宇宙と軍事と秋の空

 高く、澄んだ秋の空の色が昔から気に入っている。夜は月がひときわ美しい時季でもある。普段パソコン画面と地面ばかり見ている日常だが、ついつい空を見上げてしまう▲地上からは見とれるばかりの宇宙では、いま、国家間の縄張り争いが繰り広げられている。昨年、トランプ米大統領は宇宙軍を発足。中国、ロシアとの軍拡競争の激化が懸念されている▲日本も今年、航空自衛隊に宇宙作戦隊を新設。来年度予算の概算要求では、同隊を指揮する組織をつくり全体で70人規模の宇宙作戦群にするという。市民生活とあまりにも懸け離れていて、どうも実感が湧かない話だ▲しかしNPO法人ピースデポ(横浜市)が今月発行した「脱軍備・平和レポート」では、宇宙における日米協力は、より軍事的側面を強めると指摘している▲先月、ロシアのプーチン大統領は「宇宙への兵器配備を禁止する法的拘束力のある条約」の締結を各国に提案した。簡単ではないだろうしロシアの思惑もよく分からない▲ただ、大国が互いをけん制しようと宇宙の軍事利用に躍起になっているのを見ると、せめて兵器配備を禁ずる国際的な条約でもなければ核兵器同様、競争は拡大し続けるのではないかと心配になる。秋の空がなんだか物憂げに私たちを見下ろしているように思えてきた。(貴)

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