マツダ ロードスターのAT車、900km走ってわかった実力は?

世界に誇るオープンスポーツカーであるマツダ ロードスター。イメージ的にはやはりMT(マニュアル)車ですが、実はAT車も魅力満載。900キロ近く走ってわかった実力をお伝えします。


実は売れているAT車

「スポーツカーと言えばマニュアル車だよね」。昔ほどではありませんが、まだまだそういう声は多く聞かれます。ただ、日本の自動車免許事情を見ると地域差はありますが、AT限定免許の保有率は年々上昇していることもわかっています。

話をロードスターに戻すと、このクルマには今回試乗した「ソフトトップ」と電動でルーフが開閉する「RF」という2つのモデルが設定されています。その中でソフトトップのMT/AT比率はおおよそ75:25。RFになるとその比率はおおよそ50:50に変化します。

もちろん今の日本の自動車販売から考えても75%もMT車が売れているのは驚くべきことですが、やはりAT免許しか所有していなくてもロードスターのようなオープンカーに乗りたいというニーズは一定以上あるはずです。

CVTじゃない所がポイント

ロードスターには6速MTと電子制御の6速ATが設定されています。現在のクルマのAT車には燃費を向上させるためにCVT(無段変速機)の搭載が多いのが実情です。これはCVTが伝達効率に優れ、燃料消費量の少ない回転域を使える点、さらに無段ですので基本変速ショックというものが無いことからスムーズに走ることができることが挙げられます。

6速ATはダイレクトな加速が魅力。SPORTモードを使えばより力強い加速が楽しめます

一方デメリットとしては構造上、スリップが発生しやすいことでダイレクトな走りのフィーリングに乏しい点が挙げられます。

ただ誤解の無いように言えば、昨今のCVTのネガはかなり改善されています。それでも一般的な多段式と言われるAT車にはダイレクト感では一歩譲る形になります。

その中、マツダ車はCVTではなく前述した6速のATを採用しています(OEM供給される軽自動車は別)。この部分は「人馬一体」を謳うマツダのこだわりのひとつでもあり、MT車のシフトフィール同様、ダイレクト感ある変速を実現しています。さらにステアリングを握った状態でも変速が行える「ステアリングシフトスイッチ」やアクセルを踏み込んだ際の車両応答性を高めることができる「ドライブセレクション」を使えば気持ち良い加速を堪能することができるのです。

年次改良で魅力増大

マツダ車の魅力のひとつに「年次改良」があります。ピッタリ同じ時期に行うわけでなく、その時にある最新の技術をアップデートするという考えの元、ほぼ毎年何かしらの形で改良が行われています。

ロードスターに関しても同様ですが、2018年の改良では先進安全技術の追加だけでなく、ロードスター初となるステアリングのテレスコピック機構(前後に動かせる)が搭載されました。元々マツダはドライビングポジションにこだわっており、自然な着座位置で理想のポジションがとれるようペダルレイアウトも他社に比べても考えられており高い支持を得ています。

これにテレスコピック機構が追加されたことで、より正しいドライビングポジションを調整できるようになりました。体型にもよりますが、この機構はありがたいはずです。

ナビ周りは大きく進化

今回、オススメしたい理由のひとつにスマホナビへの対応、正確に言えばAppleのCarPlayとGoogleのAndroid Autoに対応した点があります。

マツダコネクトはAppleのCarPlayとGoogleのAndroid Autoに対応しました

マツダには「マツダコネクト」通称「マツコネ」と呼ばれるインフォテインメントシステムが装着されています。

現在販売されている最新のMAZDA3やCX-30、そしてMX-30は新世代モデルらしくディスプレイも大型化され、通信機能なども搭載されますが、ロードスターは7型のディスプレイを持つひと世代前のモデルです。

この世代のマツコネのネックは純正カーナビの性能がイマイチという点でした。もちろんアップデートも行われてきましたが、基本性能は大きく変わりません。

しかし2019年11月の商品改良で前述したスマホ連携が可能になったことで、CarPlayでは「カーナビタイム」や「Yahoo!カーナビ」といった人気のスマホナビが使えるようになりました。スマホは必要ですが、この対応により、ナビや音楽、また電話やLINEなどといったSNS系の連携がスマートに取れるようになり、一気に魅力が向上しました。

少し話はそれますが、新車でロードスターを購入するのが予算的に厳しい場合、中古車という選択肢が上がってきます。

しかし、ロードスターに関してはこのスマホ対応がやはりポイントになります。実はマツコネには「レトロキット」と呼ばれるパーツが用意されており、これを使えば2019年11月以前のモデルでもCarPlayやAndroid Autoに対応することができます。ただ、工賃も含め価格はそれなりにするので、人によっては敬遠する可能性もあります。ゆえに、というわけではありませんが、ロードスターを購入するならばまず新車を、中古車を狙うのであれば2019年11月以降のモデルがオススメです。

燃費性能の高さに驚く

今回、都内から郊外までの一般道をメインに高速道路も含め900km近く走行しましたが、AT車の場合は左手でシフトする作業や左足でクラッチを操作することがありませんので、逆にステアリング操作により集中することができます。

クルマの加減速やコーナリング時の車両の動きなどもMT車ではひょっとしたら気が回らないことがあるかもしれません。でもAT車だとその点もじっくり自己観察しながら走ることが出来ます。

また試乗車にはクルーズコントロールが装着されていました。昨今人気の前走車を検知して速度を調整するACCではありませんが、空いた高速道路などを走行する際には疲労軽減に役立ちます。

AT車なので、普通に走っている際はエンジン回転数を低く保てるので実用燃費も優れます。

カタログ値に迫る燃費。高速道を利用した際は20km/L超えも記録しました

実は今回、いいな、と感じたのはこの燃費性能でした。カタログ値はWLTCモードで17.2km/Lなのですが、筆者が普段他のクルマに試乗してもカタログ数値通りにはなりません。しかしロードスターのAT車はカタログ値を超えた17.6km/Lという平均燃費でした。ワインディングロードでは高い回転数を維持するスポーティな走りも楽しみましたが、この数字は予想以上。もちろんロードスターはハイオク(プレミアム)ガソリン仕様なので燃費自慢をするようなクルマではありませんが、スポーティに走れてこの燃費、筆者的にも気持ち的にはMT車を選びたいけど、この走りならばAT車もありかな、と感じたほど魅力的です。スマートにスポーツカーを乗りこなす大人の1台であることは間違い無いでしょう。

© 株式会社マネーフォワード