植松死刑囚が「作品」出展 都内で23日から「表現展」 被害者の家族失望「贖罪の気持ちがない」

植松死刑囚の応募作(主催者の「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」提供)

 障害者施設「津久井やまゆり園」(神奈川県相模原市緑区)で入所者ら45人を殺傷した植松聖死刑囚(30)が拘置施設内で制作した「作品」が、東京都内で23日に始まる「死刑囚表現展」に展示される。犯行前から公言する独善的な主張の箇条書きで、被害者家族は「何ら贖罪(しょくざい)の気持ちがない」と失望している。

 植松死刑囚は2016年7月、園での勤務経験から「障害者は不幸をつくる」と一方的に憎悪を募らせ、入所者19人を刃物で殺害、職員を含む26人に重軽傷を負わせた。今年3月に横浜地裁で開かれた裁判員裁判で死刑が宣告され、弁護人の控訴を自ら取り下げて判決が確定した。東京拘置所に収容されている。

 出展したのは、角2サイズの茶封筒4枚に書き連ねた「7項目の提案」など。「安楽死の法制化」「大麻合法化」「美容整形の推進」といった内容で、犯行数カ月前にトランプ米大統領候補(当時)に触発されて着想した独自の「政策」だ。主催者が国会議員経由で出展を呼び掛け、7月に応募があったという。

 一命を取り留めながらも重傷を負った尾野一矢さん(47)の父剛志さん(76)=座間市=は「死刑確定後も罪に向き合っていないのは明白だ。展示自体も彼の主張に感化される人々が現れる恐れがあり、有害でしかない」と失望した。

 展示担当者の深田卓さん(72)は「死刑囚は出展を重ねるうち、贖罪の気持ちを深めていく傾向がある。彼らの処遇がほとんど開示されない日本で、心境を垣間見られる機会にしたい」と話す。

 会場にはこのほか、17人による計約110点が展示される。秋葉原無差別殺傷事件(08年)の加藤智大死刑囚(38)や、大阪・寝屋川中1男女殺害事件(15年)の山田浩二死刑囚(50)のイラストや詩歌もある。

 表現展は、死刑廃止派の市民団体が05年に始め、今年で16回目。会場は、東京都中央区の松本治一郎記念会館5階。25日まで。入場無料。問い合わせは、港合同法律事務所、電話03(3585)2331。

© 株式会社神奈川新聞社