【話題のTikTokクリエイター】“天使の歌声”と“リアルな歌詞”で注目のシンガーソングライター・りりあ。

TikTokを主戦場として活動する10代のシンガーソングライター・りりあ。が大注目されている。りりあ。は好きな曲の弾き語り動画をTikTokに次々にアップしてフォロワー数を増やし、自身のオリジナルである「浮気されたけどまだ好きって曲。」をYouTubeにアップすると「配信してほしい」というコメントが多数付くことに。そして今年5月に配信リリースとなった同曲はLINE MUSIC TOP100ウィークリーでいきなり1位を獲得。同曲は9月中旬現在YouTubeで既に740万回以上の再生回数となり、TikTokにおける彼女のフォロワー数は100万人に達した。なぜそれほど人気なのか。ひとつは、“天使の歌声”とも言われる透明感のあるヴォーカルの魅力だろう。それともうひとつ大きいのは、10代の繊細な本心を綴った歌詞のリアルさ。「浮気されたけどまだ好きって曲。」は浮気した彼とその相手に対するアンビバレントな感情を綴っており、10代の女の子たちから圧倒的な共感を得たのだ。

インタビュー・テキスト:内本順一

―お顔を出さずに活動しているりりあ。さんですが、それは自分を見てほしい、知ってほしいという気持ちよりも、純粋に歌を聴いてほしいという思いの強さからそうされているんですか?

りりあ。:そうですね。歌詞に注目してほしいという気持ちが一番大きいんです。あと、私の好きなアーティストさんが顔出ししていないというのもあって。

―例えば?

りりあ。:コレサワさんとか、ヨルシカさんとか。特にコレサワさんからの影響は大きいですね。ギターを弾くようになったのも、コレサワさんのことを知って惹かれたからなんですよ。声が好きだし、何より歌詞の世界観が本当に大好きで。どの曲もすごく心を掴まれる歌詞で、よくこんなふうに書けるなぁ、すごいなぁって。尊敬してます。

―コレサワさんは、女の子が普段ひとには言わないような本心を包み隠さず歌にするシンガーソングライターですよね。りりあ。さんも、普段ひとには言わない心のなかの思いとか本音のようなものを歌いたいという気持ちから歌を始めたんですか?

りりあ。:そういうふうにできたらいいなとは思うんですけど、まだ私は自分のことを歌にしていないんですよ。今は友達の実体験を聞いて書いたり、あとはファンの方からSNSで恋愛相談を受けて、そのことを書いたりしていて。もともと私は不登校で、引きこもりだったんです。だから歌になるような経験を何もしてなくて。今ある曲はぜんぶ自分の実体験ではなくて、ひとの話を聞いて作ったものなんです。

―じゃあ、りりあ。さんにそういう話をした友達やSNSで相談したファンの人が曲を聴いたら、「これ、私の経験がもとになっている!」ってすぐわかるでしょうね。

りりあ。:そうですね。最近はもう、ファンの方から“こういう話で曲を書いてください”ってお願いされることも多くなってきて(笑)。

―それって逆に難しくないですか?

りりあ。:いえ、そのほうが助かります。お題があったほうが作りやすい。

―自分の内面を赤裸々に書くよりも、そうやってファンのひとや友達の経験談を自分なり咀嚼し、膨らませながら書くのがりりあ。さんの作詞のスタイルなんですね。

りりあ。:そうですね。今のところはそれでやっていきたいなぁと。だからみなさん、いろんな恋愛の体験談を私にください(笑)。

―りりあ。さんの曲は、同世代の女の子にとって非常に共感性の高いものですよね。しかも平易で、かつ日常的な会話に出てくるワードを多く用いている。意識的にそうしているんですか?

りりあ。:ストレートな言葉で伝わりやすい歌詞にすることは心掛けています。抽象的な言葉はあまり使わないですね。私自身、そんなに語彙力がないので、簡単な言葉でしか書けないんですよ。なので、必然的にそういう歌詞になっちゃうんです。よく会話に出てくるような言葉はなるべく使おうと思っています。例えば《既読のつかないままのLINE》とか、《匂わせのストーリーが更新》とか(*どちらも「浮気されたけどまだ好きって曲。」の一節)。普段話していて、LINEとかストーリーってやっぱりよく出てくるワードなので、きっとそういうところで共感を得るのかなって。

―なるほど。そういったところから「浮気されたけどまだ好きって曲。」は、ご自身の実体験から作ったわけではないにも拘わらず、すごくリアルな歌になったんでしょうね。とりわけ歌い始めの《汚れた君は嫌いだ》というフレーズのインパクトがすごい。「嘘つきの君」とか「ずるい君」というのではなく、「汚れた君」という言い方をするあたりに、りりあ。さんの個性を感じました。

りりあ。:それもLINE上の会話から出てきた言葉だったんですよ。最初は“けがれた”にしていたんですけど、“よごれた”のほうが刺さるかなと思って。

―「君にあげた好きを返してよ」というフレーズも、同世代の女の子からすると「わかる!」って感じでしょうね。

りりあ。:そこは自分のなかから急に出てきたんですよ。もともと歌詞を書くのは苦手なほうなので、言葉やフレーズを思いついたときにメモしておくんですけど、その言葉は確か出てきてそのまま書いたんです。

―それから《既読のつかないままのLINE 今頃あいつとベットイン」ってフレーズにもドキっとさせられます。「今頃あいつと会ってるの?」とかではなく、「今頃あいつとベットイン」とハッキリ歌うという。

りりあ。:あはは。確かにけっこう踏み切った歌詞ですよね。でもファンの方からは、“わかります”ってコメントが多くつきました。そこに共感したひとも多かったみたいですね。

―ところで、りりあ。さんはTikTokで弾き語り動画を頻繁にアップし、それによって活動の場が広がっていったんですよね。もともとTikTokというプラットフォームは、りりあ。さんにとって身近なものだったんですか?

りりあ。:身近だったし、私自身、ずっと前からTikTokを見ていたから。TikTokという名前になる前にmusical.lyというマークの違うアプリがあって、その頃から見てましたね(*musical.lyは所謂リップシンクアプリの先駆的サービス。2018年に「Tik Tok」と「musical.ly」が統合され、Tik Tokは新アプリになった)。一時期は丸1日ずっと見てたくらい。

―そんなに?!

りりあ。:はい(笑)。友達もTikTokやったりしてたので、私も“ちょっと弾き語りして、のっけてみよう”って感じで始めて。だから、“TikTokを選んだ”というよりは、本当に自分の年代にとって身近だったってことで始めただけで、そんなに特別な理由はないんです。最初の投稿は去年の3月に投稿した弾き語りではなくディズニーの動画で、弾き語り自体は10月から投稿し始めました。

―でも、そこで弾き語りの動画をあげて、「キレイな歌声」「天使のような歌声」といったコメントがたくさん付いた。それについてはどんなふうに思いました?

りりあ。:ディズニーの動画でバズった流れで軽い気持ちで弾き語り動画をあげてから、多くの人が聴いてくれるようになって嬉しかったです。自分の声ってありがちだなって思うんですけど、それを“いい”と思ってくださる方がいらっしゃるのは本当にありがたいし、それによってメンタルが保てているって感じですね。そういうコメントがあるから、私はなんとかやっていける。Tani Yuuki さんの「Myra」という曲もTikTokで知って、“いい曲だなぁ”と思って即弾き語りして投稿したら、バズったりして。

―りりあ。さんにとってTikTokとは?

りりあ。:命です。

―おおっ!

りりあ。:本当に、それでしかないです。TikTokは私にとって家みたいなものなので、それがなくなったらなんにもできない。TikTokがなくなったら音楽もやめちゃうかもしれないって思ってます。

―それくらいTikTokがりりあ。さんの表現の仕方に合っていたとも言えるわけですね。

りりあ。:そうなんでしょうね。YouTubeと違って、TikTokの動画は短い時間で終わって、“また次!”って感じじゃないですか。だから見てもらえるっていうのもあると思うし。でも弾き語りで誰かの曲を歌うのはいいけど、オリジナルの短い曲を作ってアップするのは、それはそれで難しいってところもあります。更新頻度はバラバラですが、日があかないように心がけています。

―短い時間で聴いたひとをハッとさせるメロディだったり言葉だったりが必要になるわけですからね。そういう意味で、つかみが何より大事っていう。それで「浮気されたけどまだ好きって曲。」もインパクトのあるサビから始まるわけですね。

りりあ。:あの曲はサビを頭にもってこようって初めから思ってました。でも、すごく考えて、計算してそうしたわけではないんですけどね。単純に、サビメロから出きてくる曲が多いっていうところもあって。

―なるほど。ところで現在はSNSと配信で歌を届けているりりあ。さんですが、CDを出したいという気持ちはあったりしますか?

りりあ。:今はないですね。サブスクで聴けるのに、CDって聴くのかな……。ほしいって言ってくださる方もいて、それはありがたいんですけど、今は考えてないです。

―りりあ。さんの世代でCDを買うひとはあんまりいないですよね。

りりあ。:あ、でも、私は大好きなアーティストさんだったら、保管しておきたいので買うんですよ。やっぱり、持っていたいから。でも、買ってそのCDを聴くかって言われたら聴かないですね。あくまでもCDは保管用。聴くときはサブスクです。

―アルバムの制作とかはもう考えてますか?

りりあ。:そうですね。ちょっとずつ曲を作ってます。

―やっぱり弾き語りが中心になりそうですか?

りりあ。:はい。今発表している曲からそこまで大きく変わるようなのは作らないと思う。でも、今は恋愛ソングしかないので、恋愛以外についての曲も作ってみたいとは思ってます。なかなか難しいけど、これからそういうものも自分のなかから出てくるようになるといいです。

撮影:石丸敦章

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