人生を変える住宅ローン、変動か固定か?新規で借りるときにやってはいけないこと

住宅費、教育費、老後の費用。人生の3大支出と言われています。一生の内で最もお金がかかるのが、住宅費ということになります。私もファイナンシャルプランナーとして多くの方の住宅費用の相談にのってきました。

人生の中で住宅ローンを組むことは数少ないことだと思いますが、一方で数千万円から場合によっては億という大きな金額を、長い期間で返していく人生の一大事でもあります。今回は住宅ローンを借りる際、とくに多くの方が悩む「変動金利」と「固定金利」どっちが良いかという疑問をほりさげていきたいと思います。


変動か固定かの筆者の答え

単純計算ですが、仮に、10万円の家賃を30歳から100歳まで払うとすると、8400万円を払うことになります。住む家が無いというのは、生活の基盤が奪われることになるので、何はなくとも住むところは大事ですよね。

住宅を買うべきか、賃貸で過ごすべきかについては、家族構成やライフスタイル、価値観によっても大きく変わるので、どちらが有利とも言えません。

ですが、家を買って住宅ローンを組むとなった場合、私は変動金利をオススメしています。

■固定金利 :固定金利は、住宅ローンを借りている間、金利が変動しないので返済額がずっと変わりません。一方、変動金利に対して金利が高く割高になります。固定金利の代表格は住宅金融支援機構が提供するフラット35です。最大35年間は返済額を一定にすることができます。

■変動金利 :変動金利は、その名の通り金利が変動します。半年ごとに金融機関が金利を見直しますので、返済金額が都度変動する可能性があります。固定金利に比べて金利が安く、2020年10月現在では0.4%前後と非常に低い金利になっています。

でも「もし、変動金利が上昇して住宅ローンの支払い額があがってしまったら?」とか、「固定金利も非常にやすくなっている中で、20年後、30年後がどうなっているかわからないのにリスクが高い」という声も聞こえてきます。

もちろん、最終的な仕上がりの金額が、変動と固定でどちらが有利かを保障することはできませんが、考え方を整理しきれていると、変動金利を選ぶことになるのではないかと思います。

驚愕の金利はホント?

2020年10月現在、住宅ローンの金利が安いことで有名な銀行の新規借り入れの変動金利は以下の通りです。

ジャパンネット銀行 0.38%
住信SBIネット銀行 0.41%
auじぶん銀行 0.38%

auじぶん銀行は、au電気に契約することが最低金利を受けられる条件になっています。
住信SBIネット銀行は、他の二行と比べると若干金利が高いですが、全疾病保障が充実しているので人気があります。ただし最低金利を受けるには、三井住友信託銀行でいろいろと契約することが条件になります。

ジャパンネット銀行は、2020年10月現在では最安ですが、5年ルールや125%ルールや、短期プライムレートに連動しているという記載がないので変動の基準が何に紐付いているか分かりづらいというデメリットがあります。

短期プライムレートとは、銀行がお得意先である最優良企業に貸し出す際の再優遇貸出金利のうち、一年以内の短期貸出の金利のことです。この短期プライムレートは、20年以上低水準のままで、ほとんど変わっていない状況です。また短期国債の影響をうけますが、国債を多量に発行している日本は、金利を上げると支払利息も増えてしまう上、経済政策的にもなかなか金利を上げづらい状況にあると言えます。

いきなり、「驚愕の低金利」と、「各社セット販売で面倒臭い」というメリット・デメリットから話しがはじまりましたが、総じて住宅ローンを借りる条件は悪くないと言えます。

0.4%という超低金利は、融資条件も厳しかったり、さまざまな付帯条件がついてくることがありますので、もう少し金利が高くてもよければ借りやすくなるでしょう。

変動金利と固定金利を比べてみる

それでは変動金利と、固定金利で借りた場合の具体的なシミュレーションをしていきたいと思います。

今回は0.55%の変動金利で借りた場合と、フラット35の固定金利1.3%を比べてみたいと思います。

【条件】
・3500万円の物件
・35年ローン
・頭金500万円
・借入金額3000万円
・変動金利:0.55%
・固定金利:1.3%
・どちらも元利均等返済
・融資事務手数料は、変動は2.2%、フラット35は33万円とする
・その他の事務手数料、登記関連費用、印紙は合計15万円とする

変動金利の場合は、毎月7万8,540円の返済、総返済額は3,299万8924円となり、ここに、事務取扱手数料が66万円と、登記関連費用など15万円が追加されるので、合計3,388万7,464円となります。

固定金利は、毎月8万8,944円の返済、総返済額は3,735万6,564円となり、事務取扱手数料33万円と、登録関連費用が15万円を追加すると、合計3,783万6564円となります。

合計金額を比べると、その差は394万9,100円。この394万円の損を先に確定させるのが固定金利を選択するということになるのです。

それでも固定金利を選ぶ心境は、「変動金利で金利が上がっていってしまった場合、固定金利より損をするのが怖いから」だと思います。

では、変動金利が仮に5年ごとに0.3%上昇し25年後に2.05%まで金利が上昇した場合
のシミュレーションを見てみます。

この場合の総返済額は、3,654万9,682円となります。最終的には固定金利の1.3%を大幅に超えた2.05%まで金利上昇していますが、それでも総返済額は固定金利より128万6,882円も少ないことになります。

このようなことが起こる理由は、金利が上がっても住宅ローンの返済も進んでいるので借入金額が小さくなっているからです。小さな借入金額に大きくなった金利がのってもそれほど大きな金額にならないということです。

しかし、もっと金利があがることもあるかもしれません。その場合は、できるだけ繰り上げ返済をしていくことが重要です。。

理想的には、固定金利で借りたと思って、変動金利の返済額との差分を貯蓄しておくことです。金利が変動して返済額が上がってしまったら繰り上げ返済できるよう、貯蓄を作っておけると更に安心感が増します。

また、既に固定金利で借りている場合や、高い金利で変動金利の住宅ローンを借りている場合は、借換が有効です。先程の固定金利と変動金利の返済額の大きな差を、借換によってまきなおすことができます。よく借換の条件として、借換前と借換後で1%の金利差があり、1,000万円以上の残債などが基準といわれます。しかし、実際は0.5%も金利が下がればかなり大きな改善になることがほとんどです。金利が高いなと思われていたら、検討してみると良いでしょう。

住宅ローンの金利についてお話をしてきましたが、最後に、新規で借りる場合はやってはいけないことが3つあります。

やってはいけないこと

(1)ライフプランニングしないで住宅ローン
住宅ローンの返済は長期になることがほとんどです。仮に30歳から住宅ローンを組んでも35年後には65歳になっています。そして、その時点では築35年の家と、今よりは体力が衰えているであろう自分がいます。いつまでに返済するのか?無理のない返済計画はいくらまで借りることなのか?などをしっかりと計算してから購入しないと、最終的な返済が75歳や80歳になっていて返済ができなくなるかもしれません。ぜひライフプランニングをしながら将来の返済の目処をたててから、借入額や毎月の返済額を決定しましょう。

(2)ボーナス払いで住宅ローン
コロナ禍で会社が厳しくなったとき、真っ先に削られているのはボーナスです。住宅ローンにボーナス払いを設定していると、住宅ローン破綻の原因になります。できる限り、毎月の収入の中から無理なく返済できる金額で借りることが重要です。住宅費に当てて良い金額は手取りの20%から最大でも30%でしょう。

(3)無理な繰り上げ返済
ある程度の貯蓄が貯まると、繰り上げ返済をしてしまう人がいます。もちろん繰り上げ返済がいけないわけではないのですが、注意点があります。

1、住宅ローン控除を受け取れる間に返済をすると、控除額がへってしまうことがあるので、住宅ローン控除を念頭に返済すべきかを考える

2、現金を使って低金利の住宅ローンを返済した結果、手元に現金がなくなり、新たな借入を住宅ローンより高い金額で借りざるを得ない状況を回避する

もちろん、金利が上がってしまった場合は繰り上げ返済が有効になりますので、ここは状況をみて適切に判断することが重要です。

住宅費は一生の中で、最も大きな買い物の一つです。住宅を購入する場合はしっかりと知識をつけてから、どれくらいのローンを組めるのかを綿密に計画をたてましょう。

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