チャンスを狙うWH軽量組の上位3チーム。Q2アタッカー3人の予選と決勝の課題《第6戦GT500予選あと読み》

 優勝候補に挙げられていたMOTUL AUTECH GT-Rがクラッシュで最後尾になってしまったものの、上位グリッドはある意味、事前に予想されたウエイトハンデが有利なチームが顔を並べることになったスーパーGT第6戦鈴鹿の予選セッション。その上位グリッドを獲得したチームの予選Q2を担当したアタッカーたちの手応え、そして決勝でのターゲットを聞いた。

 前回の鈴鹿戦、第3戦の結果から、今回のポールポジションの本命の1台に挙げられていたのがModulo NSX-GTだったが、コンマ09秒差でポールに届かず、2番手グリッドとなってしまった。予選Q2を担当したModuloの伊沢拓也がアタックを振り返る。

「(Q1を担当した)大津(弘樹)選手からインフォメーションをもらって、今週はクルマを変えながらまとまって迎えられたと思うんですけど、アタックは正直、手応えはありました。ただ、シケインが朝からうまく走れていなくて、結果的に僕のミスですけどタイムロスしてまとめきれなかった。今までだったらこの結果でもチームのみんなハッピーだったと思うんですけど、今回は第3戦のこともあるし、僕もチームも本当に悔しいです」と、残念がる伊沢。

「朝からブレーキングで不安定でした。ただ、アタックの時はブレーキングはうまくいったんですけど、うまくいった分、シケインのひとつ目もふたつ目もリヤが大きくスライドしてしまった。そこを合わせ込むのを含めて、コンマ09のタイムでポールの8号車(ARTA NSX-GT)に負けたのかなと思います。それでも第3戦に続いてコンディションが違うなかで今回も鈴鹿で続けてまとめてくれたのは、チームとダンロップタイヤのおかげです」と伊沢が続ける。

 それでも、ダンロップの相性のいい鈴鹿でフロントロウを獲得。第3戦では決勝でタイヤの摩耗、そしてピックアップなどから4位フィニッシュとなってしまっており、ロングランでの安定性がModuloとダンロップの課題となる。

「レースは正直、今までと大きく変わるようなことはないとは思うんですけど、第3戦から季節が変わったところで何か僕たちにいい方向になってくれたらうれしいですね。明日はどんな状況になっても最後まで足掻いて、個人的には16号車(Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT)が先に表彰台(3位)に上がっているのが引っかかっているので、8号車も抜いて、2位以上の表彰台を狙いたいと思っています」と、伊沢は決勝に向けての期待を話す。

 予選3番手のWedsSport ADVAN GRスープラも、予選Q2ではステアリングを握った国本雄資にとっては悔しい結果となってしまった。

「クルマはQ1で調子が良かったので、(ポールに)行けるかなと思ってアタックに入ったんですけど、1コーナーでパワステが効かなくなってしまって、そのトラブルが起きてしまって、まったくパワステがゼロになったわけではないんですけど、アシストが弱くなってしまって、その嫌な感じがあるまま1周アタックすることになってしまった。ちょっと不完全燃焼みたいな感じがあります」と、予選を振り返る国本。

 今年からのクラス1規定のマシンでは、このパワステ関連のトラブルが3メーカーともに頻繁に起きている、特にGRスープラ勢に多く見られるが、共通パーツの問題が指摘されており、根本的な対処が難しいとも言われている。

「本当にパワステが効かなかったのは1~2コーナーだけだったんですけど、その後も信じていければよかったんですけど、なんとなく少し不安があって、1~2コーナーも、もう少しインに付きたかったんですけど、それができないくらいステアリングが重かった。悔しいですけど、クルマのバランスはよかったですし、Q1ではすごくいいパフォーマンスだったので、明日に向けてなんとかしたいですね」と国本。

 WedsSportとしては午前のフリー走行で右フロントタイヤがバーストしており、決勝に向けての不安も残る。今季は予選で上位に進出しながら決勝で順位を落とすパターンが多く、ロングランが課題になっている。

「朝のトラブルを含めて、明日の決勝に向けて対策をして、しっかりレースを走りきることと、いいペースで走れるように準備したいですね。ロングランの手応えはまだないですけど(苦笑)、せっかくいいグリッドからのスタートなので、周りの状況もどうなるかわからないので、しっかりと自分たちのベストを尽くせるように戦いたいと思います」と国本。

 ヨコハマタイヤのパフォーマンスはシーズン中盤に入ってから確実に向上しており、同じヨコハマ陣営のRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTが第4戦で表彰台を獲得しているように、WedsSportもこの鈴鹿で今季初表彰台が期待される。

 上記の2台以上に、本来ならばもっとも優勝に近いマシンと言えるのが、予選4番手のカルソニック IMPUL GT-Rだ。予選Q2に進出したチームのなかで、ウエイトハンデがわずか2kgともっとも軽く、さらには今季圧倒的なパフォーマンスを見せているブリヂストンタイヤユーザー。にも関わらず、ドライバーズランキングが17位というまさかの低迷に陥っている。

 そのカルソニックは今回、予選Q2をルーキーの平峰一貴に託し、アプローチを変えた。GT500で初めて予選Q2を担当した平峰がアタックを振り返る。

「今年初めての予選Q2だったので、楽しみな気持ちがありましたけど、その前に専有走行の時に僕が行きすぎてクラッシュしていて、そのクルマをチームがしっかりと直してくれていたので、今日はまず、僕はチームに感謝をしないといけないと思っています。クルマの出来はすごくよかった。アタックした時のクルマの感触もいいし、タイヤもよかった。安心して攻めることができました」と、まずはチームへの感謝を語る平峰。

 その平峰は4番グリッドとなった自身のアタックをどう振り返るのか。

「(4番手タイムは)今の実力かなと受け止めています。もしかしたらクルマ的にもう少し速く行けたのかもしれないけど、そこは正直、僕は鈴鹿で1分45秒台という領域を初めて走るので、どんなもんかなと。もちろん攻めて行ったんですけど、乗り方も若干、いろいろ修正したいところもあったり、とりあえず、これが今の僕の実力なのかなという感じです」と冷静に振り返る。

 カルソニックとしては今季はレースでタイヤのピックアップ(タイヤカスが採れずにグリップダウンを招く現象)やトラブル、アクシデントなどさまざまなインシデントに見舞われてきた。ポールポジションのARTAにも共通するが、カルソニックも普通にレースを走りきることができれば、自ずと上位フィニッシュは間違いない状況だ。

「明日はもちろん、表彰台の真ん中をしっかり狙っていきたいですし、僕らもまだクルマが軽いので、ポイントをしっかり獲って最後まで気を抜かずに攻めてチェッカーを受けたいなと思います」と平峰。

 Modulo、WedsSport、そしてカルソニックとこれまで予選の一発の高いパフォーマンスを見せながら、3台とも決勝、ロングランでの安定感が課題になっている。ランキング上位がウエイトハンデが厳しいこの第6戦は、ここまでビッグポイントを稼げていないチームにとっては大きなチャンス。日曜日の決勝でそのチャンスを掴み、シーズンの流れを変える大きなきっかけにしたいところだ。

国本雄資(WedsSport ADVAN GR Supra)
平峰一貴(カルソニック IMPUL GT-R)

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