【津久井やまゆり園事件考】雨宮処凛さん「人の命を値踏みする風潮が」 講演で事件分析

やまゆり園事件の裁判を傍聴した経験などを話す作家の雨宮処凛さん(中央)=横浜市中区

 相模原市緑区の県立知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件について考えようと、作家の雨宮処凛さんを招いた講演会が18日、横浜市中区の市健康福祉総合センターであった。雨宮さんは「生産性で人の価値が測られる社会の空気にあらがい、無条件に生命が肯定されないといけない」と訴えた。

 障害者支援団体や個人などでつくる実行委員会の主催。「やまゆり園事件から4年~裁判は何を明らかにしたのか」をテーマに、障害当事者や支援者ら約150人が耳を傾けた。

 雨宮さんは、ホームレス支援など貧困問題に取り組んできた経験を踏まえ、「日本の財政難を背景に人の命を値踏みする風潮がある。そんな空気が社会にまん延する中、最悪の形で事件が起きた」と指摘した。

 また、自身も傍聴に訪れた横浜地裁での植松聖死刑囚の裁判員裁判を振り返り、「彼の障害者を差別する価値観がどう培われたのか全く見えなかった。(裁判が)事件の再発防止につながるのか」と強調。新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけとした「命の選別」への懸念を示し、「生命は無条件に肯定されなければいけない」と呼び掛けた。

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