メルセデス・ベンツGLB、最大の売り文句「3列シート7人乗車」は可能?

メルセデスには一番小さなGLAから一番大きく高級なGLSまでセグメントごとに隙間無くSUVがラインナップされています。今回は下から2番目のGLBという“小さくても機能たっぷりのSUV”を走らせてみました。


最大の売りは3列7人乗車

メルセデスのGLクラスと言えばSUVを表す車名で、そこにAの文字が付けば、もっともコンパクトなSUVと言うことになります。そして今回はGLBですから、GLAより大きく、上に控えるGLCよりも小さいSUV(それでも国産と比べれば大きいのですが)で、その間を埋める役割があるということになります。そこでGLBの役割ですが、下から2番目の大きさでも3列シートで7人乗車を可能にしたと言うことです。

実はGLAにもGLCにも3列シートの用意がありません。そこでメルセデスの小さめのSUVの中で7人乗車を可能にしているという点ではGLBには立派な役割があると言えます。ちなみに上のクラスではGLEは7人乗車が出来ますが、そこまでクラスを上げると価格は954万円(GLE300d)以上と言うことになり、ほぼ1,000万円オーバーのモデルしかありません。その点GLBは512万円(GLB200d)から696万円(GLB250 4マチック)というラインナップですから、リーズナブルといえるかもしれません。それでも中身やブランド力はメルセデス基準ですから、満足度は高いということになります。

こうした役割を持ったGLBですが、その骨格とも言える基本コンポーネンツは5人乗りのGLAとほぼ共通です。そこに3列シート7人乗りのボディを与えたと言うことになると「どうせ無理に7人乗車にしたのだから、けっこう窮屈でしょ」という心配が出てきても不思議ではありません。世の中にはそうした成り立ちのクルマもけっこうありますから、そうした懸念は当たり前だと思います。しかし、GLBは単純にGLAのボディのまま3列シートをぶち込んだわけではなく、一回り大きな専用デザインのボディを与えました。とくに3列シートを実現するために大きな意味を持つ前後の長さを比較すると20センチ長くなっています。この3列シートを実現するための条件をクリアした上で、高さも9.5センチ高くなっているのです。

3列目は子供用として考えて下さい

こうして全体のパッケージングが決まった訳ですが、そのスタイルはGLクラスの一番大きなGLSと本当似よく似ていて、まさに相似形とでもいっていい、箱形スタイルとなりました。GLAがスポーティなハッチバック&クーペ的なスタイルですが、GLBは見るからに実用を優先したスタイルだと分かります。顔つきも押し出し感がより強くなっていて存在感があります。

3列目のシートは168㎝以下の乗員を想定しています。

かと言ってメルセデスのSUVの中では特別な存在で、いまだに根強い人気を誇っているGクラス、多くの人たちは“ゲレンデ”と呼んでいるモデルですが、それとはまったく違う佇まいです。40年も前に登場したGクラスは、手を変え、品を変えながら、現在まで生き残ってきた特殊な存在ですから趣が違って当然です。GLBは箱形とはいえ、ボディのエッジは丸められ、ソフトな印象です。最近のトレンドともいえるかも知れませんが、ワイルドすぎずにそれなりに迫力を出すというスタイルです。

その箱形を真横から見ると、20センチのボディの延長がよく分かります。伸びやかで、ここに3列のシートが入り7人が乗り込めますと言われても、納得できる佇まいです。実際に3列目はどうなっているのでしょうか?

2列目までは前後スライドやリクライニングモデル快適なシートです。そして3列目ですが2列目にある専用のレバーを操作するとシートは前方にスライドすると同時に背もたれが前に倒れて、乗り込むことが出来ます。左右幅は1,110ミリですから大人がふたり座ると肩が触れあう感じです。足元もそれほどゆったりとはしていません。実はこの席、身長制限というかメーカーが想定している乗員の身長は168センチまでと言う事になっているのです。ひょっとすると中学生でもその身長を超える子供がいることを考えると、3列目のシートは小学生ぐらいの乗員用と言ってもいいかもしれません。

普段は5人乗りが実に快適

さらに2列目のシートを一番後ろまで下げると3列目のシートの足元にはほとんどスペースがなくなってしまいます。極端な言い方をすると正座して乗るようなことになります。3列目に乗員がいるときは2列目の乗員もシートを前にスライドさせる必要があるわけです。やはりGLBは記上は7人乗りとなっていますが、3列目は緊急的な意味合いのシートだと言うことです。大人にとってロングドライブというのはさすがにきついと思いますが、緊急的に座ることは出来ます。

3列目を格納し、5人乗車として使うと十分な広さの荷室が出現

使い方としては普段は3列目の背もたれを倒すと綺麗に格納され、フラットな荷室の床が出現できます。もちろんそのスペースは5人乗りのSUVとして考えれば十分に実用的な広さ(荷室容量は500L)を確保しています。

スーツケースを4個、ちゃんと納めることが出来ます。さらに2列目も前方に倒すとその荷室容量は1,680Lですから、“広々”と言う表現が当てはまります。おまけに2列目シートを収納しても床には凸凹がほとんどない状態ですから、車中泊だって快適にこなせそうです。まぁ、メルセデスのオーナーが車中泊というのはほとんど聞かないかも知れませんが、実用的で広々とした荷室は確保できるわけです。

さらに言えば5人乗りであれば2列目のシートを一番後ろまでスライドさせると、足を組めるほどのスペースが出来ますから、リクライニング機能と合わせればリアのシートの居住性はとても快適だといえます。もちろん、その居住性の中で走り出してみれば、こちらは確実にメルセデスのゆったりとした乗り心地です。GLAほどの軽快感はありませんが、衝撃をソフトに吸収しながらひたひたという感じでクルージングを楽しめます。この乗り心地はファミリーにとっても快適ですから普段は5人乗りとしてロングドライブに出掛けたりグランピングに使ったりと、本当に活躍します。そして緊急時にあと二人、そんな使い方になるGLBですが、次なる悩みが湧いてきました。

実はGLBのディーゼルエンジン搭載モデル、200d(512万円)には4WDが用意されていません。一方、試乗したのはガソリンエンジンを搭載した250 4マチックスポーツ(696万円)で、こちらは4WDです。GLBはどちらかと言えば街乗り派ではなくアウトドア色の強いSUVだと思います。できれば燃費のいい4WDのディーゼルモデルも設定して欲しいと感じました。

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