デスク日誌(10/24):バーの写真

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 ふと見上げた空に、V字編隊のマガンの群れが飛んでいた。東北の湖沼はそろそろ渡り鳥でにぎわい始めるのに、仙台市の小さな酒場は相変わらずコロナ禍で閑古鳥が鳴いている。

 「10月17日で店を閉めます」。青葉区中心部の路地裏にあったバーのマスター(62)から、突然のメールが届いたのは先月末。

 「横町は今どこも大変な状況。コロナで減った売り上げがV字回復するどころか、ずっとへこんだまま」とマスターは言う。

 カウンター越しに、マスターの来し方を聞いたことがある。仙台の大学を卒業してから何度も、写真を撮りながらアジアの国々をバスで放浪したという。

 ベトナム、中国・雲南省、ラオス…。店の壁には、旅先で出会った人たちを写したA4サイズのプリントが飾られていた。どの人も温かなまなざしをしていたのが印象的だった。

 雲南省のタイ族は確かに、こんなカラフルな民族衣装を着て笑顔で稲刈りをしていたなあ-。

 小さなバーの写真を眺めてはコメの取材で行った二十数年前のアジアの空を懐かしみ、リフレッシュさせてもらえたような気がする。 (写真部次長 門田勲)