柳ジョージさん、よみがえる幻の歌声 横浜の同級生との音源、アルバムで発売

関口さん(左)が手作りしたギターを手に笑顔を見せる柳さん=1965年ごろ、横浜市内(関口利朗さん提供)

 「雨に泣いてる」などのヒット曲で知られるロック歌手で、ギタリストの故柳ジョージ(本名・譲治)さんが、50年近く前に収録した音源をCD化したアルバムが21日、発売される。グループサウンズ「ゴールデン・カップス」に参加後、地元の横浜市南区で青春時代を過ごした同級生や日本ロック創成期のギタリストとの幻のセッションなど21曲を収録。多くのファンを魅了した哀愁ある独特の歌声をよみがえらせた。

 「情景が浮かぶジョージのボーカルは唯一無二のもの。久しぶりに聴いて、またステージに立ちたくなった」

 柳さんと同市立南太田小学校の同級生・関口敏朗さん(73)は、CDの出来栄えに目を細める。ニューアルバム「Black Heart Yokohama」は2人をはじめ、ギタリスト故成毛滋さんを含む3人がカセットテープに残した曲を収めた。

 1972年に成毛さんの自宅スタジオ(東京都)に集った3人のプライベートセッションで、「ザ・ローリング・ストーンズ」や「ザ・ビートルズ」などをカバー。成毛さんがギターやドラムなどを多重録音したメロディーに、リラックスした柳さんや関口さんの歌声を重ねている。

 2曲のボーナストラックには、関口さんの自宅で柳さんが歌う未公表のオリジナル曲も収めている。

 南太田小の5学年で同じクラスになった2人は、「としろうちゃん」「ジョージちゃん」と呼び合った仲。ガキ大将的存在で山を駆け回っていたころ、米兵向けのAMラジオ局「FEN(現AFN)」を知り、「演歌と違うな」と音楽に夢中になった。

 同市立蒔田中学校への進学直前は、米国のバンド「ザ・ベンチャーズ」が大流行。世界を魅了した“テケテケ奏法(クロマチックラン)”に心を奪われ、耳だけを頼りにエレキギターで再現を繰り返した。

 関口さんは同市立横浜商業高校、柳さんは日本大学藤沢高校に進学し、17歳の時に初めてバンド「フリーメン」を結成。関口さんは「歌詞はでたらめだけど、自分の世界にしてしまう。リズム感もすごかった」と当時の柳さんが見せた才能を思い起こし、哀愁ある歌声に「惚(ほ)れた」と笑う。

 プロの音楽の道に進んだ柳さんと一般企業に勤めた関口さんだが、親交はずっと絶えなかった。

 アルバムは音楽会社「ディスクユニオン」がCD化した。2640円。

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