招集直後の予選出走は「“氷の風呂に浸けられる”ようなもの」ヒュルケンベルグが慌しい週末を振り返る

 ニコ・ヒュルケンベルグは、先週末の第11戦アイフェルGPで予選直前にレーシングポイントに招集にされたことについて、あたかも「氷の風呂に飛び込む」ようなものだったと語っている。

 ニュルブルクリンクにおけるヒュルケンベルグのパフォーマンスは、F1パドック全員から称賛を受けた。ヒュルケンベルグがレーシングポイントで代役を務めるのは今シーズン3回目のことで、今年の序盤にはシルバーストン2連戦でセルジオ・ペレスの代わりに走行した。

 しかし先週末の突然の起用については、トラックタイムが著しく不足していることもあり、F1の“スーパーサブ”であるヒュルケンブルクにとって壁はさらに高いものだった。

「シルバーストンでの経験が頭にあった。同じチームだし、基本的には同じマシンだ。でもシルバーストンでの2戦から、何かが変わっていたんだ」とヒュルケンベルグは『Auto Motor und Sport』に語った。

「レーストラックも違うところだ。すぐ予選に出るということは、深いところに飛び込むようなものではない。氷の風呂に浸けられるようなものだよ!」

 ヒュルケンベルグは土曜日の予選でわずか数周の走行をし、最下位だった。だがヒュルケンベルグによると、それは予想された結果だったという。

「スタートの時から、グリッドの最後部より前には行けないことが自分にははっきりしていた。それ以外の結果が出たら奇跡だっただろう」

「ラップタイムにはとても満足していた。自分が走ることができた4周で改善が見られた」

「シケインで足を取られてしまったんだ。キミ(ライコネン/アルファロメオ)に勝てるところだったんだよ。大仕事だった。やるかやらないかだ。そしてやると決めたら、あまり深く考えてはいけない。ただやって反応するだけだ」

2020年F1第11戦アイフェルGP ニコ・ヒュルケンベルグ(レーシングポイント)

 困難な状況に加えて、ヒュルケンベルグはシルバーストン以降大きく進化したマシンに適応しなければならなかった。

「ステアリングの何かが変わっていた。シルバーストンでの感触とは完全に異なっていて、ステアリングスピードも違っていたから、まずそれに適応しなければならなかった。慣れるまでに数周かかったよ」

 またヒュルケンベルグは、スタート前にマシンを間違ったエンジンモードにしていたのだという。

「通常、バーンアウトの後で走行ポジションにする。でも(ダイヤル上に)ふたつのポジションがあった。バーンアウトの後にひとつのポジションに入れたのだけど、そのせいでエネルギーがないモードになってしまった」

「気が付いて、素早く入れ替えなければならなかったよ。何も起こりはしなかったけれど、素晴らしいスタートだったとも、走り出しだったとも言えないね!」

 入賞圏内に入ったヒュルケンベルグのレースは非常に順調だった。慎重なスタートから徐々にペースを上げ、ライバルたちと戦い、印象的なオーバーテイクを数回行ったのだ。

「ホイールをロックアップしたドライバーが多くて、とても混み合っていた。レースの前に言っていたように僕はトラブルを避けたかったから、離れていたよ」

「当然1周目にレースを終えたくない。まだ始まってもいないんだからね。僕たちはパフォーマンスを発揮できるレーシングカーに乗っていることを分かっていたから、慎重に進んでいった」

 ヒュルケンベルグの揺るぎないパフォーマンスは、グリッド上における彼の存在を正当なものに見せた。しかし2021年に向けた現実的な選択肢はほとんどなく、F1で最も重要な代役であるヒュルケンベルグは今も不透明な将来に直面している。

「ドライバーが供給過剰になっている。市場を見渡すと多くのドライバーがいるし、一部のチームにとっては経済的に魅力のあるドライバーもいる」

「これからどうなるかは分からない。ある程度準備していなければならないだろう。もっと早い段階で準備の時間をとって、週末に参加できたらいいね」

2020年F1第11戦アイフェルGP 土曜予選前にパドックに到着したニコ・ヒュルケンベルグ
2020年F1第11戦アイフェルGP ニコ・ヒュルケンベルグ(レーシングポイント)
2020年F1第11戦アイフェルGP ニコ・ヒュルケンベルグ(レーシングポイント)

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