新型コロナ「間隔2mが基本。できない際はマスクでリスク低減を」神戸大大学院・岩田教授

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オンラインで講演する岩田健太郎教授

 新型コロナウイルス感染症について、著書などで積極的な情報発信を続ける神戸大大学院医学研究科の岩田健太郎教授(感染症治療学)がこのほど、北摂情報文化懇話会(事務局・神戸新聞北摂総局)の10月例会でオンライン講演した。岩田さんは今年2月、集団感染があったクルーズ船に入り、感染リスクの高い状況を動画サイトで訴えた。科学的な根拠に基づいて自ら考えることの重要性を説き、「感染予防には人同士の間隔を2メートル取るのが基本。これができない際にはマスクでリスク低減を」などと具体的に解説した。要旨は次の通り。(高見雄樹)

 2011年、焼き肉店でユッケを食べた人が腸管出血性大腸菌による集団食中毒になった。厚生労働省は翌年、牛の生レバー(肝臓)の提供を禁止した。私はおかしいなと思った。牛肉を出して病気になった事例で、レバーを禁止にした。肉とレバーは違うものなので論理的な整合性がない。

 私は確かめてみた。12年7月以降、この大腸菌の感染事例は全く減っていなかった。厚労省は「やってる感」を出しただけで、結果につながっていない。

 われわれは政府の施策を受け入れるだけでなく、データを確認して「批判的吟味」をすることが必要。規則を作ったという過程ではなく、結果が大事だ。阪神タイガースも藤井聡太二冠も結果で評価される。医療者や政治家、保健所など公衆衛生の担当者も同じ。皆さんもそういう目で私たちを評価すべきだ。

 

■「若者だから」のわな

 2月末、当時の安倍首相が学校の休校を要請した。この政策の効果を検証すると、3月末まで休校が患者を減らしたという証拠はなかった。なぜか? 新型コロナは大人を中心とした感染症で、10代以下の子どもたちは感染しにくい。感染の主体ではないグループの活動を抑えても、感染は止まらない。

 新型コロナは多くの患者が軽症なので油断してしまう。「若者だから」「軽症だから」-これがわなになる。若者の感染状況は追跡が難しく、高齢者に広がる。兵庫県がまさにそうだ。

 当初は加古川医療センターも神戸の中央市民病院も病棟は若い人で埋まっていた。みんな元気なので、同センターには「飲酒、喫煙は禁止」の張り紙があったほどだ。恋人同士で入院して男女同室を求めるなど、笑い話で済むような状況だった。ところが、だんだん患者の年齢層が40~60代に上がっている。若者から高齢者にシフトしている。

 典型的なのが介護や医療現場。介護者には若者も多い。彼らは介護だけをやっているのではない。買い物に行き、電車にも乗る。すると高齢者の感染が増えてくる。これが8月から9月にかけての状況だ。

 感染者の増加と死亡者の増加には1カ月以上のタイムラグがある。最初は死者が少ないから油断するが、徐々に増える。これは世界中で見られている。

 

■地道な感染防止策

 ワクチンや決定的な治療薬がない中では、感染防止が重要だ。地道に取り組めば流行は抑えられる。

 コロナの場合、経路のほとんどは飛沫(ひまつ)という鼻や口から飛び出す水しぶき。これは2メートルの距離があれば全て落ちる。この距離さえ維持できれば、感染リスクはほぼない。周辺に落ちたウイルス対策として、手指消毒を徹底すればよい。

 この距離を維持できない時、次善の策としてマスクを使う。マスクを着けてるから満員電車に乗っても大丈夫なのではなく、満員電車が回避できないので仕方なくマスクをするという考え方が重要だ。

 現在の県内の感染状況を維持できれば、どんどん日常を取り戻せる。感染者が増えると日常生活を制限する。このメリハリをつけることが今後は大事になる。