東京一極集中、けったくそ悪い 都構想インタビュー④漫才師の西川のりおさん

 大阪といえばお笑い。2025年に大阪市を廃止して4特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票(11月1日投開票)は、芸人の世界にも無関係ではない。テレビ番組で約100人の政治家と対談した経験を持つ漫才師の西川のりおさんに、都構想のことをどう思うか、話を聞いた。(聞き手 共同通信=八島研悟)

インタビューに答える西川のりおさん

 ―芸人、市民の目線で大阪の現状をどう見ていますか。

 漫才ブームの1980年代、「思い切り暴れてやる」と乗り込んだ東京のテレビ局には「大阪の芸人にはかなわない」という空気がありました。商売の世界でも、大阪には松下電器産業(現パナソニック)のような元気な会社がたくさんあったものです。

 しかし今は、在阪テレビ局ですら東京に迎合し、自社制作の全国ネット番組に出すのは東京のタレントばかり。企業は東京に流出し、大阪の電気街・日本橋や、おもちゃ屋が集まる松屋町筋商店街は関東資本の家電量販店に客を奪われてしまいました。大阪の求心力はなくなっています。

 ―都構想には賛成ですか。

 都構想が正解とは言い切れませんが、「何かしなければ」という気持ちからおおむね賛成です。反対多数になれば、現状のままということになる。東京一極集中は、大阪弁で言えば「けったくそ悪い(気分が悪い)」。変わってほしいという意味で賛成です。

 ―「おおむね」ということは、全面的に賛成ではないと?

 やはり行政サービスが維持されるかが見えないのが気になります。特別区の設置で無駄をどれだけ圧縮できるのかも分かりにくい。特別区に分かれれば、財政が好調な区と悪い区が出てくるでしょう。「区によって差ができるのはどうなんだ」と思うんですが、その一方で「全ての区が均一なら都構想の意味がない」とも感じます。

 ―住民投票は2015年にも行われ、結果は否決でした。前回と今回の違いは。

 前回の住民投票の時は、大阪市長として橋下徹さんがいました。都構想を推進する大阪維新の会は、そもそも彼がつくった「橋下党」です。住民投票は政治家としての進退を懸けた彼のワンマンショーで、事実上の人気投票でした。その分、盛り上がりましたが、今回はそうでもない。投票率は前回(66・83%)を下回るんじゃないでしょうか。

 都構想で何がどう変わるのか。大阪維新には、有権者の心をつかむようなワンフレーズで分かりやすく示してほしいですね。政治に関心のない人でも「4区に分かれて区長を選ぶようになるらしいで」とか、他人にすらすら説明できるくらいにならないと投票率は上がらないでしょう。

インタビューに答える西川のりおさん

 ―大阪維新の代表代行でもある吉村洋文府知事のことはどう見ていますか。

 BS番組で延べ107人の政治家と対談しましたが、その経験から言うと、橋下さんより吉村さんの方が政治家としては上だと思います。知事・市長ダブル選で圧勝して民意を突き付ける一方、都構想の制度設計では公明党の要求をのんで賛成に転じさせました。とてもしたたかだと思います。

 吉村さんのもとには、既得権益を持つ勢力があの手この手で寄ってきているんじゃないでしょうか。都構想が実現すれば、そういう人たちとの関係を断ち切れるかが一層問われることになります。

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 にしかわ・のりお 1951年、奈良県生まれ。4歳から大阪市で育つ。75年に「西川のりお・上方よしお」を結成。著書に「橋下徹はなぜ大阪で独裁政治ができるのか?」など。趣味は新聞を読むこと。

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