下駄を履くまで?

 「いい? お友達が話している間は、発言をじゃましちゃダメ。でもあなたたち、ルールが守れるかどうか心配だから、マイクのスイッチを切ります」-そこだけ切り取ったら、まるで小学校低学年の学級会だ。画面の2人が“お友達”かどうかは別にして▲激しくののしり合う74歳の現職と77歳の新人。「ふざくんなっ」「やかましかっ」「何ば言いよっとか」-英語の分かる長崎人にはそんな風に変換されて聞こえるのだろうか▲と、想像してみる外野席は気楽だが、選択を迫られる人々を思うと、ちょっぴり気の毒な気分になる。何より、事は世界の超大国のリーダー選びなのだ▲マイクの切断も功を奏したか、直接対決の最終ラウンドは討論会らしさを取り戻したようだ。コロナ対策や気候変動、経済、外交-さまざまに意見を戦わせて、米大統領選は大詰め▲優勢が伝えられるのはバイデン前副大統領。重要な意思表示がツイッターで発信されるトランプ流の粗雑な手法や、自国ファーストの内向き志向、自国民の分断を意に介さない姿勢…少し気が早いが風向きは変わるだろうか▲投票は11月3日。劣勢の現職、「勝負は下駄を履くまで…」と自らを鼓舞している頃かもしれない。英語では〈プリマドンナが歌うまでオペラは終わらない〉と言うらしい。(智)

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