇPRESENTS 熊川哲也 K バレエ カンパニーAutumn 2020「海賊」

[公演日]10月15日(木)~10月18日(日)

[会場]Bunkamura オーチャードホール

[芸術監督]熊川哲也

<公演に関する詳細>

K バレエ カンパニー公式 HP

K バレエ カンパニー「海賊」(C)Hidemi Seto

K バレエ カンパニー「海賊」(C)Hidemi Seto

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