中曽根氏合同葬へ弔意要請 長崎県内市町教委に戸惑い 「政治的意図 勘繰る」

 故中曽根康弘元首相の合同葬に合わせて、文部科学省が国立大や都道府県教委などに弔意表明に関する通知をしていた問題で16日、長崎県教委を通じて通知を受け取った県内21市町教委からは「何か政治的な意図があるのではと勘繰ってしまう」「政教分離もあるが元首相でもある」など、戸惑いや対応に苦慮する声が上がった。
 通知は13日、文科省から県教委に「参考のお知らせ」として届いた。県教委は15日、県立校に対して弔意表明の対応を求めないことを決め、全市町教委に送付。県教委担当者は「文科省からの通知は学校対応までは求めてなく、市町教委へ周知をお願いする旨が添えてあった。あくまで参考周知」と説明する。
 ただ、受け取った各市町教委の反応はさまざまだ。12市町教委が管内の小中学校に通知を伝えた。このうち対馬市教委は独自に「一律に弔意表明を要請するものではない」とする文章を添付。担当者は「通知の趣旨が正確に伝わるように添えた」と説明した。別の市教委担当者は「政教分離もあるが元首相でもある。各学校の判断に任せたい」と対応に苦慮した様子だった。
 一方、学校への通知を見送ったある町教委担当者は「通知には驚いた。何か政治的な意図があるのではと勘繰ってしまう」と明かす。別の町教委担当者は「土曜日にわざわざ出勤するのも働き方改革に逆行している」と話した。
 県教組の上原貴之書記長は「単なるお知らせというが、特定政党の支持を禁じた教育基本法に抵触する恐れがある。受け取った側がどう受け止めるかを考えてほしい」と批判した。
 また、県庁と各振興局、県警本部は弔旗を掲げるほか、17市町が本庁や支所などに弔旗や半旗を掲げて対応。黙とうについてはほとんどが個人判断としている。

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