ヤマハの野左根航汰がSBK参戦に向けて意気込み「大きな目標にしていたカテゴリー。いよいよスタートラインに立てた」

 2015年にヤマハの若手ライダー育成チームのYAMALUBEレーシングチームに移籍して、2017年にYAMAHA FACTORY RACING TEAMに昇格した野左根航汰。今年の全日本ロードレース選手権JSB1000クラスで開幕4連勝を遂げてチャンピオン街道をひた走るが、来年からはスーパーバイク世界選手権(SBK)で若手ライダーを育成するGRT Yamaha WorldSBK Junior Teamに移籍することが決定した。

「大きな目標にしていたカテゴリーのひとつがスーパーバイク世界選手権(SBK)で、いよいよそのスタートラインに立てたという気持ちです。こうしたチャンスをくれたヤマハに、本当に感謝しています」

野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

 野左根の言葉通りビッグチャンスを得たわけだが、もちろん茨の道でもある。

「スーパーバイク世界選手権(SBK)の開催サーキットで知っているのはフィリップアイランドとドイツのオッシャースレーベンだけで、それ以外の初めてのサーキットに関しては、テレビゲームやYouTubeなどを活用してコース攻略をイメージしています。コースレイアウトは思っている以上に正確なので、あとは実際に走ってコースの特徴やその時々のコンディションに合わせて修正していきます」

「11月にはヘレス(スペイン)でスーパーバイク世界選手権(SBK)の合同テストがあるので、ここでチームと初めて合流します。チームの拠点はイタリアのミラノ郊外にあり、チームの近くに僕の拠点を置きたいと思っていますが、ヘレステストも含めて、すべてが新型コロナウイルス次第ですね」

全日本ロードJSB1000クラスに参戦している野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

 今年の全日本JSB1000では開幕4レースで連続ポールポジションと一発の速さにも磨きがかかっている。

「シーズンオフのセパンテストで調子が良かった。一発のタイムは前年も出ていましたが、このオフのテストではロングランでのアベレージタイムが特に良かった。マシンの基本は中須賀(克行)さんと一緒ですが、味付けの部分で僕の方は二時旋回を重視する方向にしていて、これがとてもいい感じです」

野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

 レースでも開幕4連勝しているが、その結果と内容には少し乖離がある。

「中須賀さんと勝負をして勝つというのが今年の目標のひとつですが、開幕戦SUGOのレース1で中須賀さんは転倒して、レース2はキャンセルでした。オートポリスでもレース1は赤旗だったし、レース2では申し訳ないことをしてしまい、まだ力で中須賀さに勝ったという気持ちになれていません。だから、残りのレースでしっかりと中須賀さんと戦って、そして勝ちたいですね」

野左根航汰を抜いたが赤旗で2位となった中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)/2020年全日本ロード第3戦オートポリス JSB1000 レース1

 野左根にとってはもちろんだが、全ライダーにとって絶対王者・中須賀は高くそして分厚い壁だ。しかし、だからこそ中須賀を打ち破り、真の全日本王者として次のステップに進みたいと野左根は考えている。

「YAMAHA FACTORY RACING TEAMに昇格して2017年に2勝しました。しかし、2018年は1勝もできず、2019年は1勝で、もっと進歩しなければいけなかったのですが、それ以上に中須賀さんの進化がすごかった。ちょっと時間がかかってしまいしまたが、今年はチャンピオンを獲れる位置にいるので、しっかりとチャンピオンを獲ってスーパーバイク世界選手権(SBK)に挑みたいですね」

全日本ロードレース選手権第3戦オートポリス JSB1000 レース2:野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

■YAMAHA FACTORY RACING TEAM 中須賀克行

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

「こういうのはタイミングもあるけれど、よくやった、頑張ってこいという気持ちと、こうした環境の中でスーパーバイク世界選手権挑戦に動いてくれたヤマハに感謝するべきでしょう。ただ、スタートラインに立ったに過ぎません。ここからが本当の勝負。チーム力はあるし、とにかく一日も早くチームに溶け込んで、そして周りのスタッフを取り込んで頑張ってほしい」

■YAMAHA FACTORY RACING TEAM 吉川和多留監督

YAMAHA FACTORY RACING TEAM 吉川和多留監督

「1レース毎に、中須賀選手からいろいろなことを学び、吸収していて、今は本当に伸び盛りです。だからこそ、世界でしか体験できないいろいろなものを吸収できるチャンスであるとも思います」

「今後は、いち早くチームに溶け込むこと、そしてサーキットに慣れることが重要です。1年目は、順位も大切だけれど、のびのびと走ってほしい。そして、いずれ自分と相性の良いサーキットに出会った時、そこで表彰台争いをしてほしい。行ける時に、行ける状態を常に作っていてほしいですね」

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