<レスリング>【2020年全日本大学グレコローマン選手権・特集】狙いは2024年パリ、まず12月の全日本選手権で優勝を目指す…55kg級・塩谷優(拓大)

(文=布施鋼治)

 「大学1年生で優勝できたことは大きいし、大学の躍進に貢献できたこともうれしい」

 全日本大学グレコローマン選手権の第1日、55㎏級で優勝したのは塩谷優(拓大)だった。大学1年生王者の誕生は大会史上13人目の快挙。準決勝と決勝は俵返しを連発して、いずれも圧巻のテクニカルフォール勝ちだった。

圧勝続きで1年生王者に輝いた55kg級の塩谷優(拓大)=撮影・矢吹建夫

 塩谷は6-1で勝利を収めた準々決勝の岡本景虎(専大)戦が山だったと振り返る。「去年12月の全日本選手権の時も岡本選手と競り合っていたので、不安もあった。練習したことがしっかり出せたので勝てたと思う」

 レスリングとの出合いは古く、幼稚園年長の時だった。「何か習い事をしたいと思い、最初は柔道をやろうと思ったんですよ。でも、入ろうとしたところには年齢制限があり入れなかった。それでレスリングを始め、ずっと続いているという感じです」

 レスラーとしての下地は東京・自由ヶ丘学園高校時代の恩師・田野倉翔太コーチ(2013・15・18年世界選手権代表)の指導によって形作られたといってはばからない。

 「レスリング・スタイルは田野倉先生から教わったようなもの。自分のレスリングは、先生のおかげで作ることができたと思います。ずっとレベルの高い練習をしてきたので、今回(上級生とやっても)引けをとらなかったというか、そういうものは感じなかったですね」

しばらくは55kg級で闘う!

 試合は昨年12月の全日本選手権に出場して以来10ヶ月ぶりだったが、ブランクを感じさせることもなかった。「自分の中での練習はしっかりできていました。案の定、今大会でも試合を重ねていくうちに、自分の中ではどんどん動けていたかなと思います。ただ試合のない期間が長かったので、減量とかそういう面での不安の方が大きかったですね」

次々とさく裂した豪快なリフト技=同

 日本協会の西口茂樹・強化本部長は「塩谷はとにかくバランスがいい」と評価する。「度胸もあるし、力も強い。頭もいい子なので、あとはスピードや切れをいかに足していくか。そうすれば、60㎏級でも十分闘っていけるんじゃないですかね」

 塩谷は2024年のパリ・オリンピックに狙いを定める。「レスリングを続けてきたからこそ、今の自分がいる。60㎏級はレベルが上がっているので、それに合わせて自分も上がっていければ。ただ、東京オリンピックが終われば、また階級区分も変更される可能性もある。とりあえず、今は55㎏級で闘いたいと思います」

 その端正なルックスは会場でも際立っていた。昨年12月の全日本選手権では高校生ながら、のちに拓大の先輩となる片桐大夢と決勝を争い、ポテンシャルの高さを見せつけた。あれからさらに実力をつけた期待のルーキーは、今年も12月開催が予定されている全日本の頂きを狙う。

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