オフィス、事務所の雰囲気や使い心地を改善する方法は、椅子やデスクなどのオフィス家具を変更するだけではありません。住宅と同じようにオフィスのリノベーションも注目されています。この記事では、生産性を向上させるためのオフィスリノベーションの実情や費用相場などについて紹介します。
オフィスのリフォームとリノベーションの違い
まず、オフィスのリフォームとリノベーションの違いはどこにあるのでしょうか。どちらも、施設の内装に改修を加えるという点では同じです。一般的には、リノベーションのほうが施設に価値を加える大規模な改修として認識されています。一方、リフォームは劣化が見えてきた部分や使いにくくなってきた部分を改善するために行われます。
リノベーションが実施されたオフィスは「リノベーションオフィス」と呼ばれています。既存のオフィスにリノベーションを行えば、新築以上に使い勝手を向上させることも可能です。既にリノベーションが施されたオフィスに入居する場合は、築年数からは想像できない使いやすさや使い勝手の良さを期待できます。
ただ、リフォームとリノベーションの定義は業者によって異なるのも事実です。対応も業者によって細かく違ってくるため、施工を依頼する場合はあらかじめ確認しましょう。
リノベーションとは何か、もっと詳しく知りたい方は以下をご覧ください
リノベーションとは?リフォームとの違いをわかりやすく解説。おしゃれな施工事例も紹介
オフィスをリノベーションするメリット
職場をより快適な空間にしたい場合は、リノベーションを検討すべきです。適切なリノベーションが行われれば、オフィス空間は飛躍的に改善し、仕事への好影響も期待できます。以下では、オフィスリノベーションの豊富なメリットの中から、代表的な四つのメリットを紹介します。
社員のモチベーション向上
高いモチベーションで業務に臨むためには、作業環境がなにより大切です。殺風景なオフィスよりも、おしゃれで居心地のいいオフィスのほうが、社員もリラックスした状態で業務に当たれます。オフィスの雰囲気改善が実現できれば、働く人のキャリアやワークスタイルにいい影響をもたらします。何よりも、ストレス軽減によって期待できる離職率の低下は、会社にとって大きなメリットです。
オフィス環境を改善し生産性を上げる
業務効率・生産性の向上を目的としたオフィスリノベーションの例も少なくありません。デスクワークが主体のオフィスでも、間取りによって仕事の効率は大きく変わります。具体的には、仕切りを取り払い開放感を高める、フリーアドレスを意識した間取りにする、快適にミーティングできる広いスペースを作る、といったオフィスリノベーションが一般的です。また、部署間の移動を最短にする、複合機に近い場所に社員を配置できるようにする、といった例もあります。より働き方に適したレイアウトを求めたとき、リノベーションという手段を選ぶ例が多いといえます。
オフィスリノベーションを行う際は、社員が集中できるかどうか考えることが重要事項となります。働き方改革を目的としたフリーアドレス導入など、新しいシステムとの親和性も意識することも大切です。
会社の印象を向上させる
来客が多い会社であれば、リノベーションによって会社の印象を向上できます。訪問者の目に触れるフロアは、意識してインテリアを配置するなど、スタイリッシュな空間に仕上げましょう。コミュニケーションがとりやすい、オープンな空間に仕上げるのも一般的で、来客者の好印象に繋がります。
企業イメージを伝えるデザインでブランディングをアピール
会社の印象をアップさせるためのリノベーションで意識するべきなのが企業イメージです。自社のイメージに合ったデザインを意識すると、来訪者に自社のブランディングを強く印象付けることができます。インテリアなども、この点を意識して選びましょう。
コスト削減が期待できる
オフィスリノベーションにかかる費用は、業者によって異なります。まずは、業者に相談してみましょう。交渉によっては、コストを削減可能です。新しい環境を探して違う部屋を賃貸するよりも安く済むケースがあります。
新築物件に移転するより安く済むケースも
会社のリフレッシュや業務効率向上のため新築物件に移転するケースは少なくありません。好立地による移動時間の短縮など、移転にはたくさんのメリットがあります。一方、環境を変えることが主な目的であれば、リノベーションとの比較検討が必要です。新築物件に移転した際の賃料よりもリノベーション費用が低く済み、コストを抑えられるケースもあります。新築移転とリノベーションでどちらのほうがコストが低いのか、事前の確認が必要です。
オフィスをリノベーションする際の注意点
最近ではオフィスリノベーションは一般的なものになっています。同時に、オフィスリノベーションで意識しなければならないポイントも明確になってきました。以下では、オフィスリノベーションを検討している方に知っておいていただきたい注意点を紹介します。
コンセプト・問題点を明確にする必要がある
単に「リノベーションしたい」という曖昧な希望では、それほど使い勝手が変わらない結果になることも。現状の課題が何なのか、どういったオフィスをイメージしているのか、コンセプトや問題点を明確にしておきましょう。
社員のコミュニケーションが自然と生まれるような開放的な空間や、業務効率優先の集中できる環境など、まずは理想のオフィスを明確にイメージしてください。業者に依頼する際も、理想とするオフィスのイメージを伝える必要があります。
ゾーニングとレイアウトを意識する
リノベーションの際は、デザイン性だけではなく機能性についても考える必要があります。その際、機能や役割によって空間を分けるゾーニングの考え方が大切です。来客対応用のスペース、ミーティングスペース、役職者の執務室など、まずは空間を用途で分けましょう。続いて、それぞれのスペースをスムーズに移動できる動線を意識したレイアウトを考えます。
ゾーニングではセキュリティの意識も重要です。訪問者が出入りできる範囲や、社員の権限によって移動できる範囲を意識してゾーニングを行いましょう。
消防法を考慮する
オフィスでは、消防法によって火災が起きたときに被害が少なく済み、スムーズに避難できる設計にすることが義務付けられています。オフィスリノベーションでは、仕切り壁を増設して部屋を増やす施工も一般的です。その場合は、スプリンクラーや火災報知器などの消防設備も増設しなければなりません。廊下にも、両側に部屋が存在する場合は1600mm以上、片側に部屋が存在する場合は1200mm以上という、規定の幅を確保する規定があります。
法律も絡んだ専門的な部分のため、リノベーション業者と相談しながら設計を進めていくのが一般的です。オフィスリノベーションの実績が豊富な業者であれば消防法についても熟知しており、スムーズな設計が期待できます。
原状回復を視野に入れて進める
自社ビルでは建物の構造上の問題が生じない限り、自由にリフォームを実施できます。一方で、賃貸の場合は、撤退の際に元の状態に戻さなければなりません。この「原状回復」のルールは、一般的な賃貸物件の多くに設けられています。
ただ、実際には原状回復義務はオーナーの裁量にゆだねられています。とくにオフィスの原状回復義務は通常、住宅ほどシビアではありません。まずは希望のリノベーション内容をオーナーに伝え、どこまで原状回復の必要があるか確認しましょう。原状回復しきれずにのちにトラブルになった事例もあるため、オーナーへの確認は忘れないようにしてください。
例として、「仕切りの増設は問題ないが、水回りは元に戻してほしい」とオーナーに伝えられた場合は、原状回復のコストも考え、水回りの改修を控えるといった選択肢も考えられます。あらかじめオーナーに相談しておけば、このように工事プランを柔軟に検討できます。
オフィスリノベーションの主な流れ
見積もり依頼し、業者を決定した後の施工は一般的に以下のような流れで進められます。オフィスリノベーションのスケジュール感を把握しておきましょう。
工事の段階
1.養生、クリーニング
2.間仕切り壁の新設
3.内装工事
4.建具の取り付け
5.電気設備工事
6.空調設備工事
7.消防設備工事
8.照明器具取り付け
9.防水工事・塗装
1. 養生、クリーニング
賃貸物件の場合は原状回復義務があるため、できるだけ汚したり傷つけたりしない配慮が大切です。先に全体をクリーニングし、天井や床、壁などを養生しておくと、その後の工事がしやすくなります。
2. 間仕切り壁の新設
間仕切りを新しく作る場合は新設工事を行います。軽量鉄骨材や石膏ボードなどを組み合わせて壁を作るのが一般的です。
3. 内装工事
内装工事では、クロスやフローリングなどの張り付け、天井の仕上げなどを行います。使用する素材のグレードによって費用が変動します。細かい作業が必要な素材の場合も、費用が高額になる点に留意しましょう。
4. 建具の取り付け
内装ができあがったら建具を取り付けていきます。建具とはドアや窓などの可動部分と、枠などのことを指します。ゾーニングや防音、プライバシー保護の観点から必要な数を考慮し、取り付ける場所を決めましょう。
5. 電気設備工事
電気設備工事では、電源をとるためのコンセントや照明のほか、電話線やLANケーブルなどの取り付けも行います。コンセントの位置などは使い勝手の良さを考慮して決めておきましょう。
6. 空調設備工事
エアコンや換気扇などの取り付けを行います。室外機を置く場所はどこにするか、冷媒管やドレン管などを通すのはどこにするかなどを考慮しておきましょう。
7. 消防設備工事
オフィスで働く従業員のためにも欠かせない消防設備工事。スプリンクラーや煙感知器などを設置します。物件によって必要な設備は決まっているため、決まりを調べておきましょう。
8. 照明器具取り付け
照明器具は部屋の広さや用途によって取り付けるものが変わります。リノベーションであれば取付金具の形状や照明タイプなどの変更も可能です。
9. 防水工事・塗装
外装もリノベーションする場合は、防水や塗装などを行います。場所によっては、天候不順によって工事が延期になる点に注意しましょう。
リノベーション費用相場と工期
リノベーションでは工事が終わるまでその箇所を使えません。業務に関わるため、あらかじめ工事にかかる時間・期間を把握しておくことは大切です。また、コストについて知りたい方も多いはず。費用相場と工期は、フルリノベーションと部分リノベーションのどちらを採用するかによって変わります。
フルリノベーション
大規模なフルリノベーションの場合、坪単価にして30万円ほどの費用が発生します。工期は1カ月程度かかるケースが一般的です。業者によっては、工事のスケジュール調整を工夫して早く仕上げることも可能です。なるべく早く新しいオフィスを使いたい場合は、業者と交渉してみましょう。
部分リノベーション
部分的なリノベーションの場合は、目安として坪単価10万円程度の費用が発生します。工期については、クロスの貼り替え、開放感を出すための天井の交換など、施工内容によって変わってくるため、業者への確認が必要です。