社説(10/17):非正規待遇格差に判決/是正の努力怠るべきでない

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 非正規労働者が正社員との待遇の格差是正を求める5件の訴訟で、最高裁の判決が相次いで出た。このうち各種手当や休暇の格差は不合理で違法としたが、賞与と退職金の支払いは認めなかった。

 労働側に一定の前進はあったが、待遇に占める割合の大きい賞与や退職金が退けられたことで、政府の「同一労働同一賃金」制度に水を差しかねない判決とも言える。

 ただ、判決は賞与や退職金も雇用環境次第で「不合理な格差」と判断されることがあり得るとも述べている。経営側は判決の都合のいい部分だけを援用して、格差是正の努力を怠ってはならない。

 争点は、待遇格差が旧労働契約法20条(現パートタイム・有期雇用労働法8条)で禁じられている不合理な格差に当たるかどうかだった。

 最高裁は2018年6月の判決で、賃金総額だけでなく、給与や手当といった個別項目ごとの趣旨を考慮すべきだとの判断枠組みを示した。今回もこの枠内で、それぞれの例を検討した。

 手当・休暇訴訟は3件。日本郵便の契約社員らが正社員と同様に与えるよう訴えた。

 判決は、扶養手当や有給の病気休暇が「生活保障や福利厚生を図り、継続的な雇用を確保する目的」があると指摘。契約更新を繰り返し、長年働いている原告を支給対象としないのは不合理だとした。

 賞与と退職金の訴訟は各1件。大学の元アルバイト職員が賞与を、地下鉄駅売店で働いた元契約社員2人が退職金の支払いを、それぞれ求めた。

 賞与や退職金は、正社員として職務を遂行し得る人材の確保と定着を図るために支給すると定義。3人は業務が容易で配置転換もないとして、支給しないのが不合理とは言えないと結論づけた。違法とした二審判決が覆った。

 働き方と待遇を綿密に吟味する一方で、賞与や退職金では経営側の裁量を重くみた。労働と経営のバランスを取ったようにも見える。今後もケース・バイ・ケースで判断されることになろう。

 同一労働同一賃金は4月に大企業を対象に始まり、来年4月には中小企業にも拡大される。この流れは止めようがない。

 旧労働契約法は、労働者の求めに応じ待遇の違いについて説明する義務を企業に課している。経営側は正社員と非正規社員に求められる役割と待遇を透明なルールによって定めることが求められる。

 労働者が裁判を起こすことは容易ではない。労働条件の決定は労使交渉に委ねられる。その意味で労働組合の役割はますます大きくなる。

 非正規労働者は2000万人に上り、労働者の4割を占める。多様な働き方を求め、増加が予想される。非正規の労働者の処遇を改善することは企業にとって人材の確保にもつながるはずだ。