【話題のTikTokクリエイター】17歳のシンガーソングライター・まつり

人生にはいくつかの運命的な出会いがある。今、10代20代の若い世代のリスナーを中心に大きな注目を集めてる17歳のシンガーソングライター・まつりにとってはアコースティックギター、そしてTikTokとの出会いがその後の人生を大きく変えるものとなった。高校で初めてギターに触れ、1年足らずで作詞作曲をこなすようになった彼女は、音楽の道を志して高校中退を決意。モバイル向けショートムービープラットフォームアプリ・TikTokに投稿したカバー動画がバズったことで一躍話題に。

TikTokのフォロワーは約12万人を数え、YouYubeチャンネルにアップしたオリジナル曲「だーりん。」は公開から数ヵ月足らずで100万回再生を超えるという快挙を達成、今年5月にはついに配信リリースデビューにまで漕ぎ着けたのだ。実体験をもとに紡ぎ上げられる世界観と、耳にやさしく馴染んで離れない歌声が魅力のまつり。ここでは彼女のこれまでの歩みとこれからを聞いてみたい。

インタビュー・テキスト:本間夕子

—まつりさんが音楽に目覚めたきっかけは?

まつり:小さいときから歌が好きで、よく歌っていました。カラオケでも結構いい点を出したりしていて(笑)。でも本格的に音楽をやりたいと思ったのは高校に入ってから。部活動が必須の学校で、中学のときには体育会系の部活をやっていたんですけど、高校では楽そうなところがいいなと思って軽音部を選んだんです(笑)。そこで先輩たちがアコースティックギターで弾き語りをしているのを見て、自分もやりたくなって。ギターが弾けるってカッコいいなと思ったんですよね。たまたま、父のアコギが倉庫にあったので、それを引っ張り出して弾き始めたのが最初です。

—楽そうだという理由で入った軽音部で、アコギの魅力にハマってしまった、と。ギターに出会って何か変わりましたか。

まつり:もっと、いろんな音楽、いろんな曲に挑戦しようと思って。それまではK-POPばかり聴いてましたけど、ギターを始めてからJ-POPを聴くようになったんです。

—TikTokにもたくさんカバー動画を投稿されていますもんね。あいみょん、My Hair is Bad、Aimer、SEKAI NO OWARI、森山直太朗等々、数え切れないくらいとにかく幅広くて。J-POPに触れて発見することも多いのでは?

まつり:K-POPとはまた全然違いますよね。歌詞をちゃんと聴くようになって、“いいな、この歌詞”って思う曲にたくさん出会うことができました。自分の曲作りにもいい影響をもらいましたし」

—作詞作曲もわりと早い段階で始められたと聞きました。

まつり:結構すぐに始めてましたね。とはいえ「だーりん。」もそうですけど、ギター初心者でもすぐに弾けるようなコードしか使ってなかったですけど(笑)。

—ものすごい勢いで音楽にのめり込んでいったんでしょうね。

まつり:はい。ギターを始めてからはもう勉強も放棄して(笑)。授業中、ノートに歌詞を書いたりとか、全然集中してなかったです。そのうちライブハウスにも行くようになって、対バンで出演するようになったり、どんどん音楽で繋がる人が増えていきました。ライブハウスで音楽のことを話せる人が増えたぶん、学校の友達とは話が合わなくなったりもしましたけど、全然平気でしたね。その頃には“音楽にもっと時間を使いたい、学校に行く必要ないじゃん”って思い始めて、去年10月に高校をやめたんです。

—なんと思い切ったことを!

まつり:先生にはめちゃ止められましたし、両親にもすごく反対されましたけど、とにかく音楽をやっていきたいって気持ちが強かったので。最終的には嫌いだった体育の単位をわざと落として進級できない状況に持っていきました。

—そこまで固い決意をされていたとは。

まつり:自分でもそんな思い切ったことができる人間だと思ってなかったです(笑)。ホント、ギターに出会って、音楽を始めて、ガラッと変わりましたね。

—しかも、そこからTikTokでバズるまで相当、早くないですか。

まつり:早かったです。去年の10月に学校をやめてからTikTokにたくさん投稿するようになって。最初は“いいね”が10くらいしかつかなくて“反応ないな”って落ち込んだりもしたんですけど、ここで諦めちゃ学校をやめた意味がないと思って、動画を上げ続けてたんですよ。だんだんタグをつけることとかも覚えて、めっちゃ乱用するようになって(笑)。少しずつ視聴者が増えるように頑張っていたら11月の終わり頃にバズったので。

—それが同じくTikTokで活動されている、うじたまいさんの「September調子はどうだい」をカバーした動画ですね。なぜこの曲をカバーしようと?

まつり:TikTokを見ていたときに、うじたまちゃんがアカペラでこの曲を歌っている動画を見つけて、ここにギターでメロディを付けたら面白そうだなって思い立ったんです。ちょうど学校をやめたばかりの自分にも響く歌詞だったし、私の誕生日が9月ということもあって、ちょっとやってみようかなって。それぐらいの感覚だったので、あんなにバズるとは思ってませんでした。投稿したあと母と出かけていたんですけど、外出先で見たときに“いいね”が500ぐらいついていて“すごい!”ってふたりで喜んでいたら、家に帰った頃には“ええっ!?”みたいなことになっていて(笑)。最初は信じられないような気持ちでしたけど、でも、おかげですごく前向きになれました。もっと頑張ろうって思いましたね。

—ちなみにTikTokの存在を知ったのは?

まつり:よくYouTubeの広告とかで流れてるのを見て、そんなに流行ってるんだって思ってたんですよ。周りにもアプリを入れてる子が多かったので。

—TikTokの魅力ってどんなところですか。

まつり:TikTokを通じていろんなアーティストさんや音楽を見つけられるっていうのは私にとってすごく魅力ですね。あと、幅広い年代の方に知ってもらえるチャンスがあるところ。身近な人たちが普通に使っているので、自分の動画も抵抗もなく上げられますし。自分を知ってもらうのに今いちばんいいアプリだと思います。

—TikTokを始めて、何かポジティブな変化があったとか、そういうエピソードがあったらぜひ教えてください。

まつり:見られているからこそ変われるっていうのはありますね。もともと私、自分に自信がなかったんですけど、コメント欄で“かわいい”とか言ってもらえたりすると“もっとメイクも頑張ろう”って思ったり、逆にダイエットにはアンチコメントもモチベーションにもなりますしね。“クソ〜!”とか思いながら(笑)。あと、やっぱり音楽のことで久しぶりに会った友達に“すごいね”って言ってもらえるのが嬉しいです。あんまり話さなかった友達とかも話しかけてくれたりするので。

—ある意味、TikTokによって、まつりさんの人生も変わったわけで。

まつり:たしかに人生は変わりましたね。周りに私のことを知っている人がいるっていう、それだけで普通だったらあり得ないことですし。

—その後、今年2月にYouTubeで公開したオリジナル曲「だーりん。」がわずか数ヵ月で100万回再生を突破、それをきっかけに5月には音楽レーベルのStar Music Entertainment Inc.からデビューと、思い描いた場所に最短距離で辿り着いていますよね。

まつり:自分は間違ってなかったんだって思いました。あのとき学校をやめて音楽をやると決めてよかった、この道を選んでよかったって。

—ではこの先、目標としていることは?

まつり:いちばん近い目標としては路上ライブですね。ライブハウスに来づらい人もいるじゃないですか。私も最初は怖かったですし。なので、そういう人にも路上から知ってもらえたらって。私自身、路上はやったことがないので挑戦してみたいんです。そして次の目標はワンマンライブ、もちろんもっと大きな夢もあります。とにかく自分そのままを伝えるというスタイルは変えずに進んでいきたいです。

撮影:石丸敦章

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