天敵・西勇輝を5失点KO 専門家が指摘する巨人の強さの秘訣「チームが同じ方向を」

巨人・丸佳浩【写真:荒川祐史】

0勝3敗だった西勇輝を5回5失点KO、坂本・丸が徹底した対策をした

■巨人 5-4 阪神(23日・東京ドーム)

巨人は23日、本拠地・東京ドームで阪神に5-4で競り勝ち、優勝マジックを5に減らした。これまで今季4度対戦し、1完封を含め0勝3敗、対戦防御率1.47と抑え込まれていた西勇輝投手を攻略し、初めて土をつけた。巨人で2007年まで22年間、名スコアラーとして鳴らした三井康浩氏の目には、主力を中心に明確な“西勇対策”が見て取れた。

西勇の鋭いシュートとスライダーのコンビネーションに、翻弄され続けてきた巨人打線。この日は、相手一塁手・マルテの1試合4失策にも助けられたが、三井氏は「それだけではない。特に3番の坂本と5番の丸からは、西勇対策を練り、工夫して打席に臨んでいることが伝わってきました」と言う。

まず、左打者の丸に関しては「ボールになる内角低めのスライダー、チェンジアップに手を出さず、徹底的に外角狙い。特に外からストライクゾーンに入ってくるスライダーをイメージしていた」と見た。2回にバックスクリーンへ放り込んだ先制23号ソロは、まさにその球を捉えたものだった。

「嫌がる選手もいました」過去にスコアラーの指示が通らないことも

一方、坂本は5回無死一、三塁で、カウント1-0から内角低めに食い込む西勇得意のシュートを左前にはじき返し、貴重な4点目をゲットした。三井氏は「坂本はシュート狙い。この日は指1本分か2本分バットを短く持ち、操作をしやすくして、見事にシュートに対応しました」と指摘する。

また、遊ゴロ、一飛、四球に終わった4番の岡本についても「シュートを狙っていることは伝わってきましたが、難しいコースに手を出してしまい、捉えきれませんでした」と指摘した。

「丸、坂本のような主力がああいう姿勢を見せてくれると、他の選手もそれに倣って工夫をする。チーム全体が同じ方向を向いて相手を攻略するところに、今季の巨人の強みがある」と三井氏。「こういうチームは、データを提供し対策を提案するスコアラーとしてはありがたいですし、監督にとっても選手を動かしやすいと思う」と語った。

実は、全てのチームが相手投手対策を徹底できるとは限らない。たとえば、2003年から11年まで阪神に在籍した下柳剛氏のフォークを、巨人打線が全く打てない時期があった。当時スコアラーを務めた三井氏は「バッターボックスの投手寄りに立って、落ち際をたたくことを提案しました。しかし、打者は立つ位置を変えると、ボールの見え方が変わってしまう。当時は長距離打者がズラリと並ぶ打線だったこともあって、嫌がる選手もいました」と振り返る。

チームが一丸となり、粘り強く相手を攻略していく姿勢が、結果的に今季の巨人の独走を招いていると言えそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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