<レスリング>【2020年全日本大学グレコローマン選手権・特集】同僚に続いた1年生王者、来年は世界への飛躍を目指す…63kg級・竹下航生(拓大)

チームメートに続いて1年生王者に輝いた竹下航生(拓大)=撮影・矢吹建夫

 今年の全日本大学グレコローマン選手権では、連日、1年生チャンピオンが誕生した。最終日に成し遂げたのは63kg級の竹下航生(拓大=香川・高松北高卒)で、初日に快挙を達成した55kg級の塩谷優のチームメートであり、ほぼ同じ階級の練習相手。チーム内での切磋琢磨が、そろっての快挙達成につながった。

 吉田大夢(中京学院大)との決勝は、塩谷と同じく終始攻めた圧勝劇だった。テークダウン~ローリングが繰り返されて9-0。昨年、全国高校グレコローマン選手権と国体を制し、全日本選手権でも2位(いずれも60kg級)になった実力を存分に発揮した。

 「楽勝でしたね」との問いに、「そうでもないですけど…」と謙遜した竹下は、「やっぱり準決勝でしたね」と、昨年60kg級優勝の矢部和希(日体大)との試合を話し始めた。

昨年60kg級王者相手に常に攻勢を取る  

 2018年に世界ジュニア選手権3位になっている強豪を相手に、いい姿勢に持っていかれないことを注意し、「自分のしっかりした構えでプレッシャーをかけること」を目指した。けんか四つの闘いは、竹下が前に出る圧力でまさり、コーションで1点を先制。グラウンドは決まらなかったが、その後の矢部の苦し紛れの投げ技を押し倒して3-0。さらに場外と胴タックルで第1ピリオドは6-0。

グラウンドでもローリングが冴えた=同

 第2ピリオドも前に出る圧力で負けず、自滅気味にゴービハインドを許したが、リフトはしっかり守り(相手のチャレンジ失敗で1点獲得)、最後は7-2で勝利。優勝に大きく近づく白星を挙げた。「自分の持ち味は差しと押しだと思っています」と言うように、前に出る圧力では一瞬たりとも負けておらず、パッシブやコーションを科せられるムードは全くない4試合だった。

 それでも、昨年12月以来の試合だからか、1、2試合目は体が動けず、自分のやりたいことができなかったと言う。「結果はテクニカルフォールでしたが…。これからの課題となってくるのが、1試合目からしっかり動けるようになることでしょう」と、初戦から100パーセントを出せる力を求めた。

 どの選手も同じだが、コロナ禍によって試合出場という目標のない状況が続き、気持ちを盛り上げることが大変だった。頑張れる力となったのは、日本協会の西口茂樹・強化本部長からかけられた「コロナ禍が明けたら、楽しいことがいっぱいあるぞ」という言葉。心を奮い立たせてくれたと言う。

塩谷優と切磋琢磨して世界へ飛躍する!

 大会が始まってみると、初日に塩谷が1年生王者に輝き、60kg級では先輩の清水賢亮が優勝。「団体戦(大学対抗得点)で優勝」という気持ちにもなり、その流れに続きたいと気持ちが盛り上がった。やはり塩谷の1年生王者には刺激を受け、負けられない気持ちが強まったと言う。

2017年世界カデット選手権では銅メダルを獲得=チーム提供

 2017年には世界カデット選手権(ギリシャ)で銅メダルを獲得し、すでに国際舞台で実績を残している選手。本来なら、今年は世界ジュニア選手権などで活躍していただろう。「来年は国際大会にどんどん出て、結果を出したい」と目標を話した。

 オリンピック階級が今のままなら、同期の塩谷とはいずれ壮絶な闘いを覚悟しなければならないが、現段階で塩谷は階級を上げる予定はなく、2024年に向けて階級区分がどうなるかも分からない。来年は、“最強タッグ”で世界を目指せそうだ。

 次の出場は「12月の全日本選手権でしょうか」と、11月に予定されている新人戦は眼中になし。昨年の全日本選手権は、決勝で鈴木絢大(日体大)にテクニカルフォールで完敗したものの、高校生での銀メダル獲得は立派な成績。大学でもまれた今年は、当然、優勝が目標だ。まず日本一を念頭におき、飛躍を目指す。

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