全国高校陸上 男子三段跳び 廣田(長崎日大)Ⅴ 恩師に感謝の金メダル

男子三段跳びで優勝を飾った廣田(長崎日大、右)が佐伯監督に金メダルを掛ける=エディオンスタジアム広島

 痛めていた左太ももの状態は最悪だった。でも、この大会だけは外せなかった。「人生を変えてくれた佐伯先生に金メダルを掛けたい」。男子三段跳び決勝。廣田(長崎日大)は脚がもたない可能性も考えて、最初の跳躍に集中した。結果は高校歴代4位タイの15メートル84で優勝。観客席の恩師に向けて、会心のガッツポーズが飛び出した。
 長与二中1年のころ。不登校になるなど、生活態度が乱れていた。正月休み明けに、締まりのない姿で陸上部の練習に出た自分に活を入れてくれたのが、当時、長与二中の外部コーチを務めていた佐伯監督だった。
 「せっかくいいものを持っているのに、人生そのままでいいのか。俺と約束しよう。陸上しにでもいいから学校へ来い」
 こんな自分を信じて、理解して、厳しい指摘をしてくれた熱い先生。「変わらなきゃ」。この“男の約束”の後は、学校は休まなかった。「人間力」を第一に育てるという指導の下、眠っていた才能が徐々に開花し始めた。
 卒業後、ちょうど佐伯監督が赴任した長崎日大高へ進学。2年のインターハイで3位、国体で2位に入った。だが、優勝にはあと一歩届かない。迎えた最終学年。コロナ禍で今大会が目標達成のために残された唯一の舞台となった。
 その最後のチャンスを逃さずにつかんだ約束の日本一。佐伯監督は「(廣田)麟太郎のこれまでの努力へのご褒美かな」と目を細めた。
 表彰式後。廣田は6年間の感謝を込めて佐伯監督に金メダルを掛けた。信頼という絆で結ばれた師弟の笑顔は、メダルの色に負けないほど輝いていた。


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