ドローンや教育用ロボットで楽しくプログラミングを学ぶ ‐ DJIの取り組み

©株式会社マイナビ

昨今ますます注目を集めている教育手法 「STEAM教育」。STEAM教育とは「科学:Science」、「技術:Technology」、「工学:Engineering」、「芸術:Art」「数学:Mathematics」の頭文字が合わせた造語だ。

AI技術やIoT技術などさまざまなテクノロジーが進歩する現代において、変化を受け入れ適応するだけでなく、変化を自ら生み出し社会を変えていくような人材が必要だと文部科学省は示している。

また、2017年に文部科学省が発表した学習指導要領改訂により、小学校では2020年からプログラミング教育が必修化され、中学校では2021年よりプログラミング教育の内容が増える。高校においても、2022年より「情報Ⅰ」が必修となり、2025年には大学入学共通テストにおいて「情報Ⅰ」を出題することが、政府の方針として示されている。こうした動向を受け、教育機関だけでなくさまざまな企業がプログラミング教育を推進するための取り組みを行っている。

中国に本社を置く大手ドローンメーカーDJIの日本法人DJI JAPANも、STEAM教育を推進している企業のひとつだ。同社は、2013年よりプログラミングを学びたい人を対象に教育用ロボットの研究開発をスタートさせ、現在ではプログラミングやロボット工学を楽しみながら学べる、教育用ロボット「RoboMaster S1:ロボマスターエスワン」や、教育用ドローン「Tello EDU」などを展開している。

DJI JAPAN コンシューマー マーケティング ディレクター川中良之氏は「これからの未来を築いていく今の子供たちは、プログラミングを使いこなしてテクノロジーと共存し、慣れ親しむことが重要になってくる。当社は小学生のプログラミング教育必修化以前からプログラミング教育に関する事業を展開していたが、必修化に伴い学校や塾などの教育機関に対して当社の製品がプログラミング教育を始めるきっかけになるべく、さらなる教育ハードウェアツールの開発や導入の提案を進めたい」と考えを示した。

教育機関への導入

プログラミング教室での活用

DJI JAPANの教育ツールを活用している機関として、進学塾「栄光ゼミナール」を運営する栄光のロボット&プログラミング教室「栄光ロボットアカデミー」が挙げられる。栄光ロボットアカデミーは、同社のプログラミング教育用ロボット「RoboMaster S1」を活用して小学生向けにイベントを開催している。そこで8月30日に開催された同イベントにお邪魔させていただいた。

ロボマスターS1

RoboMaster S1」は、楽しみながらプログラミングやロボット工学だけでなくAI技術も学べる教育用ロボット。機体にはHD画質のカメラを搭載しており動画撮影が可能で、ゲル弾や赤外線ビームでの射撃を用いて対戦などの遊びをすることができる。

一から組み立てることから始まる

ロボマスターS1は、バラバラに包装されている46個の部品を組み立てるところから始まる。プログラミングを学ぶだけでなく、配線や構造などといったロボット工学も同時に学ぶことができる。

同イベントでは、子供たちが説明書の手順に従い、分からない工程は保護者やほかの子供たちと相談しながら組み立てていた。

言語の切り替えでレベルに適した教育プログラムを実現

ロボマスターS1はプログラミング言語「Scratch」に対応しており、色分けされたブロックを組み合わせ、回数や秒数などの数字を入力すれば自立プログラムが完成する。ドラッグ&ドロップでブロックを入れ替えたり新しい項目を加えたりすることでプログラムを変更することが可能だ。

他のプログラミング言語のような「関数や正しい構文の書き方を覚える→ロジックの構築→コーディング」の行程が不要で、小学生レベルにも適した教材となっている。

また、WebアプリからAI開発まで用途が広いプログラミング言語「Python」にも対応しており、切り替えボタンをクリックすると同じプログラムをScratchとPythonで比較することができる。これにより、Pythonのような本格的なプログラミング言語の構造やパラメータの変更など、より本質に近い内容の理解につながる。

FPV(一人称視点)操作

ロボマスターS1は、プログラミングによる操作だけでなく、FPV(first person View:一人称視点)、つまり、S1に搭載されたカメラからの視点で操作することが可能。

操作端末のスマートフォンやタブレットの画面にカメラの映像がリアルタイムで送信され、指で画面をタッチすることでS1のさまざまな挙動を指示することができる。

子供たちの様子

同イベントでは、親や友達と協力してロボマスターS1を一から組み立てるとことからスタートし、使い方のレクチャーを受けた子供たちは、3人一組のチームとなってチーム対抗戦を行った。

S1をタブレットによる手動操作で指定された場所まで前進させたあと、プログラミングによる制御でUターンさせる。その後、S1視点でなければ見えないところにあるキーワードをリアルタイム映像で確認し、スタート地点まで手動制御で戻ってくる。

この一連の動作を3人のチームがリレー形式で行いそのタイムを競い合い、3つのキーワードから導き出せる答えを最後に発表するものだ。

同イベントの講師は、「子供は大人では考えないような柔軟な発想をするので、こちらが刺激をもらうほどです」と話した。

参加した子供たちに話を聞くと、「組み立てるところが難しかったけど、友達やお父さんと相談しながら組み立てた。操作するのが本当に楽しかった!ドローンでもやってみたい」と、笑顔で答えてくれた。

小学校での活用

東京都港区にある麻布小学校もDJIの教育ツールを試験的に導入した。同小学校が使用したツールは、教育用ドローン「Tello EDU」。ロボマスターと同じくScratchやPythonなどのプログラミング言語に対応しており、タブレットなどの携帯端末によるFPV操作も可能。ドローンならではの上昇や降下、空中回転などの動きを制御できるのが醍醐味だ。

横浜市立川和東小学校のほか、70を超える小中高大や専門学校などの教育機関でDJIの教育製品が活用されているとのことだ。

コロナ禍をどう切り抜くか

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、教育機関において対面による授業は以前から制限されおり、川中氏は、プログラミング教育を始めたばかりの小学生などに対してはオンラインでのレクチャーではとっかかりにくく難易度が高いと、指摘している。

「現状では教育機関などにおいて理想としている形での教育ツールの活用が難しい。当社は大規模なイベントなどが開催できるようになる状況に向け準備することに注力するが、これは業界全体で進めるべき取り組みだ。難しいとは思うけど取り組んでいかないといけない、というふうに認識の転換を行わなければならない」(川中氏)

また、プログラミング教育において、指導する側の教育も重要だという。

DJI JAPAN マーケティング マネージャー 陳明氏は、「国からの要請でプログラミング教育を始めることを決定したが、何から始めていいか困っている先生たちはたくさんいる。学生だけでなく、先生へのプログラミング教育についても取り組んできたい」と語った。

パンデミック状況下に陥ったとしても教育は止まらないし、止めるべきものではない。プログラミング教育が必修化になり、ますますデジタルとの距離が縮まる現代の子供たちが、今後どのような未来を創造していくのか楽しみである。