「あらお健康手帳」がグッドデザイン賞 荒尾市内の医療機関、病歴など情報共有

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「あらお健康手帳」をPRする中村光成医師(左端)ら=荒尾市

 熊本県の荒尾市医師会が発行する「あらお健康手帳」が、2020年度のグッドデザイン賞に選ばれた。手帳の活用により、医療機関ごとだった患者の診療情報を市内の45医療機関で共有でき、介護現場などで役立つことも期待される。受賞を機に、生涯利用できる健康管理手帳として普及させたい考えだ。

 手帳は、同医師会と荒尾市民病院が2019年4月に発行。日本人に多い「五大疾病」の糖尿病、がん、心不全、脳卒中、認知症の病歴を市内の医療機関で共有することを狙った。きっかけは16年4月の熊本地震。多くの医療機関の電子媒体が機能不全となったことで、紙媒体の有用性が認識されたという。

 同医師会理事で地域連携を担当する中村光成医師(58)は「患者や家族が手帳を管理することで、災害時のバックアップデータになる」と説明する。

 手帳は、A5判サイズ。病歴やアレルギーなどの基本情報、入院・手術歴、血圧や脈拍、介護情報、おくすり手帳などで構成し、患者らがバインダーでとじる。五大疾病の通院情報もそれぞれ用意され、該当者が加えていく仕組み。バラバラだった健康に関する書類が1冊にまとめられ、適切な治療を受けられるようにした。

 うまく活用すれば、医療、福祉、介護の各現場で情報共有が円滑に図られる。公益財団法人日本デザイン振興会(東京)が表彰するグッドデザイン賞では、審査員から「地域包括ケアの未来を感じさせる」と評された。

 課題は市民への普及だ。現在、市内の45医療機関で疾病がある患者らを対象に配布されているが、これまでに配ったのは約270部。新型コロナウイルスの影響もあって十分に周知できておらず、市民約5万2千人の約0・5%にとどまる。

 中村医師は「手帳は使えば使うほど効果を発揮し、患者は最適なサービスを受けられる。行政の協力を得ながら、市民全員が携帯する環境を目指したい」と意気込んでいる。(樋口琢郎)