「若月も褒めたって」オリックス再建へ中嶋監督代行のお眼鏡にかなう正捕手は誰か

オリックス・中嶋聡監督代行【写真:荒川祐史】

最下位低迷も西武には3年ぶり勝ち越し、就任後は伏見の出場機会が急増

8月下旬から中嶋聡監督代行が指揮を執っているオリックスは17日、敵地メットライフドームで西武に4-1で勝ち、最下位に低迷しながらも、今季の西武戦勝ち越しを決めた。捕手出身の中嶋監督代行は、誰を、どのようにして正捕手に育てようとしているのか。

中嶋代行は試合後の記者会見で、「どのチームにも勝とうと思ってやっているが、そういうことがあるのはいいこと」と3年ぶりの西武戦勝ち越しを喜んだ。そして終了間際、「若月も褒めたってな!」と付け加えた。

この日は先発の台湾出身右腕、張奕(ちょう・やく)が西武打線を6回3安打8奪三振無失点に抑え今季2勝目を挙げたが、指揮官は「今日のリードは良かった。張も投げやすそうだった」と、8試合ぶりに先発マスクをかぶった若月の配球を褒め上げたのだ。張の140キロ台のストレート、スライダー、カットボール、フォーク、チェンジアップ、ナックルカーブといった多彩な球種を、コース、高低が偏らないように散らし、相手打者に的を絞らせなかった印象だった。

若月は一昨年オフ、23歳の若さで選手会長に就任し、今後長くチームの屋台骨を支える存在として期待されているが、中嶋代行の就任後、出場機会を減らしている。

オリックス・若月健矢【写真:荒川祐史】

西村政権下では若月の出場機会が多かったが、中嶋監督代行は伏見を多く起用している

西村前監督が指揮を執った8月20日までは、先発捕手は25歳の若月が42試合と圧倒的で、30歳の伏見は6試合、昨季途中に中日から移籍した松井雅は5試合に過ぎなかった。ところが中嶋代行の下では、伏見が30試合、若月は14試合(松井雅は5試合)と逆転している。中嶋代行は若月について「こちらからしたら物足りなさがあった。今日は(リードを)考えてくれたんだなと思います」と語った。

ちなみに、昨季は若月のスタメン出場が116試合を占め、伏見は3試合、松井雅は12試合。他に現DeNAの高城が5試合、飯田が6試合、山崎勝が1試合だった。

「常勝チームには必ず名捕手あり」といわれる。特に、巨人V9時代の正捕手で、西武監督在任9年でリーグ優勝8回、日本一6回を誇った森祇晶氏は伊東勤氏(現・中日ヘッドコーチ)、ヤクルトを常勝球団にした野村克也氏は古田敦也氏を、名捕手に育てたことで知られている。

中嶋代行は現役時代、オリックスの前身である阪急に入団し、西武、横浜(現DeNA)、日本ハムを渡り歩きながら、強肩強打の捕手として29年間にわたって活躍した。オリックスの正捕手を張ったこともあれば、西武で松坂大輔の専属捕手的に起用されたこともあった。

昨季2軍監督としてオリックスに復帰した中嶋代行が、リードを重視して捕手を起用していることは間違いない。若い若月に対する期待の大きさもうかがえるが、自身の豊富な経験を生かして、どんな育成手腕を発揮するのか、楽しみだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2