タンクレストイレとは?リフォーム前に知っておくべき注意点

トイレをリフォームする際、検討する方が増えているタンクレストイレ。すっきりとしたデザインのものが多いため、トイレ空間をおしゃれで落ち着いた場所にしたい方におすすめです。今回は、タンクレストイレのメリットやデメリット、リフォーム時の注意点、費用相場などを紹介します。

タンクレストイレとは

タンクレストイレとは、便器の後方に洗浄用の水を溜めておくタンクがないトイレを指します。大型の四角いタンクがないため、従来型のトイレと比較すると、すっきりとしていておしゃれな印象です。

タンクレストイレは、水道の水圧で便器を洗浄する「水道直結方式」を採用しています。水道管と便器を接続する管が設置され、そこから便器を洗浄する水が流れています。その分、連続で流せますが、設置する際は水圧の確認が必要です。接続管の内部にはバルブが設置されているため、水が逆流する心配はありません。

日本で最初にタンクレストイレを発売したのはTOTOで、スタイリッシュな見た目と従来のトイレにはない機能が注目を集めました。当時発表された「ネオレスト」シリーズは、現在もタンクレストイレ業界をリードする存在です。

タンクレストイレを設置する5つのメリット

タンクレストイレには、従来型のトイレにはないメリットが多数存在します。こちらでは、タンクレストイレを設置するメリットを5つ紹介します。

節水効果が高い

従来型のトイレは1回の洗浄に約13Lの水を使用しているのに対して、タンクレストイレは1回あたり3.3~5Lと、節水効果の高さが魅力。使用する水の量を3分の1程度にできるため、もちろん水道代も大きく削減できます。

東京都の調査によると、家庭で使用されている水は、お風呂の40%に次いでトイレが20%と多く、全体の5分の1を占めています。2人世帯の場合は、1カ月で3300Lもの水をトイレで使用している計算です。タンクレストイレを設置すれば、大きな節水効果が期待できます。

水を連続で流せる

一般的なトイレは、タンク内に水がなければ便器に水を流すことができません。そのため、商品や水圧により差はあるものの、1度水を流したらもう1度流すまでに待たなければいけない場合も。

レバーを回した後、もう1度回そうとしてもなかなか水が流れないシーンをイメージするとわかりやすいのでは。家族が連続で使用する場合など、朝の忙しい時間に困るケースも珍しくありません。その点、タンクレストイレは水道管から直接便器内に水を流しており、水を溜める必要がないため連続で水を流すことができます。

タンクがない分トイレが広くなる

タンクレストイレは、従来型のトイレと比べてタンクがない分、幅や奥行き、高さなどの点でひと回り小さくデザインされています。実際、タンクのあるトイレと比較すると、高さは30cm前後、奥行きは10cm前後のゆとりが生まれます。タンクがない分、省スペースにできるため、和式トイレからのリフォームでも既存スペースのまま設置しやすいです。狭くなりやすいトイレ空間を広々とした印象に変えてくれます。

トイレに閉塞感を覚えている場合は、タンクレストイレへのリフォームがおすすめ。タンクレストイレを設置してスペースに余裕が生まれたら、棚やラックなどを設置して、収納スペースとして活用するとより快適な空間になります。

隙間が少なく掃除が簡単

タンクレストイレの形状は、フチ裏の奥行きや段差、隙間が少なく設計されていて、普段の掃除の手間を最小限におさえられます。汚れてしまった場合でも、雑巾やマイクロファイバークロスなどで簡単に拭き取れます。

見た目がスタイリッシュ

タンクレストイレを設置する際は、スタイリッシュな見た目にも注目が集まります。従来型のトイレには少ない流線型のデザインが主流で、なかには「美術品のよう」といった評価を受ける商品もあります。

タンクがない分シンプルな見た目で、壁面や床の装飾が映えるのも特徴。便器はシンプルなものを選び、壁面や床をおしゃれに彩りたい方におすすめです。さまざまなインテリアと組み合わせるのにも適しています。

タンクレストイレを設置するデメリットと設置できないケース

タンクレストイレは、従来のトイレとは異なる特徴があり、設置するにあたって注意したい点もあります。自宅の環境によっては設置できないこともあるため、事前の確認が必要不可欠です。こちらでは、タンクレストイレを設置するデメリットや設置できないケースを紹介します。

手洗い器が一体型になっていないことが多い

タンクレストイレは従来のトイレのように手洗い器が一体になっていないものが多いため、手洗い器が必要な場合は別途取り付ける必要がある

タンクレストイレは、基本的に手洗い器が一体型になっていません。現在タンクの上部に手洗い器が取り付けられているタイプのものを使用している場合は、別途手洗い器を設置する必要があります。その分のスペースが必要になるのはもちろん、別途設置工事費もかかります。

ただ、手洗い器にもさまざまなデザインがあり、別途手洗い器を設けることでトイレ空間をおしゃれにできます。好みのデザインの手洗い器を探してみてください。もしくは、パナソニックの「アラウーノV」など、手洗い器の付いたタンクレストイレを選ぶ方法もあります。

水圧が低い場所では設置できない

マンションの高層階は水圧が低い場合があり、タンクレストイレが設置できないケースも。まずはリフォーム会社に相談しよう

直接水道管から水を流すタンクレストイレは、水圧の低い場所では設置できない可能性があります。最低水圧の基準を満たしていないと、排せつ物が詰まってしまったり、水の流れが悪くなってしまったりします。とくにマンションの高層階では水圧の問題がクリアできないケースも。

最低水圧の条件は製品によって異なるため、事前の確認を行い、必要であれば水圧強化部材の購入も検討しましょう。不明点があれば、メーカーやリフォーム会社に問い合わせるのが安心です。

電気を使用するため停電時に弱い

多くのタンクレストイレは、電気の力を利用してバルブを開閉し水を流しているため、災害によって停電が生じると自動では水を流せなくなります。停電時に水を流す場合は、自分でバケツに水をくんだり、便器横に設置されたカバーを取り外してハンドルやひもを操作する必要があります。なかには非常用の洗浄装置が付いているタイプもありますが、乾電池などが必要です。

ウォシュレットのみの部分交換ができない

タンクレストイレの場合、ウォシュレットのみの部分交換ができないため、メーカーに修理依頼をする必要がある

タンクレストイレは、ウォシュレットと便座部分が一体化したものが基本です。そのため、故障や不具合を起こしてもウォシュレット部分のみを交換することはできず、メーカーにトイレ自体の修理を依頼する必要があります。

タイミングによっては対応が遅くなる可能性もあり、メーカーの正規メンテナンスとなると料金も高額になる傾向があります。「トイレ本体は問題ないけどウォシュレットに不満がある」という場合でも、ウォシュレットを取り替えることはできないため注意しましょう。

タンクレストイレのリフォーム費用相場

タンクレストイレをリフォームで設置する場合、その費用が気になるところ。タンクレストイレのリフォームには、本体価格に加えて旧トイレの撤去費用や新しいトイレの設置費用、配管工事費用、電気工事費用などが必要です。こちらでは、それぞれの費用相場を紹介します。

タンクレストイレ本体価格

スタイリッシュなデザインとさまざまな機能を備えたタンクレストイレは、従来型のトイレと比較して本体価格も高額になる傾向があります。目安としては、20万~40万円程度が価格の相場です。タンク式のウォシュレット付きトイレと比べると、5万~15万円ほど高くなります。

ただ、必要な機能を絞ったり、特別な機能を求めたりしなければ20万円以下のタンクレストイレも販売されています。タンクありタイプと比較しても1万~5万円ほどの差となり、十分検討する価値があります。タンクレストイレを探す場合は、ある程度予算を決めておくのがおすすめです。別途手洗い器を設置する場合は、手洗い器の本体価格が4万~10万円かかります。

撤去、設置の工事費用

トイレの交換には撤去と設置の両方の工事費用が発生する

タンクレストイレを設置するには、古くなったトイレを撤去する必要があります。旧トイレの撤去費用は、3万円前後が目安です。タンクレストイレの設置費用には、約5万円かかります。手洗い器を設置する場合は、その費用が追加で3万円前後必要です。

配管工事が必要な場合の費用

従来型のトイレからタンクレストイレにリフォームする場合、水道管と便器を直接つなぐために配管工事が必要になるケースが一般的。配管工事費用の目安は、3万円前後です。別途手洗い器を設置する場合は、同等の費用が追加で発生します。

電気工事が必要な場合の費用

リフォームによってタンクレストイレを設置する場合、電気工事が必要になることもあります。費用相場は、既存のトイレが和式か洋式かによって変化します。和式の場合1万5000~4万円程度、洋式の場合1万5000円前後が目安です。詳細な金額は、事前にリフォーム会社に問い合わせ、見積もりを取りましょう。

トイレのリフォームで気をつけたいこと

タンクレストイレに限らず、トイレのリフォームを行う場合には、注意すべき点があります。こちらでは、ふたつのポイントを解説します。

床排水と壁排水

トイレリフォームでは既存のトイレを取り除いてから新しいものを設置するため、建物の構造に適していないトイレを選ぶと設置できません。そこで重要なのが、トイレの排水方式です。トイレの排水方式には床排水と壁排水があり、商品によってはどちらかにしか対応していないものもあります。

便器の後方を覗いた際に排水管が見えないものは床排水、壁に向かって排水管が伸びている場合は壁排水です。床排水は一戸建てに多く、壁排水はマンションやアパートなどの集合住宅に多い傾向があります。まずは排水方式を確認しておきましょう。

和式から洋式へのリフォーム

段差のある和式トイレの場合、段差部分を解体する工事が発生するため、工事費用がかさみやすい

和式のトイレから洋式のトイレにリフォームする場合、元々のトイレが汲み取り式だと、水洗式のトイレを設置できるよう工事を行う必要があるため工事費用が高くなる傾向にあります。

和式トイレに設置されていることの多い段差の有無もポイントです。段差があると、便器を撤去した後に段差部分を解体し、下地の補修工事を行う必要があります。その分費用もかさみます。

さらに、トイレ空間が0.3坪ほどと極端に狭い場合、通常のトイレは設置できません。和式トイレから洋式へのリフォームを検討している場合、事前にリフォーム会社に現地調査を依頼しましょう。

タンクレストイレの有名メーカー、シリーズ

タンクレストイレはさまざまなメーカーが販売していますが、有名メーカーのものがいいと考える方も少なくありません。こちらでは、タンクレストイレの代表的なメーカーとシリーズを紹介します。

TOTOのネオレストシリーズ

ネオレスト AH・RH・DH(TOHO公式サイトより)

日本のタンクレストイレの第一人者といえば、TOTOのネオレストシリーズ。節水性を売りにしている商品が多く、最新の節水・節電技術が搭載されています。従来品と比較して、年間の水道料金が1万5000円近く節約できる試算もあるようです。

ネオレストシリーズでとくに注目を集めているのが、「きれい除菌水」という機能です。除菌成分のある水を霧状にして便器に吹きつけ、汚れの付着を防ぐ機能で、普段の掃除の手間を省けます。

Panasonicのアラウーノシリーズ

アラウーノ L150シリーズ(Panasonic公式サイトより)

トイレ回りの清潔さに力を入れているのが、Panasonicのアラウーノシリーズです。有機ガラス系新素材を用いた便器は、汚れを弾きやすく拭き掃除も簡単にできます。「ハネガード」「タレガード」「モレガード」の3つの機能を備えたトリプル汚れガードは、トイレの使用中の汚れを抑える新機能です。

LIXILのサティスシリーズ

サティス(LIXIL公式サイトより)

世界最小デザインのタンクレストイレを提供しているのが、LIXILのサティスシリーズ。コンパクトで省スペースに設置できるのが最大の魅力です。掃除のしやすさを追求して生まれた「お掃除リフトアップ機能」は、便器と便器の隙間部分が上がり、雑巾やクロスを持った手を簡単に入れられます。家事の手間を省きたい方は、こういった機能つきのものを選びましょう。

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