炎と黒煙「逃げて」 浦上駅前火災 白昼、週末の街一時騒然

火災現場付近で通行に規制をかける警察官ら=17日午後1時11分、長崎市岩川町

 「逃げて」-。長崎市のJR浦上駅前で発生し、店舗など3棟を全半焼した17日の火災。激しく燃え上がった炎と黒煙が辺り一帯を包み込み、交通量の多い国道に面した現場は週末の人出とも重なり、一時騒然となった。「状況をまだ理解できない」。被災した店の関係者は呆然(ぼうぜん)と立ち尽くした。

 全焼したパチンコ店「浦上まるみつ」に来店していた30代男性会社員は午後0時40分すぎ、「火事です。とにかく逃げて」という従業員の叫び声で異変に気付いた。店内は視界がかすむほど煙が充満。外に逃げ出したがめまいに襲われ、一時救急車で休んだ。「逃げるのに必死だった」。70代女性は「勝った玉とカードを集めていたら『早く逃げろ』と言われた。全部燃えて、もうけはゼロ」と声を震わせた。
 出火直前に「割烹(かっぽう)ひぐち浦上本店」で食事をした近くの岡正市さん(72)は「普段と変わらなかった」と驚く。その後「まるみつ」に向かうと、入り口付近の柱から煙が出ているのが見えたという。「従業員が消火器で消そうとしていた。ものの10分で黒煙が上がった」と振り返った。
 隣接する「まるなか本舗浦上総本店」も全焼。連絡を受けて駆けつけた中村吉治社長(43)は「ここは戦後のころからある店で、たくさんの物語があったはず。状況をまだ理解できない」と、呆然と立ち尽くした。

火災の黒煙が立ち込めるJR浦上駅周辺=17日午後1時3分、長崎市内

 炎の勢いは路地を隔てた区画にも及んだ。「ひぐち」北側のビルのエステ店で客を施術中だった深水敦子さん(47)は「燃え移るかもしれないと貴重品だけ持ってお客さんと逃げた。恐かった」。1962年に開店し長年親しまれていた「ひぐち」の被災を残念がる声も。何度も利用していたという男性は「歴史ある店がなくなるなんて」、別の公務員の男性も「言葉が出ない」と寂しそうだった。
 「ひぐち」「まるみつ」両店を運営するひぐちグループは同日夕、ホームページに「おわびとお知らせ」を掲載。「多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます」とし、出火原因は「調査中」とした。


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