【コロナで薬局が変わろうとしている理由】薬局団体連絡協議会がシンポジウム

【2020.10.20配信】複数の薬局の団体が連携して提言と行動を目指す薬局団体連絡協議会は10月18日、都内で「第2回 国民のための薬局のあり方シンポジウム」を開催した。新型コロナウイルス感染症の拡大の中で、デジタルへの対応、公衆衛生への役割強化など、急速に変化している薬局の姿が報告された。背景には受診抑制による患者数減少で経営面では厳しい局面に置かれる中、ともすると、ITを活用した新興勢力による市場競合にさらされるとの危機感がある。

ハンドブックで薬局の価値伝える

薬局団体連絡協議会は、次世代薬局研究会2025、日本コミュニティファーマシー協会、保険薬局経営者連合会が参画し昨年、発足した。今年は新規に地域医療薬学研究会が加盟、賛同団体として薬局支援協会が参加した。

また、日本コミュニティファーマシー協会(代表:吉岡ゆうこ氏)の理事である篠原久仁子氏は、「健康サポート薬局」という制度に関して、薬剤師や患者を対象にした意識調査を通して、薬局の機能に対する有用性を明らかにしてきたと説明。さらに健康サポート機能など、薬局での業務が複雑化、広範になる中で、薬局業務の効率化も併せて進めるべきとの考えから、医薬品を箱の状態のまま患者に渡す「箱出し調剤」なども検討すべきと提言した。箱出し調剤に関する薬剤師の意識調査も実施しており、72人を対象にした薬剤師の意識調査では希望意向が7割を超えたという。
薬局ができることを生活者に伝えるため、『薬局活用ハンドブック』の制作にも協力した。

地域医療薬学研究会代表の鈴木順子氏

大会長を務めた日本コミュニティファーマシー協会代表の吉岡ゆうこ氏

日本コミュニティファーマシー協会理事の篠原久仁子氏

オンライン普及は「薬局の思わぬ窮地も」

賛同団体としてシンポジウムに参加した薬局支援協会(代表:竹中孝行氏)は、かかりつけ薬剤師の認知が高まっているとの見方を提示。「テレビドラマの影響もあるようで、かかりつけ薬剤師を持った方が良いらしいね、という声をかけていただくことが増えた」と話した。竹中氏は、同協会が毎年行っている「薬局アワード」というイベントを通して、「薬局は全部同じではない」ことを普及していきたいと話した。

次世代薬局研究会2025(代表:藤田道男氏)は、「今後、薬局においてブランディングやマーケティングが必要になる」と話した。コロナによる受診抑制、患者数減少は、かねてから指摘されてきた薬局の保険調剤依存型の限界を如実に示したものとの見解を示した。

保険薬局経営者連合会(代表:山村真一氏)は、コロナ下のオンライン診療・服薬指導の特例によって、オンラインで診察・服薬指導を完結させ、医薬品を配送する新興勢力の登場を挙げ、「薬局が思いもかけない方向から窮地に追い込まれる可能性があるのではないか」と危機感を吐露。住宅産業がヘルスケア領域でサービスを拡大するなどの動向にも触れた。

薬局支援協会代表の竹中孝行氏

次世代薬局研究会2025代表の藤田道男氏

保険薬局経営者連合会代表の山村真一氏

デジタル化と患者に個別化したフォローの両立

このように、コロナは薬局の課題を浮き彫りにし、危機感から薬局に行動変容をもたらしたことは間違いないようだ。

篠原久仁子氏が経営する薬局恵比寿ファーマシー(東京都渋谷区)では、コロナ対策の一環としての間仕切りのある服薬指導スペースによって、ナーバスな話題にも触れる女性の漢方相談などが増加した好影響があったという。手指の消毒によって手荒れに悩む女性が増え、薬局の相談機能を発揮する場面も増えたという。

さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進。画像で得られる情報が増えるオンラインでは、残薬確認や患者の生活環境に関する客観的な情報を得られるメリットもあるとした。栄養指導をオンラインで行う取り組みも有効と話す。公式LINEなどを取り入れるなど、薬局と顧客を結びつけるためのデジタル化が進む。

中小規模で地域に密着した薬局では、デジタルを取り込みつつも、患者ごとに個別化したフォロー体制が取りやすいメリットがあるといえる。

オンライン配信で実施されたシンポジウム

なお、各団体のHPは以下の通り。

次世代薬局研究会2025

日本コミュニティファーマシー協会

保険薬局経営者連合会
http://yakukeiren.com/

地域医療薬学研究会
https://www.sscp.or.jp/

薬局支援協会
http://ph-support.jp/

「薬局活用ハンドブック」(エニイクリエイティブ社刊)の情報は以下の通り。
http://emil-jp.com/news_detail65.html

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