「米大統領選後は株高」相場のジンクスは今年もあてはまるのか

11月3日は我が国の景気や株価の行方まで大きく左右する米国の大統領選挙が行われます。

再選を目指す共和党のトランプ大統領ですが、事前の世論調査では新型コロナの感染拡大やそれに伴う景気後退、そして黒人男性の死亡事件に起因する混乱から支持率を下げています。

民主党の候補である前副大統領のバイデン氏が優勢と見られていますが、“隠れトランプ支持者”も多いと言われ、世論調査そのままの結果から大統領選の予測は難しいとされています。

既にマスコミ各社は、大統領選の勝利予測や、その後の政策や景気への影響はどうなるか様々な予想をとりあげています。増税を計画するバイデン氏が勝利すると株式市場にマイナスと見られており、現状では“トランプ株高・バイデン株安”が多くの投資家の見方になっています。

そこで今回は、視点を変えて“株のジンクス”から大統領選と株価との関係を紹介します。ちなみに株のジンクスのことを業界では“アノマリー“と呼んでいます。


大統領選の年は株高?

米大統領選のアノマリーには様々なものがあります。最も代表的なのが「大統領選の年に向けて株価が高くなる」というものです。

大統領選は4年に1回行われるため、それぞれの年の株価の騰落率を平均してみましょう。

確かに、選挙前年となる“3年後”は日米ともに、他の3年に比べて最も騰落率が高くなっています(米国株は16.0%、日本株は11.9%)。反対に、2年後は最も騰落率が低くなります。

これには次のような理由があります。気が早く感じるかもしれませんが任期開始後は、大統領は次の選挙でも再選を勝ち取るため、国民の痛みを伴うが国を良くするためにやらなければならない政策を任期の前半で行います。

そして任期の後半は、多くの国民が喜ぶ景気刺激策を打ち出して、大統領選の辺りで景気が好調になるようにもっていこうとします。このため、任期の中間にあたる2年目に株価は厳しくなり、大統領選に向けて株高の傾向になりやすいのです。

それでは大統領選の翌年はどうでしょうか。2021年の株価を予想する上で参考になるものですが、騰落率は米国株7.0%、日本株10.4%と日米ともに堅調です。大統領選を終えて、政治的な不透明材料を超えたことにより相場が落ち着いたことが反映されています。

選挙に勝利した大統領は選挙の翌年1月20日の就任式から就任します。選挙翌年の任期初年は新大統領への期待が高まり株高につながるとも見られます。

勝利政党によって相場の傾向は変わる?変わらない?

さらに、大統領選の翌年をもう少し詳しく見てみましょう。冒頭で述べた “トランプ株高・バイデン株安”のように、勝利した大統領や、その所属する政党で株式相場の傾向も異なる可能性はあるのでしょうか。

歴史的にトランプ氏が所属する共和党は比較的所得が高い層への優遇が強い所得減税により景気拡大を目指す傾向があり、バイデン氏の民主党は公共投資などを行い比較的低い層への優遇する福祉などを重視するポリシーがあります。現在のトランプ氏、バイデン氏が目指す政策も概ねこの流れに乗っています。

そこで米大統領選の翌年(大統領就任1年目)の日米の株価騰落率を政党別に平均してみました。

過去の傾向ではバイデン氏が所属する民主党の方が、とりわけ米国株のパフォーマンスが良好でした。足元の株式市場でも見られますが、バイデン氏は第2次世界大戦以来で最大規模の公共投資を計画していることには期待がかかっています。

民主党の公共投資といえば歴史的に良く知られるものが”ニューディール政策“です。読者の皆さんも社会の教科書で習った記憶があるかもしれません。当時のフランクリン・ルーズベルト大統領が世界恐慌から立ち直るためにテネシー川流域の大規模開発などを行ったものです。

このような民主党が行う公共投資への期待が大統領就任1年目の株式市場に特に評価されるのかもしれません。

米大統領選後の相場はどうなる?

それでは今年これから、年末、年度末までの相場はどのように変動するのでしょうか。

米大統領選挙は、11月第1月曜日の属する週の火曜日に実施されると決められています。そこで、「11月から年末、さらに翌年の3月」までについて、米大統領選挙の年の傾向がどうなるかも見てみましょう。ここでも過去の株価の騰落率を平均しています。

結果は、年末、翌年3月の年度末まで堅調な推移となりました。

やはり大統領選が終わり政治的な不透明材料を超えて相場が落ち着きを見せるからでしょう。また大統領の所属する政党が共和党、民主党いずれのケースの平均騰落率にも大きな違いがありませんでした。

今回は米国大統領選の主なアノマリーを紹介しました。ほかにも例えば、“大統領が再選されたケースとそうでないケース”や“所属政党が変わったケース”などの違いで分類したり、為替相場との関係を捉えて考察するものなどもあります。

ただ、あくまでもジンクス(アノマリー)ですから、ケースの詳細を深堀りするよりも、平均的な傾向としておおまかにとらえておくことをお勧めします。今回はコロナ禍のなかでの大統領選となり、いつもの選挙とは環境が大きく異なる面もあるでしょう。

しかし過去の傾向からは、いずれの政党の大統領が勝っても、日米ともに大統領選というビックイベントを超えたことで、来年に向けて堅調な相場となるアノマリーは頭にいれておく必要があるでしょう。

<写真:ロイター/アフロ>

© 株式会社マネーフォワード