【大学野球】北のドラフト候補192センチ右腕 元DeNA2軍監督は将来性に太鼓判「2、3年目には…」

星槎道都大・河村説人【写真:石川加奈子】

北の大地に現れた未完の大器に調査書7球団「こんなに注目されるとは…」

星槎道都大の河村説人投手(4年、白樺学園)が26日のドラフト会議を心待ちにしている。192センチから投げ込む角度のある直球は最速150キロ。昨冬の大学日本代表候補合宿に招集された未完の長身右腕だ。

大学4年生ながら年齢は23歳。亜大を4か月で退学し、地元の大学に入り直した右腕は「あっという間でした。他の人よりもいろいろな経験をしている分、心の強さや、地方の大学で自主性が身につきました。1年分、大人になることができたんじゃないかと思います」と5年間を振り返る。

プロへの挑戦を後押ししてくれたのは、二宮至監督だった。右肘の状態が思わしくなく、リーグ戦4勝止まりだった昨季終了後、「おまえが思っている以上に周りの期待は大きいぞ」と本気で上を目指すべきだと説かれた。

駒大から巨人に進み、DeNA2軍監督などを務めた指揮官の言葉には説得力があった。河村は「プロに行きたい思いはありましたが、当時はこんなに注目されるようになるとは思わず、未来像が描けない状態でした。『本当なのかな?』という思いもありましたが、プロの世界を知っている方がそう言ってくださったので」と覚悟を決めた。11月には大学日本大学候補合宿に初めて招集され、大学トップの選手から刺激を受けた。

今秋は札幌六大学リーグで3勝1敗、防御率0.62の好成績を残してチームを優勝に導き、MVPに選ばれた。9月9日の東海大札幌戦では外角低めの直球とフォークで17三振を奪い、見守っていたスカウトをうならせた。明治神宮大会が中止となったため、大学時代に全国大会のマウンドに上がることはできなかったが、「優勝できたし、一番良いシーズンでした。やり残したことはないです」とさわやかに言い切る。

角度のある直球と三振を奪えるフォークが注目されるが、今季はカーブを有効活用した。二宮監督は「あの上背で高いところから落とせば、タイミングをずらすことができる。プロは速いボールには合わせてくるから」とプロ入り後を見据えた投球術として指導。昨オフから塁間ほどの距離でカーブを投げて腕を振る感覚とリリースポイントの感覚を磨いてきた河村は「見逃されて、簡単にストライクを取ることができました。“ある”という印象だけでも違う。その後に投げる球に生きていますね」と改良したカーブを新たな武器に加えた。

すでに身長192センチあった中学時代に投手と遊撃手を兼任「守備が好きでしたし、自信がありました」

長身ながら身のこなしは柔らかい。すでに身長192センチあった鵡川中時代には、投手と遊撃手を兼任していた。「守備が好きでしたし、自信がありました。フィールディングが得意なことが評価の1つになっているのかなと思います」と河村は言う。二宮監督も「クイック、牽制、フィールディングと細かい動きができる器用さがある。背が高くて器用さがあれば、成功する」と断言。その上で「大学の1日2時間程度の練習では、鍛えきれなかった。タイプとしては先発。1年間戦う体をつくって、ファームで鍛えたら、2、3年目には良くなるんじゃないか」と指揮官は今後の成長曲線を思い描く。

地元の日本ハムを含め7球団から調査書が届いた。日本ハムの白井康勝スカウトは「角度のあるボールがあり、リーグ戦では抜いたカーブが良くて、カウントを整えていました。カットを覚え、フォークもある。体が強くなってきたし、面白いと思います」と評価する。

河村にとって、同じ23歳でドラフト1位候補に挙がる伊藤大海投手(苫小牧駒大)は特別に意識する存在だ。昨冬の大学日本代表候補合宿で同部屋になり、初めて行ったキャッチボールで目を見張った。「見たことのないボールが来て、捕るのが怖かったです。リリースが他の人と違って、バチンという感じ。回転数がすごくて、本人に冗談交じりで『8回伸びている』と言ったほど。マンガみたいでした」と当時受けた衝撃を興奮気味に明かす。

駒大を退学して苫小牧駒大に入り直した伊藤は、規定により1年間出場できなかった大学1年時に肉体改造とフォーム改造に取り組んだ。一方の河村は「自分は幼くて、のほほんとしていました。今考えると、試合に出られない期間に目標を設定しておけば良かったかなと思います」と苦笑いする。それでも将来的には伊藤と肩を並べ、追い越したいという思いは強い。「今は全然負けていますが、いずれ成長して自分の方がいいピッチャーになれたら」と力を込めた。

白樺学園3年夏の甲子園に出場した後、将来のプロ入りを目指して亜大に進学したが、右肩を故障して全く投げられなかった。環境に馴染めなかったこともあり「ベストな選択ではない」と4か月で退学を決意。母校に戻って練習をしていると、亜大の生田勉監督が当時の星槎道都大の監督を務めていた山本文博氏(現札幌国際大監督)に連絡をし、受け皿をつくってくれた。「僕が言うのも何ですが、人格的に素晴らしい方。ありがたかったです」と河村は生田監督に感謝する。

亜大の生田監督、星槎道都大の山本前監督と二宮監督、浪人時代に練習場所を提供してくれた白樺学園の戸出直樹監督……。人に恵まれて、ここまでたどり着いた。「恩返しになればいい」と当日の吉報を待つ。

【動画】「2、3年目には…」元DeNA2軍監督が太鼓判を押した星槎道都大・河村の実際映像

【動画】「2、3年目には…」元DeNA2軍監督が太鼓判を押した星槎道都大・河村の実際映像 signature

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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