マンション経営で節税できる仕組みを解説。節税効果を最大化するポイントとは

マンション経営は節税効果が見込めると聞いたことのある人も多いでしょう。経費の計上や損益通算によって、所得税や住民税などを節約することが可能です。今回はマンション経営が節税につながる理由、経費計上できる費用、節税での注意点などについて解説します。

マンション経営が節税効果を生む仕組み

まず、マンション経営がなぜ税金の節約につながるのか、その仕組みについて見ていきましょう。

サラリーマンで定期収入があり、収支がマイナスの場合

マンション経営は会社員も実践できる投資です。本業で給与収入を得ながら、副業としてマンション経営による収入も得るスタイルです。マンション経営における収入で、「不動産所得」は所得税の課税対象になりますが、課税対象となる所得は給与所得などと合算した金額です。

たとえば給与所得が700万円、不動産所得が200万円なら、課税所得は900万円となります。ここで、不動産所得が200万円の赤字の場合、課税対象の所得は500万円となるのです。こういった複数の所得を合算して損益を相殺することを、「損益通算」と呼びます。不動産所得が赤字であれば、給与所得と損益通算をすることで、所得税や住民税を少なくすることが可能です。

相続が目的で収支がプラスの場合

資産を相続する際に発生するのが相続税で、資産額が多いほど相続税も高くなります。不動産の相続税は、不動産評価額をベースに算出され、目安はおよそ時価の70%程度とされています。現金を相続するよりも不動産で相続するほうが、節税効果が期待できることになるのです。

例えば5000万円のマンションの場合は、不動産評価額が約3500万円となり、現金で5000万円を相続するより、相続税を安くすることができます。投資用の不動産の相続人は、さまざまな選択肢があるのもメリットです。引き続きマンション経営を続けることも、売却することも、自宅にして居住することも可能です。相続人の事情に応じて、もっともお得な選択ができます。

マンション経営で節税ができる税金の種類

節税が可能となる税金は、具体的に以下の5種類です。

所得税(法人税)

不動産収入はそのまま課税されるわけではなく、経費計上が認められています。収入から必要経費を引いた、不動産所得として申告することになります。よって適切に経費を計上することで、所得税や法人税の節税が可能です。ただし、不動産投資事業と無関係な出費は経費として認められないので、事業用とプライベート用の区切りが重要になります。

さらなる節税要素として、不動産所得はさきほど解説したとおり、給与所得・事業所得などとの損益通算ができます。たとえば給与所得が800万円の場合、所得税額は約71万円です(令和2年所得税の場合)。しかし不動産所得が50万円の赤字だとすると、損益通算によって所得税額は21万円に減少します。たとえ帳簿上で赤字になったとしても、節税につながるというメリットがあります。ただし、損益通算の対象となる所得の種類は制限されています。株式や投資信託、FXなど、不動産以外の投資との損益通算はできません。

住民税

所得税と同様に、住民税も節税ができます。基本的なロジックは所得税の場合と同じで、適切な経費計上や損益通算による赤字分の差し引きにより、住民税も安くなります。適切な節税につなげるには、不動産所得を算出する際の経費の計上がポイントです。不動産投資における必要経費の具体例としては、減価償却費・管理費・修繕費・火災保険料などがあり、詳細はのちほど詳しく説明します。計上した経費を証明するため、領収書やレシートなどの保管が必要となります。

相続税

マンション経営は、相続税の対策としても有効です。現金の場合は、その金額が丸ごと相続税の課税対象金額になります。一方で不動産の場合は評価額が対象となるため、土地・建物ともに価格が下がります。さらに、事業運用資産となるので、通常のマンションの相続よりも税金負担が軽くなります。

贈与税

相続税に加え、贈与税についても不動産投資による節税のメリットがあります。相続税による節税より、贈与税による節税のほうがお得になるため、節税効果をさらに高めたい場合は生前贈与がおすすめです。

固定資産税

すでに土地を所有している方に限られる話ですが、固定資産税や都市計画税も節税ができます。固定資産税は土地や建物を所有している方が支払う地方税で、都市計画税は市街化区域内の土地・家屋に課される税金です。

用途のない空き地などを所有している場合、更地の状態にしておくとこれらの税金が高くなります。そこでアパートやマンションを建設することで固定資産税・都市計画税の節税が可能です。更地や駐車場の場合よりも、固定資産税は6分の1~2分の1、都市計画税は3分の1~3分の2に減額されます。

マンション経営において経費計上が可能な費用

所得税や住民税を節税するには、経費計上をいかに適切に行うかが重要です。マンション経営で経費計上ができる代表的な費用を解説しますので、漏れ・抜けのないように計上しましょう。

減価償却費

マンションの建物・設備の部分にかかる減価償却費は、経費計上することが可能です。マンション経営の費用のなかでもっとも多額な経費となるので重要です。減価償却は、マンションの購入金額を法定の耐用年数で割り、毎年経費として計上することになります。

マンションの法定耐用年数は47年と定められています。4700万円の建物であれば、毎年100万円を減価償却費として経費計上が可能です。電気設備、給排水設備などについては、法定耐用年数は22年となっています。

修繕費

マンションの修繕のために支出した費用は、修繕費として経費計上をしましょう。排水溝などの修理、退去の際のクリーニング代といった費用が修繕費に該当します。修繕費に関する注意点として、「資本的支出」の場合は修繕費では計上できません。

資本的支出とは、建物や設備の使用期間を延長したり、物件の価値を高めたりする場合の支出のことを意味します。防音加工、屋根の張替え、耐震補強などが資本的支出の具体例です。資本的支出の場合は、減価償却費として計上することになります。修繕費と資本的支出の区切りは、税務署によって見解が異なることもあります。おおむね30万円以下の場合、修繕周期が3年以内の場合は、修繕費とするケースが多いです。

管理費

自分でマンションを管理する費用、または管理を委託するためにかかった費用を経費として計上できます。具体例としては、清掃の委託費用、エレベーター・共用部の設備点検の費用、保守管理費用などが挙げられます。管理会社に業務を委託する場合も同様に、費用として計上可能です。

火災保険料・地震保険料

マンション所有で加入する、火災保険や地震保険の保険料についても、経費計上ができます。1年ごとの保険であれば、全額を経費として計上して問題ありません。一方、複数年で契約している場合は注意が必要で、いっぺんに全額を計上することは不可能です。契約年数で割り、1年あたりの費用として計上しましょう。

広告宣伝費

マンションの入居者を募集するのに必要な広告費用や宣伝費用に関しても、経費として計上可能です。パンフレットやチラシを作成するのにかかった印刷費・デザイン料や、ポスティング費用、不動産会社に集客をしてもらう際の費用などが当てはまります。

通信費・ガソリン代

マンション経営で必要なインターネット利用料、携帯電話の通信料、マイカーのガソリン代なども経費として計上可能です。ただし、これらの費用は事業用とプライベート用が混在しやすいことに注意が必要で、計上できるのは事業に関係ある費用のみです。

例えば車を事業・プライベート双方で利用している場合、利用割合に応じて、事業用の費用を算出することが必要です。なお利用割合で計算することを、家事按分といいます。家事按分については、利用時間など客観的に説明できる数字をもとに計算する必要があります。

セミナー参加費用や交通費

マンション経営に関するセミナーや勉強会、講演会に参加した場合、参加費用を研修費として費用計上することが可能です。会場への交通費も経費の対象になります。また自宅から遠い場所にマンションがある場合、マンションの視察や不動産会社への挨拶回りにかかった交通費も経費になります。電車・バス・ガソリンなどの領収書・レシートは残しておきましょう。

仲介手数料

物件を不動産会社に仲介してもらって購入した場合、仲介手数料が発生し、全額経費として申告できます。不動産を売買したときにだけ発生するため、初年度に発生することが多い費用です。忘れないように計上しておきましょう。

租税公課

マンションの所有によって生じた税金のなかには、租税公課として費用計上できるものもあります。具体例としては、不動産取得税、登録免許税、事業税、印紙税、固定資産税、都市計画税などです。所得税、法人税、住民税、相続性は租税公課の対象外のため、経費計上はできません。また不動産取得税、固定資産税については、事業で使用する分のみが対象で、プライベート使用分は対象外である点も注意しておきましょう。

借入金利息

マンション経営で、不動産投資ローンを借りた場合、支払った利息分は経費として計上できます。元本については対象となりません。さらに、建物が建った後の利息のみが対象となる点にも注意が必要です。

マンション経営で節税効果を最大化するためのポイント

節税効果をさらに高めるため、工夫できるポイントについて解説します。

減価償却費は最大限活用する

毎年費用計上ができる減価償却費は大きな金額になるので、忘れずに費用計上をしましょう。建物の減価償却を忘れる人は少ないと思われますが、共用設備に関して漏れ・抜けが出てしまうことがあります。経費計上できる設備が何か、ひととおり確認しておきましょう。

経費化できるものは書類を保管しておく

青色申告をするにせよ、法人として決算をするにせよ、経費を証明するための書類は万全に保管しておく必要があります。たとえ帳簿付けが完璧であっても、領収書やレシートがなければ意味がありません。

税務署による調査対象となった場合、経費を裏付ける領収書やレシートの提出が求められます。提出ができない場合、税務署によって経費は否認されてしまいます。経費関連の書類の保管期間は、最低でも7年間です。経費化できそうな支払いをしたときは、忘れずに領収書・レシートをもらっておき、なくさないように保管しましょう。なお領収書には、日付・金額・宛名・担当者の名前・目的や品名が記載されていることが必要です。

青色申告を活用する

青色申告をすることにより、65万円分の青色申告特別控除が適用されるメリットがあります。青色申告をするには、複式簿記で帳簿付けを行う必要がありますが、65万円の控除は大きいのでおすすめです。複式簿記での帳簿付けができない場合、税理士に一括して依頼することもできます。ただし顧問費用などが発生することになるため、コストとして考慮しておきましょう。青色申告をするには、不動産事業主として、開業届と青色申告承認申請書の提出が必要です。

事業規模を拡大したいなら法人化も検討

マンション経営事業が軌道に乗り、さらに規模の大きい事業に発展させたいなら、法人化を検討するのもおすすめです。所得が一定額を超えると、所得税よりも法人税のほうが低い税率になるからです。青色申告よりさらにルールが厳しくなりますが、経費のバリエーションがさらに広がり、法人の赤字は最大9年間繰り越せるメリットもあります。法人化をするには、会社の定款・登記簿謄本などを用意し、法務局で法人登記の手続きを行う必要があります。青色申告よりも手間や費用がかかるので、税理士に依頼するのもひとつの手です。法人化をしたほうがいいのか、損益分岐点を判断してもらうこともできるので、税理士に相談してみましょう。

利回りのシミュレーションをしておく

マンション経営では、購入を検討している物件について、事前に利回りのシミュレーションをしておくことが重要です。物件価格や想定される家賃収入から表面利回りを計算しても、実態からずれてしまうこともあります。仲介手数料・登録免許税といった諸費用、固定資産税・管理費などの経費を含めた、実質利回りでシミュレーションをしましょう。シミュレーションで必要な情報はさまざまで、複雑なツールでは20以上の項目の入力が求められることも。変動要素が多いので、できるだけ多くの項目を埋めることで精緻なシミュレーションが可能となります。

ただし、不動産投資には不確定要素が多いので十分な知識がない人がシミュレーションをするのは困難な側面もあります。またシミュレーションのとおりになるとは限らないので、結果がずれたときの対処法についてもあらかじめ考えておく必要があります。自分だけではなかなか判断できない場合、不動産会社やプロにアドバイスを求めたり、試算を依頼したりすることが重要です。セミナー参加などによって地道に情報取集を行い、シミュレーションを依頼できる信頼できるプロを見つけましょう。

節税だけを目的としたマンション経営にはリスクも

マンションは長期的な運用を見越して購入しよう

マンション経営にはメリットもありますが、リスクも潜んでいます。節税だけを主な目的とすると、以下のようなリスクがあることをおさえておきましょう。

投資物件が売るに売れないリスク

マンション経営も含め、不動産投資は物件を所有すればそれで終わりというわけではありません。思うように入居者が集まらずに空室が増え、経営状況が一向に改善しないなら、物件を売却したうえでの撤退も検討しなくてはなりません。しかし売却しようと思っても、買い手がつかないので、売るに売れなくなるケースもあるのです。

新たに購入する側は、入居者が増えない物件の価値を低く算定します。売り手の損失が大きい条件での価格となってしまい、なかなか売れない状況に陥るのです。このようなリスクを避けるには、入居者目線で魅力的な物件を選ぶことが大切です。最寄り駅から遠い、商業施設や病院などが近くにない、道路事情がよくないといった不利な条件が重なった不動産はやめておきましょう。

利回りが落ちてしまうリスク

不動産投資の利回りは常に一定なのではなく、下がっていくリスクもあると認識しておきましょう。好立地の物件を購入したとしても、周辺環境は徐々に変化していきます。商業施設・公共施設がなくなることにより、賃貸需要が少なくなるケースもあります。空室が発生するリスク、家賃値下げのリスクにより、マンション経営の利回りが下がる可能性はあると考えておいたほうがよいです。さらに物件は老朽化し、築年数が古くなるほど賃貸需要は下がる傾向があります。退去後の原状回復のためのリフォームなどの経費も必要です。物件の魅力をキープするには、設備投資も欠かせないので、資金にゆとりを持つことも重要となります。

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