MotoGP第11戦:最終ラップまで展開された優勝争いを制したリンス、2020年シーズン初優勝。中上貴晶は5位入賞

 MotoGP第11戦アラゴンGPの決勝レースがスペインのモーターランド・アラゴンで行われ、MotoGPクラスはアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)が2020年シーズン初優勝を飾った。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は5位でフィニッシュを果たしている。

 アラゴンGPの決勝レースは午前中の路面温度の低さが考慮され、MotoGPクラスでは当初の予定から1時間後ろ倒しの現地時間15時(日本時間22時)にスタートとなった。この時刻には気温は21度、路面温度は31度にまで上昇した。

 1コーナーにトップで飛び込んだのは4番手スタートのフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)だったが、ブレーキングでワイドになり、そのすきにマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)とファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)がモルビデリを交わす。モルビデリは3番手でレースに復帰し、オープニングラップはヤマハがワン・ツー・スリー態勢を築いた。

 一方、3番手フロントロウスタートだったカル・クラッチロー(LCRホンダ・カストロール)は大きく後退。12番手にまでポジションを落とす。オープニングラップでポジションを上げたのは13番グリッドのアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)で、2周目を終えるころには9番手に浮上。アレックス・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)と8番手争いを展開する。

 トップを走るビニャーレスは少しずつ2番手のクアルタラロに対し差を広げていった。3番手にはモルビデリがつけていたが、5周目にアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)がモルビデリをオーバーテイク。リンスは2番手のクアルタラロの背に接近すると、6周目の16コーナーでクアルタラロを交わした。

 2番手に浮上したリンスは、トップを走るビニャーレスにも接近。ビニャーレスとリンスの差は見る間に詰まっていった。

 3番手、4番手に後退したクアルタラロとモルビデリには、ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)が迫る。ミルは8周目にふたりを交わして3番手に浮上。スズキのふたりがヤマハ勢を追い詰めていく。

 そして、9周目にはリンスがついにビニャーレスをとらえた。バックストレートから16コーナー、さらに17コーナーにつながる複合コーナーの立ち上がりでリンスがビニャーレスをオーバーテイク。トップに立ったリンスは見る間にビニャーレスに対し、アドバンテージを築いていく。

 さらにレース中盤、前戦フランスGPのウエットコンディションのレースで2位表彰台に上がったマルケス弟が上位陣に迫る勢いを見せていた。10周目にモルビデリとクアルタラロを交わすと、マルケス弟は4番手に浮上する。3番手のミルとの差は1秒ほどあったが、次第にその差は詰まっていく。

 同じくホンダ勢の中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は11周目のバックストレートで6番手だったクアルタラロに接近。17コーナー立ち上がりでクアルタラロを交わし、6番手に浮上した。前を走るのは5番手モルビデリ。残り11周で約2秒ほどの差がある。中上に交わされたクアルタラロはジャック・ミラー(プラマック・レーシング)、さらにドヴィツィオーゾにも交わされ、9番手にポジションダウンすることになった。クアルタラロはこのあとも、さらに後退していく。

 13周目、上位陣はリンスが依然としてトップをキープ。2番手にはビニャーレスがつけていたが、そのビニャーレスにミルが迫る。さらにその後方にはマルケス弟。三つどもえの2番手争いは、ミルが制して14周目を迎えた。ミルが17コーナーをビニャーレスに先行する形で立ち上がり、そのすきをついてマルケス弟も3番手に浮上。スズキがワン・ツー、マルケス弟が3番手につける展開となった。ビニャーレスはトップ3に比べペースが苦しく、ミルとマルケス弟に交わされてからはその差を広げられていく。

■アレックス・リンスとアレックス・マルケスの激しい優勝争い](https://www.as-web.jp/bike/636194/2)

 2番手に浮上したミルだったが、その背にマルケス弟が迫る。ラップタイムはほぼ変わらないか、マルケス弟の方がやや速い。トップはリンスだが、ミルとの差は0.5秒を切っている。レース終盤に差し掛かる16周目にもかかわらず、次第にトップ3は集団を築き始める。

 トップ3はほぼワンパックとなった。リンスがわずかに先行し、ミルとマルケス弟は接戦の2番手争いを展開。しかし、ついに17コーナーでマルケス弟がミルのインに入り、オーバーテイク。マルケス弟が2番手に浮上した。さらにマルケス弟の勢いは止まらない。トップのリンスにも接近し、残り4周で約0.2秒差となる。

 すでにその差はほぼないに等しい。しかしリンスはマルケス弟を抑える。マルケス弟は残り3周の16コーナーから17コーナーでリヤを滑らせマシンの挙動を乱し、わずかに差が開いてしまう。その差は0.1秒ほど開いただけだった。しかしレース終盤、開いたその差はあまりにも大きかった。

 最終ラップはリンスがトップ、マルケス弟が2番手で迎えた。ふたりの差は変わらず約0.3秒。しかし、マルケス弟は最終セクターで0.2秒にまで差を縮める。最後の勝負のポイントはバックストレートからの16コーナー、そして17コーナーである。

 しかし、リンスは最後までトップを守った。ついにマルケス弟の猛追を振り切り、トップでフィニッシュラインを駆け抜けた。リンスにとって2020年シーズン初優勝。スズキにとっても、今季初の優勝だった。

 マルケス弟は惜しくも2位フィニッシュとなったが、2戦連続での表彰台獲得。ウエットコンディションだけではなく、ドライコンディションでも表彰台を獲得しただけではなく、優勝争いを展開するポテンシャルを見せた。

 3位はミルで、スズキのふたりが表彰台に登壇。クアルタラロがまさかの18位に沈んだことで、ミルがチャンピオンシップのランキングトップに躍り出た。

 一方、中盤から6番手を走行していた中上は、5番手のモルビデリとの差を少しずつ詰めた。2秒あった差は残り3周で約0.3秒になり、最終的にはモルビデリをとらえ、5位でフィニッシュ。インディペンデントチームのライダートップとして、パルクフェルメにマシンを収めた。

 週末を通じて上位を席巻していたヤマハ勢は、ビニャーレスの4位が最上位。モルビデリが5位だった。ドヴィツィオーゾは7位となり、チャンピオンシップはランキングトップがミル、2番手がクアルタラロ、3番手がビニャーレス、4番手がドヴィツィオーゾとなり、4番手までのポイント差は15という未だ接戦の様相を呈している。

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