心の冬支度を

 きのうは二十四節気の一つ「霜降(そうこう)」だった…と書こうとしたが、パソコンはすんなり変換してくれない。「走行」「倉皇(慌ただしいさま)」と、画面に出る単語はどこか気ぜわしい▲秋は深まり、この欄の上を雲仙・仁田峠の紅葉の写真が飾っている。景色が美しい一方で、冬服、暖房器具、あったか寝具-と、そろそろ冬支度が気になる頃になる。霜降は「倉皇」の始まりでもあるのだろう▲気もそぞろに人を待ちながら、ずっと待ちぼうけ-そんな秋でもある。県内への修学旅行のキャンセルが相次ぎ、観光業界は肩を落としたという▲春に修学旅行という学校も多いが、新型コロナでホテルの宿泊はどれも延期か取り消しになった。秋に望みを託したというのに、回復には遠かったらしい▲慌ただしいはずの秋が、なんとも寂しい。修学旅行は人数が多く、1校のキャンセルがホテルには痛手になる。「Go To トラベル」の利用は広がっているが、観光業界は「回復」の2文字がまだ見えないか、その途上にある▲本県では、遠方への修学旅行を取りやめ、訪ねる先を県内に切り替えた学校もある。個人旅行は、県内各地の魅力を見直す機会にもできる。秋の行楽シーズンはやがて去っても、県内で県民が支え合う気持ちは忘れまい。心も冬支度の頃合いだろう。(徹)


© 株式会社長崎新聞社