『レディ・マクベス』静けさの中に隠された、女性の狂気を描く

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 映画『ミッドサマー』のヒロイン、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のエイミー役で今最もハリウッドで注目されているフローレンス・ピューが二十歳の時に主演した作品がついに公開となりました。

 舞台は19世紀のイギリス。17歳のキャサリンは、神経質な富豪の元へ嫁ぎますが、夫からは愛されず、性の喜びも知らず、独裁的な舅からは束縛され、孤独な日々を送っていましたが、ある日使用人と肉体関係を結んだことをきっかけに不貞行為に溺れる日々。そして彼女は自分の幸せを築きあげるため恐ろしい悪事に手を染めていく。美しく静かな屋敷の中で抑圧された女性が狂気とともに自分自身を解放させていく様子を描いています。

 それにしても、どんなにお金持ちでもこんな家は絶対に嫌!! というくらい最悪すぎる夫と舅にはこちらまで嫌気がさすほど。だからこそキャサリンの行動は恐ろしいこととはいえ、同情するし、共感すらしてしまう。夫のセックスレス問題や、未だ日本に根強く残っている亭主関白な夫に悩まされている世の中の女性たちにぜひ観ていただきたい作品です。もちろん、キャサリンと同じ行動を取ってほしいとは思いませんが! 

 ヒロインを演じたフローレンスの瞳は力強くてまっすぐで、不思議な魅力がありますが、本作でも印象的なのは彼女の瞳です。不貞行為を責め、「長男を生め!」と責める舅に対して、「相手がいなけりゃできない!」と自分の怒りを思い切りぶつけるシーンの感情の高ぶりからは、現在の彼女の活躍ぶりを暗示するような女優としての未来ある素質を感じました。★★★★☆(森田真帆)

監督:ウィリアム・オルドロイド

出演:フローレンス・ピュー、コズモ・ジャーヴィス

10月23日から全国順次公開

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