【話題のTikTokクリエイター】9月に新曲「Life is beautiful」配信したTani Yuuki

今年の春にTikTokで投稿されたワンコーラスの動画が大注目を浴び、YouTubeにアップされた楽曲のフル動画は1500万回以上の再生数を記録。7月に満を持して配信リリースされると各種配信チャートでも上位にランクイン。2020年におけるひとつの「現象」となったのが、シンガーソングライターTani Yuukiによる楽曲「Myra」だ。

9月7日に配信された新曲「Life is beautiful」もすでに話題となっていることからわかるとおり、TikTokをきっかけに、Tani Yuukiの名前と活躍のフィールドは大きく広がった。そこではいったい何が起きていたのか。なぜ彼はそこを活動の場に選んだのか。新たな才能が生まれ「発見」されるまでの話を聞いた。

インタビュー・テキスト:小川智宏

―TikTokでの投稿をきっかけに、「Myra」はどんどん広がって多くの人に聴かれる曲になりました。この状況、どういうふうに受け止めていますか?

Tani Yuuki:こんなに広がってくれるとは思ってなかったので、僕自身びっくりしています。最初にTikTokにワンコーラスだけ投稿したんですけど、それが投稿してすぐに「いいね」が500くらいついて、再生数も何千とかになって。これはすごいことになってるなと。この曲を作った時は、歌詞とかも考えこまずにすんなりできたんですよ。きれいに自分の理想の形に収まったというか、自分の内側の素直な感情を書いた曲だったから、共感もすごく呼べたんじゃないかなと思っています。

―Tani Yuukiさんが音楽を始めたきっかけってなんだったんですか?

Tani Yuuki:お父さんが洋楽とかもよく聴く人だったので、車の中で聴く曲を好きになって……みたいなのもあったと思うんですけど、明らかにここだなって思うのは、中学2年生の時に部活で怪我をしてしまって休んでいたときに、ストレス発散のためにお祖父ちゃんからもらったアコースティックギターを弾いたりしていたんです。そのときに音楽ってすごく楽しいんだなって思ったし、普段の会話ではうまく伝えられない気持ちも、音楽になるとすごく伝わるなみたいな感覚がすごくあって。それが興味を持った瞬間でしたね。当時、怪我の影響で学校に通えてなくて、休んでるから内申点も足りないし、やりたいこともないし、行きたいところとかもないし……今自分に何があるんだろうってなったときに、音楽だけがあったというか。そういう状況にいた自分だからこそ、同じような気持ちの人たちの気持ちも分かるし、そういう人たちに元気を出してもらえるような歌や曲が作れたらいいなと思ってましたね。

―届けたい、伝えたいという思いというのは当時からあったんですね。

Tani Yuuki:根本のところにはすごくそれがありますね。それで高校を出たあとに音楽の専門学校に入って、アコースティックユニットを組んだんです。でも、それはすぐに終わっちゃったんですよね(笑)。やっぱりグループでやるのって難しいんだなって思って。意見の違いだったりとかもあったし、それからひとりでやる道に行きました。そのほうが好きなんでしょうね。たまに寂しくなったりもするんですけど(笑)、自分のやりたいことを最大限やるのにはこの形がいちばんいいのかなと思っています。

―Tani Yuukiさんはソロで活動する一方、「WHITEBOX」というオンラインアカペラサークルにも所属していますが、このグループについて少し説明してもらえますか?

Tani Yuuki:僕の高校の後輩の男の子がWHITE BOXのリーダーのホワイトくんと繋がりがあって、紹介してもらったところから始まってるんですけど……グループとしてはリーダーのホワイトくんがSNS上でいいなと思ったアーティストの人にメッセージを送ってやり取りをして、メンバーが増えていった感じですね。それぞれ住んでいる場所が全国に点々としているので、普段はオンラインでやり取りをしながら活動してます。僕がYouTubeやTikTokで活動をするようになったきっかけもWHITEBOXだったんですよ。ホワイトくんがそういうやり方をしているっていうのを知らなければもしかしたらやってなかったかもしれないし、グループのボーカルの男の子が動画を定期的に上げていたらすごく伸びたりしているのを見て、これはすごく可能性があるなと思ったんです。これを使えばいろいろな人に見てもらえるかもしれないと思って。

―まさにそこからTani Yuukiさんの音楽は広がっていったわけですけど、TikTokで楽曲を発表していくことのおもしろさってどんなところにあると思いますか?

Tani Yuuki:TikTokは、どのSNSよりも見つけてもらいやすいし、いいなと思ってもらえたらすごく広がりやすいと思うんです。すごく可能性に溢れてるなっていう感じがします。逆に自分も新しいものやいいものを見つけやすいので、同じような活動してる方のいいところを吸収できたりもしますし。それもおもしろいところですね。TikTokがなかったらなかったで、何か別の活動をしてたんだとは思うんですけど、今みたいにはなってなかったんじゃないかなとすごく思います。

―いま何が盛り上がっているのかとか、他のアーティストが投稿している楽曲とかについては気にしますか?

Tani Yuuki:気にしますね。グループでカバー曲を投稿しているというのもあるんですけど、そういう流行みたいなものにはアンテナを張っています。それでちょっと敏感になってるところもあって、なるべくタイミングを逃さないようにというか、新鮮なうちに投稿しようっていうことは考えますね。自分で音楽を作るうえでも、いいと思ったものを見たり聴いたりして、そのエッセンスを吸収して楽曲に反映しているところがすごくあるんです。『Myra』にもそのエッセンスがすごく入っていると思います。

―これからTani Yuukiの活躍のフィールドは広がっていくと思いますが、それでも活動のベースがTikTokやYouTubeであるということは変わらない?

Tani Yuuki:そうですね。僕みたいに、TikTokでバズって聴いてもらえたところから始まって、ストリーミングとかいろいろなところで流れていくっていう、そういうパターンもあるんだっていうことを知ってもらえたら嬉しいです。専門学校の頃とか、メジャーアーティストになるにはどうしたらいいんだろうとか、どうやったら自分の音楽を聴いてもらえるだろうみたいなことをずっと思っていたし、それに正解ってないじゃないですか。そういう中のひとつのやり方になれたらすごいんじゃないかなと思うし、そうしたいんですよね。

撮影:石丸敦章

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