サイボウズ副社長と考える環境変化に強い“ファンづくり経営”の極意

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ソフトウェア開発会社のサイボウズが株主との新しい関係を築くためのオンラインイベント「サイボウズ株主Meetup」を10月9日に開催。

産業能率大学経営学部・倉田ゼミで「ストック重視の資本主義」を研究する学生たちをゲストに招き、サイボウズ副社長・ 山田理氏らが「カイシャと株主の関係性」や「理想のコミュニケーション」について議論した。

今回はイベント内で行われた学生たちの研究発表の内容や、山田氏とのディスカッションの一部を紹介する。

■繁忙期のメール凸で企業の意識を評価

大阪府の新型コロナウィルス対応への「kintone」導入や「がんばるな、ニッポン。」のテレビCMで話題を集めたサイボウズ。その株価はこの1年足らずで約3倍近く上昇し、株主数も大幅に増大した。一方でサイボウズは「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念に掲げており、株主との間でも従来のような「企業と出資者」の関係ではなく、よりフラットな関係の構築に取り組んでいる。

「サイボウズ株主Meetup」は「同じ理念に共感するチームの仲間」として、同社が株主や投資家などさまざまな人と対話する場で、2回目となる今回は産業能率大学で企業研究を行う倉田ゼミ「井上・須藤チーム」の学生たちが登壇。サイボウズの出会いのきっかけともなった研究について発表を行った。

「井上・須藤チーム」は新井和宏氏の著書『持続可能な資本主義』を参考に、見えない価値やつながりによって中長期的なスパンで資産形成を目指すストック重視の経営に着目。インフルエンサービジネスでファンづくりのため重視される信頼・共感・愛着の3つの観点から、“八方よし”の考えに基づいて「ファンを作る経営」を行う企業を独自に選定し、その投資パフォーマンスを検証した。

選定フローは3段階で昨年12月には2つの選定を経た120社に対し、各社が使用するオフィスチェアに関する質問を行い、その対応の質を抜き打ちテスト。年末の繁忙期に社内確認も必要な問い合わせ対応という負荷を与え、返信メールの文面などから、ファンづくり意識の浸透度合いを定性的に評価したという。

12月後半の2週間で計20社から回答があり、そのうち13社が“神対応”として通過。サイボウズもそんな13社のうちの1社だったらしく、ゼミを率いる井上さんは「本当に迷惑な問い合わせですが、20社の回答の質はしっかりした長文で回答していただいた13社の企業と、一問一答形式のような少し冷たい印象を受ける企業にはっきり二分しました。サイボウズさんのIR担当・田中那奈さんからは、オフィスチェアに対する回答はいただけませんでしたが、回答できない理由すら教えてくれない企業さんが多いなか、決算期間の多忙さを理由に挙げていて。その正直すぎる姿勢に驚きました」と述べていた。

研究では最後に選定フローを通過した業界もさまざまな13社でファンドを構築。リスクとリターンの期待値を算出して年次で比較すると、代表的なインデックスと同程度のリスクにも関わらずリターン数値は数倍という結果となり、理論上「ファンを作る経営ファンド」は中長期的な投資に適していることが確認された。

コロナ禍の投資パフォーマンスとしてはYahoo!ファイナンスの2020年1月時点からのデータで、13社の株価は平均でプラス46%。最も株価が落ち込んだ銘柄はマイナス49%とマイナス37%の2社で、ファンの下支え効果から外部環境の変化にも比較的強いと推論した。

■ファンづくりの極意は企業も個人も同じ

研究発表を受け、「本当にすごいよね。こんなちゃんと分析して。自分の学生時代からは全く考えられない(笑)。13社に絞っていく段階で那奈さんの返答が『忙しいから答えられません』ってメールでしたけど、本当にあのメールで『正直だな~』って高評価したの(笑)? 実際、普段から彼女はすごく正直だけど、そこまで読み取ったのもすごいね」と感心していた山田氏。

実際に対応した田中さんは「『寝不足したので遅れます』とか、社内で正直に報告することに慣れすぎていて。その習慣が出てしまったという。逆に取り繕うことができなくなってきていて、『これで社会人いいのだろうか……』とも思いますけど」とコメントした。

また、ファンを作る経営と企業のブランド価値について話題が及ぶと、山田氏は「例えば1,000人いる会社の1人のメール対応を見て、本当に評価していいのかとも思うんですけど、それこそがブランド価値なんですよね。さっき『本当にそこで評価したの?』って突っ込んだけど、まさに胡散臭い会社って『テレビCMもホームページもすごいけど、電話の対応とか全然ダメじゃん』みたいなことだから。1,000分の1の社員がどんな行動をしたかが、本当の価値になっていく。そのアプローチでブランド価値を計るのがすごくおもしろい」と指摘。

ゼミ内での議論で最初にインフルエンサービシネスと企業のファンづくりの類似性を指摘した須藤礼奈さんは、自身もInstagramでナノインフルエンサーとして活動しているそうで、「そこまでファンじゃなかった人にコメントして返答をいただいたとき、これからもずっと応援していきたいなと思いました。私はそんなにたくさんフォロワーがいるわけではないですが、同じように少しでもフォローする意味を感じてほしいなと思って。それから私も1人ずつちゃんと質問などに答えるように心がけています」とも語った。

“100人100通りの働き方”で知られるサイボウズだが、山田氏は愛着を生む経営について次のように見解を述べていた。

「100人お客さんがいたら100通りの対応がちゃんとできるのかが、真のブランド価値。1個のケーキを3人で3等分するのは、平等だけど公平とは限らないというか。3人のうち2人が甘いもの嫌いで1人が甘いもの大好きなら、その1人にケーキ全部あげたら全員が幸せになるわけで。一律で3分の1ずつ配ると全員が微妙に不幸になることもある。一人ひとりに対応するのはコストもかかって大変ですけど。結局、それがファンをつくることにつながるんだと思います」

このオンラインイベントの動画はサイボウズIRチャンネルにアップされている。興味のある人はぜひ気軽に視聴してみてほしい。