ひふみ投信・藤野氏に聞く「お金に強くなる習慣、どうやって身につけますか?」

「ひふみ投信」で知られる、レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役会長兼社長の藤野英人氏。“お金の賢人”藤野氏に「お金に強くなる習慣」をどうやって身につけたらよいかを話してもらいました。


習慣1:お金は「缶詰」だと考える

――日本人は貯蓄好きな国民性と言われていますが、貯めこんだまま寿命を迎えてしまう人も多いと聞きます。貯蓄の意義とは何でしょうか。

藤野:あなたが持っているお金の「出所」を考えたことがありますか? おそらくその多くは、自分で稼いだか、儲けたか、誰かにもらったかのいずれかでしょう。いずれにしても、あなたの行動や努力、判断によってもたらされたお金であり、「あなたの歴史が詰まっている」といえます。要するに、お金はあなたの過去の頑張りをパックした「過去の缶詰」だといえるのです。

一方で、お金があればそれで洋服やカバンを買っておしゃれをしたり、おいしいものを食べたり、旅行に出かけて楽しんだりすることができますね。あるいは、そのお金を元手にビジネスを始めたり、本を買ったり講座を受講するなどして勉強を始めることもできる。つまり、お金があればやりたいことを実現できる可能性が高まるわけで、将来の可能性も詰まっているともいえます。ですから、お金は過去だけでなく、「未来の缶詰」であるともいえるのです。

缶詰は長持ちしますから、何年か置いておいても中身は腐りません。だから過去の頑張りを必要な時まで詰めておいて、未来に使うことが可能です。貯蓄はあなたの過去の頑張りを必要な時まで取っておいたり、大切な人のために使ったりもできる。だから貯蓄をすることに意義があるのです。

ただし、ただ貯めこむだけではあまり意味がありません。缶詰は長持ちするけど、永遠においしく食べられるわけではないように、お金もあまり長い間貯め込んでおくとインフレで価値が減ってしまうこともあります。必要な時に使って人生を豊かにしてこそ、その価値を発揮します。

習慣2:収入と支出のバランスを意識する

――収入が思うように増えなかったり、お金を使い過ぎたりして、なかなか貯蓄ができない人もいます。

もし、「収入が少ないから貯蓄できない」と思っているなら、それは間違った考え方かもしれません。ある程度の収入がある人であれば、貯蓄ができるかどうかは収入と支出のバランス、要するにお金の使い方によって決まります。

収入が高い人はお金の使い方も派手な人が多いので、貯蓄がほとんどないということも珍しくありませんし、収入が少なくてもやりくりが上手でひと財産を築いている人はたくさんいます。資産を増やすには、「稼ぐ」「節約」「投資」という3つの行動をバランスよく回していくことが重要なのですが、多くの人はこのうち1つか2つは苦手分野があるものです。3つとも上手にできている人は少なく、限られた人が持っているスキルといえるかもしれません。

稼ぐ力をアップするなら自己投資が最も効果的な方法ではありますが、思うように収入を増やせなくてもあきらめる必要はありません。定年後もできるだけ長く働き続けることでも生涯での収入は上げられますし、家計を見直して支出を抑えれば手元に残るお金は増やせます。もちろん、収入の一部で投資を始めるのも効果的です。中でもおススメなのは、強制的に収入と支出のバランスを改善することです。

習慣3:積み立てで強制的に収入と支出のバランスを改善する

――強制的に収入と支出のバランスを改善する、とはどういうことでしょうか。

収入から毎月強制的に、積み立てをするのです。給料日の翌日に自動で積み立て貯蓄や投資の口座に振り替えされるように設定し、そのお金はなかったものと考えて家計は残ったお金でやりくりします。これは私だけでなく、多くの専門家や成功した個人投資家が推奨している合理的な方法です。

というのも、収入が入ったら自動で引き落とされるので、何もする必要がありません。最初は使えるお金が減って窮屈に感じるかもしれませんが、そのうち慣れます。積み立てる先は積み立て預金口座でもいいのですが、できれば投資信託を利用した積み立て投資にすれば、貯めるだけでなくじっくり増やしていくことができます。

積み立て投資は、相場が上昇すれば利益が出ますし、下落すれば安く仕込めて将来の利益が大きくなるので、どんな相場状況でも気にする必要がありません。一度設定すれば忘れていても長期的には資産が増えていくので、銘柄研究や相場分析は不要で、空いた時間を自己投資にあてたり、家族と過ごす時間や趣味にあてることができます。収入の額が少なくても資産形成に成功している人の多くは、こうした積み立ての習慣ができている人です。

習慣4:積み立ては継続する

――その説明だけなら簡単そうなのですが、どうして多くの人が資産形成に苦労しているのでしょう。

積み立ては誰でも簡単に始めることができますが、落とし穴もあります。続けることが難しいのです。

当社のメイン商品であるひふみ投信は、2008年の設定以来、投資信託の時価にあたる基準価額が約5倍になっています。10年ぐらい保有していれば資産を3倍程度にできているはずなのですが、先日、大変残念なデータが出てきてしまいました。当社の投信を保有した投資家のうち、「5~7%程度の利益が出た時点で売ってしまう」という人がかなりの割合に達していたのです。

積み立て投資は、長く続けるほど複利効果が大きくなりますし、相場の変動を多く経験しながらも、長く積み立てを続けていくことで資産が形成されていくのです。どんなに良い金融商品でも一本調子で値上がりすることはないので、途中経過ではマイナスになってしまう局面は当然あります。そんな時こそ安く仕込んで将来の利益を大きくするチャンスなのでそのまま続けるべきなのですが、人の心理は将来大きな利益に育つ可能性を棒に振ってでも、目の前の小さな利益を確実に手にしておきたいと考える性質があります。そのため、感情のままに投資行動すると、資産形成には不利に働いてしまうのです。

お金が必要な時に換金するのはいいのですが、相場の変動に影響されて余計な売買をしてもプラスに働くことはあまりありません。大切に積み立ててきた資産を持ち続ける勇気こそが、成功の秘訣になります。


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