F1技術解説アイフェルGP編(1):挙動改善のレッドブル、リヤサスペンションにメルセデスの初期コンセプトを導入

 来季2021年の車体開発に大きな制限が加えられていることもあって、各チームは今季中の改良を精力的に行っている。前戦アイフェルGPでは、レッドブルがRB16に大幅なアップデートを投入。結果的に今季最もメルセデスに近づけたレースとなったのは、果たしてその効果のおかげだったのだろうか。

 レッドブルがニュルブルクリンクに持ち込んだアップデートは、すぐに効果を発揮したようだった。今季ずっと課題となっていたマシン挙動の不安定さに関して、2位表彰台を獲得したマックス・フェルスタッペンはこう語っていた。

「ニューパーツの導入で、挙動は明らかに改善された。アンダーステア症状が出ているけれど、大した問題じゃない。以前の(リヤがすぐにブレイクする)問題に比べれば、全然大丈夫だよ」

「今回の改良は、マシンバランスの向上に大きな効果があった。マシン前部と後部が、よりスムーズに連携してくれるようになったと感じる。アンダーステア症状は最後まで消えなかったけど、それは初日フリー走行で1周も走れなかったから。オーバーステアをなんとかするより、ずっと簡単なことだ」

 レッドブルが行ったアップデートは、具体的にはリヤサスペンションの見直しだった。アッパーアームのホイール側の取り付け位置と形状を、大幅に変更したのだ。黄色矢印が示すように、接合部分の幅を広げ、中心部分に穴を開けている。いうまでもなく、前方からの気流の整流効果を狙ったものだ。下の写真に見られるアーム下の数枚のウイングレットへ、この穴からより気流が流れやすくなった。

レッドブルがRB16のリヤサスペンションデザインを変更(右がアイフェルGP仕様)

 この改良は明らかに、メルセデスがオーストラリアに投入したものを参考にしたものだ。

メルセデスが2020年オーストラリアGPに持ち込んだサスペンションデザイン(右は修正版)

 しかもレッドブルは当時、この穴が違法ではないかとFIAに訴えていた。開口部の入り口と出口の形状が異なり、結果的に空力効果を生じていると主張したのだ。そのためメルセデスはその後、この部分を塞いだ仕様を投入した。一方で今回のレッドブルの改良は、開口部の前後が同じ径になっており、問題はなさそうだ。

 フェルスタッペン、アレクサンダー・アルボンともに、マシン挙動が改善されたと語っている。

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