「しまあめラボ」にJST優秀賞 五島・赤島の雨水活用プロジェクト

笠井教授が赤島に設置した雨の集水設備=2018年8月、五島市赤島

 福井工業大(福井市)の笠井利浩教授(52)のグループ「しまあめラボ」が、水道のない長崎県五島市赤島で取り組んでいる雨水活用プロジェクトが、革新的な科学技術を用いて社会課題を解決する取り組みとして、科学技術振興機構(JST)の表彰制度で優秀賞を受けた。水不足が世界的な問題となる中、都市部での展開も目指す。笠井教授は「島民の協力のおかげ。今後も赤島での暮らしやすさにつなげたい」と意気込む。

 表彰制度は、科学技術イノベーション(STI)の活用を通じ、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指す「STI for SDGs」アワード。第2回の本年度は大学や企業などから計35件の応募があり、文部科学大臣賞とJST理事長賞各1件、優秀賞2件が選ばれた。JSTが21日に発表した。
 赤島は五島市福江島の南東にある人口数十人の二次離島で、国内で唯一、全ての生活用水を雨水に依存している。笠井教授らは2017年から島内で活動し、波板を斜面地に設けた雨の集水設備やタンクを設置。簡易宿泊所まで配管をつなぎ、島民に使ってもらいながら水質や水量などのデータを集めている。
 給水システムは、きれいな雨水を効率的にためる目的で開発。機器同士をインターネットでつなぐIoT技術などを搭載し、空気中の汚れが多い降り始めの雨水を自動で除去したり、タンクの水量を遠隔で監視したりしている。将来的には技術を応用して都市部の学校や病院にタンクなどを設置し、災害時を含めて活用できる仕組みを目指す。また笠井教授は、子どもたちを赤島に招き、水の大切さを学んでもらう教育プログラムも実施している。
 JSTは「気候変動時代における水インフラのレジリエンス(強靱(きょうじん)性、回復力などの意味)の向上を目指し、地域に密着した活動を展開している」と評価。笠井教授は「今後も赤島の皆さんと関わり続け、島での観光や加工品作りなどにも雨水を使えないか、考えていきたい」と話している。

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