緊急事態宣言から半年 <マスク>必死に買い求めた日々「遠い昔の話のよう」

店頭に並ぶマスク。6月以降は安定的に入荷している=長崎市岩見町、MrMax長崎店

 黒や灰色、水玉模様-。街を見渡すと色とりどり、多様なデザインのマスクを着用した人々が行き交っている。新型コロナ禍で当たり前となった一つが外出時のマスク着用だろう。
 マスク不足は1月中旬ごろ始まった。ディスカウントストアのMrMax(長崎店、時津店)によると、中国人客らのまとめ買いを皮切りに、下旬には日本人客も殺到。たびたび品切れ状態となり、2月に入って土日は開店前に200人が列をつくった。手に入らなかった客が従業員を責める場面もあったという。
 多い日には入荷状況を確認する電話が「5分に1回」。マスクや消毒液だけでなく、「品薄になる」とのデマが流れ、トイレットペーパーやキッチンペーパーが店頭から消えた時期もある。長崎店の戸高清和次長は「あの当時は毎日の開店前に多少の怖さを感じていた」。6月以降、マスクは安定供給できるようになった。
 「どこに行っても手に入らず、マスクに翻弄(ほんろう)され続けました」。長崎市内に家族4人で暮らす女性(41)はそう話し、苦笑いを浮かべた。購入を諦め、手作りをしようにも材料が手に入らない。インターネットで検索し、使い捨て用にキッチンペーパーを挟んだりするなど数日間使い回す方法も試した。5月末に届いた「アベノマスク」は子どもたちが大切に使った。
 女性は今、お気に入りの素材のマスクを愛用する。店頭には使い捨てマスクの箱が積まれ「値下げ」「お買い得」の文字も。でも「まだちょっと高いかな」。必死にマスクを買い求めたあの日々は「遠い昔の話のよう」に感じている。


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