【コロナ】なぜ、あの薬局はコロナ下でも増収したのか?

【2020.10.16配信】新型コロナウイルス感染症は患者の受診抑制を招き、薬局経営にも大きな影を落としている。日本薬剤師会が173薬局を対象にした調査では、3月から7月にかけて、薬局の主な収入源である調剤報酬の技術料が前年同月比で7.8%〜17.4%減少している。こうした状況下、コロナ下でも増収になっている薬局がある。同薬局は薬機法改正で義務化された「服薬フォロー」の徹底が薬局の増収につながるとの見方を示した。

指名された薬局の理由に「距離的近さ」は一気に薄くなった

幕張メッセで10月14日~16日まで開かれた「医療と介護の総合展」(リードエグジビションジャパン主催)で、狭間研至氏(一般社団法人日本在宅薬学会理事長、ファルメディコ株式会社代表取締役社長)が講演したもの。

同氏はこれまで、薬局薬剤師が調剤薬を渡す場面以上に、「飲んだ後」をフォローする場面で活躍することの重要性を指摘しており、今般の服薬フォローを義務化した薬機法改正にも小さくない影響を与えてきた人物だ。

狭間氏は、この「飲んだ後の服薬フォロー」が、コロナ下の薬局経営においてもプラスに働いたことを強調した。

コロナでは3密を恐れた患者の受診抑制が起こり、大病院や診療所前の薬局では処方箋減が起こったと言われている。一方で狭間氏は、「診察の場で、当社の“ハザマ薬局に処方箋を送って欲しい”と言ってくれる患者さんが多かった」と指摘。これはコロナの特例で初診からオンライン診療が可能となった中で、医療機関は処方箋をどの薬局にファクスするかを患者に尋ねる場面が起きたからだ。

「ここでハザマ薬局に、と患者に指名されたのは、医療機関から距離が近いからではなく、“あの薬局でないと服薬後の副作用の管理や重複投薬のチェックをしてくれないから”だったと思う」(狭間氏)。これまで上位に上がってきた「医療機関から近いから」という理由が一気に薄くなって来たと指摘した。

服薬フォローしていくとO T C薬も売れる

狭間氏は「やったことは3つ」と説明。

多剤併用の多い高齢者では、副作用が起きるリスクが高いことが知られているが、その副作用を抑えるためにさらに処方薬を上乗せしていく「処方カスケード」が問題になっている。ある患者さんを「観察」したことで、一包化の包みがパンパンになっている患者さんを見つけたこともあるという。「服薬後、お腹がいっぱいになって…」という何気ない患者の一言から気づいたという経験を話した。

ハザマ薬局ではスタッフが血圧を測ったり、医師の往診前に薬局側が患者の状態を把握し、医師に伝えるなど、チャレンジを続けて来た。

また、薬剤師の従業員に、「なぜ血圧を測るのか」、「なぜ薬剤師になったのか」という「W H Y」を聞くようにしているという。「薬剤師になった理由では、大抵の薬剤師は患者さんの役に立ちたくてという理由を挙げる」(狭間氏)。

患者の役に立つためにも、「患者に聞こう」「患者をみよう」「患者の状態を調べよう」「医師に伝えよう」などを実践している。

これを実践することでOTC薬が売れるようになったという。
「O T C薬が売れるようになりました。患者さんのことを知っているからです。自分が相談を受けたO T C薬が売れると、中には、こういう仕事がしたかった、と泣いてしまう薬剤師さんもいます」(狭間氏)

中小薬局の優位性を生かした展開が、図らずもコロナでしやすくなったのかもしれない。

シールド越しに講演した狭間研至氏

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