申請2カ月でも未支給…家賃支援給付金どうなっているの? 企業困惑、担当者で違い

 新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた中小企業などの家賃負担の軽減を目的とした、国の「家賃支援給付金」について、給付の遅れが指摘されている。県内の事業者でも、申請から2カ月以上経過しても給付に至らないケースがあり、不満の声が上がっている。

 家賃支援給付金は、売り上げが減少した事業者を対象に、中小企業などの法人に最大600万円、フリーランスを含む個人事業主に最大300万円を一括で支給する制度。申請には3月末時点で有効な賃貸借契約書などのほか、直近3カ月分の家賃を支払った証明が必要だ。予算は約2兆円。

 飲食業や小規模小売店などの店舗の多くは、感染症の影響で外出自粛が強まったことから売り上げが減少している。家賃補助を求める声は多く、7月14日の申請開始日には1万件を超える申請があった。

 しかし確認書類の多さなどがネックとなり、支給は順調とは言い難い。9月10日時点の支給実績は申請件数の4分の1にとどまった。審査作業の習熟が進んだことから、10月14日時点では全国で59万件の申請に対して支給は31万2千件、支給率は52.9%とペースアップしているが、半数近くの支給が終わっていない。10月中に審査人員を千人増やして6千人にするという。

 審査基準の不透明さに対する困惑も多い。那覇市内の飲食店を経営する女性は8月上旬に申請したが「不備」とされた。オンライン申請のマイページには、直近3カ月の家賃支払い証明が不備というメッセージが送られたが、具体的にどの書類が足りないのかなどの記載はなかった。

 コールセンターに問い合わせたところ「ATMの明細コピーではだめ」と言われたという。しかし、琉球新報が中小企業庁に問い合わせたところ、振込先と金額、日付が確認できればATMの明細でも良いという。

 その後、女性は別の書類に替え提出したが不備とされ、現在は5回目の申請で結果を待っている状態だ。何度か問い合わせる中でコールセンターの人に「書類の通りなら(審査を)通るはずだが、(審査する)人によって違うので」と言われたこともあったという。

 女性はこれまでに持続化給付金や雇用調整助成金の申請もしてきたが、同様のトラブルはなかった。「他の給付金は不備があってもどう直せば良いか分かったが、家賃支援給付金はそれが全く分からない。家賃は大きな経費なので、人によって言うことが違うのは困る」とため息をついた。

 琉球新報の取材に中小企業庁の担当者は「担当する人によって齟齬(そご)があるという事例も把握している。できるだけ改善していく」として、一律に審査できていないことを認めた。

 県社交飲食業生活衛生同業組合の下地秀光理事長は、経営するラウンジバーの給付金を8月初めに申請した。しかし、2カ月半が経過した今でも、マイページには「確認中」と表示されるのみで、不備があったかどうかも分からないという。同組合では8月以降、加盟店舗から約200件の相談を受けているが、中には2週間程度で給付された例もあるという。

 下地理事長は「確認作業が多くて大変なのだろうと思うが、とても困っている。いつまでも給付されないのではないかと不信感を持っている。国はスピーディーに作業してほしい」と求めた。

(沖田有吾)

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